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501. 世界水の日:安全な地下水のための肥培管理技術の開発

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501. 世界水の日:安全な地下水のための肥培管理技術の開発

3月22日は世界水の日(World water day)です。 1992年12月の国連総会において、毎年3月22日が世界水の日として定められました。この日には、世界の様々な国で水の大切さの啓発を行う日とされています。今年のテーマは「地下水」です。

世界では、4億5,000万人の子供を含む14億2,000万人以上が水への脆弱性が高い、あるいは極めて高い地域で暮らしています。これは、世界の子どもの5人に1人が、日々の生活に必要な水を十分に得られていないことを意味します。

この写真は、フィリピン・ネグロス島の農村部にある飲料用でもある井戸です。この井戸の周りにはサトウキビ畑が広がっています。井戸の水を分析してみると高濃度の硝酸態窒素が検出されました。硝酸態窒素が飲料水などに多く含まれると、血液の酸素運搬能力を阻害するメトヘモグロビン血症を引き起こし、人の健康を害するおそれがあります。この井戸で検出された硝酸態窒素は、畑に施用された窒素肥料が主な起源であると考えられます。畑に施用された窒素肥料のうち、サトウキビに吸収されなかった分は地下水へ流入します。安全な飲料水を供給するインフラ整備が必要ですが、まずは畑の窒素肥料の利用効率を高め、地下水の硝酸態窒素濃度を低下させる取り組みが求められます。

途上国のみならず、日本でも地下水の硝酸態窒素は高い値を示します。例えば地下水が重要な水資源である宮古島においても、1980年代に農村部で高い値を示しました。地下水の硝酸態窒素濃度を下げる取り組みを行った結果、濃度は低下傾向にあります。日本においても、過剰な施肥や家畜排せつ物の適正な処理を行うなど、窒素負荷軽減の取り組みが求められています。

国際農研では、沖縄県のサトウキビ栽培における適切な肥培管理に関する研究を行っており、以下の成果を挙げています。

サトウキビの収量を維持しつつ窒素負荷量を減らすことができる肥培管理技術の開発
(令和2年度)

フィリピンにおいても、フィリピン農業省砂糖統制庁と協力し、窒素肥料を削減してもサトウキビの収量が下がらないことを実証し、農家さんに普及する活動を行っています。2021年4月から始まった熱帯島嶼環境保全プロジェクトでは、これまでのプロジェクト成果を踏まえ、熱帯島嶼の山・里・海が一体となって、窒素負荷軽減技術の開発を行い、河川と地下水の保全に取り組んでいます。


(参考文献)
国連:World Water Day | World Water Day 2022 https://www.worldwaterday.org/


(文責:熱帯・島嶼研究拠点 安西俊彦)
 

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