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507. 南部アフリカにおける家畜生産性向上に向けた栄養豊富なマメ科木本植物の活用

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507. 南部アフリカにおける家畜生産性向上に向けた栄養豊富なマメ科木本植物の活用

開発途上国・地域では、経済の発展に伴って、畜産物供給量の増加や国民生活の改善が求められています。しかし南部アフリカ等では、乾季における飼料生産が質、量ともに不足するため、反芻家畜の乳・肉生産性が低下します。そこで国際農研では、モザンビーク農業研究所(IIAM)と共同で、低利用の飼料資源を活用した反芻家畜の飼養管理技術に関する研究を実施してきました。

この地域の放牧地では、マメ科木本植物Gliricidia [Gliricidia sepium (Jacq.) Kunth ex Walp.]とLeucaena[Leucaena leucocephala (Lam.) de Wit]が多く自生し、乾季にも落葉しないことから、反芻家畜用の飼料木として利用されます。その新鮮な葉部は、タンパク質やミネラル等の栄養を豊富に含み、家畜の嗜好性は高く、「木のアルファルファ」と呼ばれます。一方で、水分含量が高く、可溶性炭水化物含量は低いため、それのみではサイレージ調製による長期保存には不向きです。

イネ科牧草ネピアグラスは、高いバイオマス収量と、幅広い土壌タイプ・肥沃度や気象条件の下で生育する栽培適性の高さにより、特に酪農用に広く栽培されます。また、この地域の代表的作物の一つであるトウモロコシ収穫乾燥後の茎葉部は、畑で焼却されることが多いのですが、反芻家畜の粗飼料として利用した上で堆肥等を土壌に還元すれば、より効果的な養分循環・耕畜連携が期待できます。これらはいずれもセルロース等の飼料成分、およびサイレージの発酵基質に富む優良な粗飼料源ですが、水分含量が低い上に、それらのみではタンパク質等について家畜の栄養要求を満たすことができません。

そこで、上のマメ科木本植物の葉部(小枝を含む)を主体に、ネピアグラスまたはトウモロコシ茎葉部を加えたサイレージを調製し、その発酵品質を評価するとともに、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第2作業部会の報告書第5章(IPCC, 2022)で引用された既報(Du Z.ら、2020)の結果を受け、関連する微生物群集をDNA解析により評価しました。その結果、トウモロコシ茎葉部を混合した木本サイレージは、木本単独やネピアグラス混合に比較して、発酵過程においてその微生物コミュニティと代謝経路を改善し、高品質で調製されることが明らかになりました。したがって、マメ科木本植物とトウモロコシ茎葉部を組み合わせることで高品質サイレージを調製でき、南部アフリカにおけるより効果的な養分循環・耕畜連携とともに、家畜生産性向上が期待されます。

本成果は、微生物学の国際誌Frontiers in Microbiologyに、Microbial Co-occurrence Network and Fermentation Information of Natural Woody-Plant Silage Prepared with Grass and Crop by-product in Southern Africaと題して発表されました。

(参考文献)

Du Z, Yamasaki S, Oya T, Nguluve D, Euridse D, Tinga B, Macome F and Cai Y (2022) Microbial Co-occurrence Network and Fermentation Information of Natural Woody-Plant Silage Prepared With Grass and Crop By-Product in Southern Africa. Front. Microbiol. 13:756209.
doi: 10.3389/fmicb.2022.756209

Du Z., L.Sun, C.Chen, J.Lin, F.Yang, Y.Cai (2020) Exploring microbial community structure and metabolic gene clusters during silage fermentation of paper mulberry, a high-protein woody plant. Animal Feed Science and Technology.
https://doi.org/10.1016/j.anifeedsci.2020.114766

IPCC (2022) https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/downloads/report/IPCC_AR6_WGII_Final…

(関連するページ)

487. IPCC - 気候変動に強靭な開発の必要性
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220301

(文責:生産環境・畜産領域 蔡 義民・大矢 徹治・山﨑 正史)

 

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