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430. 世界土壌デー2021「土壌の塩類化を阻止し、土壌の生産性を高める」

430. 世界土壌デー2021「土壌の塩類化を阻止し、土壌の生産性を高める」
「世界土壌デー(World Soil Day)」は、健康な土壌の重要性から、土壌資源の持続的管理を提唱する場として、毎年12月5日に開催されています。今年は、「土壌の塩類化を阻止し、土壌の生産性を高める」をテーマに開催されます。
塩分は土壌や水の中に自然に存在しており、塩分を含んだ土壌は豊かな生態系を支える可能性があります。しかし、干ばつや人間活動(不適切な灌漑、都市化など)によって、塩分が過剰に土壌に集積すると、土壌劣化が生じます。特に乾燥地域の農業生産では、灌漑が必須ですが、その灌漑を要因とした土壌の塩類化が深刻な課題となっており、世界の食料安全保障および土壌資源の持続的管理において、最も重要な問題のひとつとして認識されています。
土壌の塩類化が深刻な地域として、以下の地域が良く知られています。
- 中央アジアのアラル海流域(アムダリア川およびシルダリア川流域)
- インドのヒンドゥスタン流域
- パキスタンのインダス川流域
- 中国の黄河流域
- シリアとイラクのユーフラテス川流域
- オーストラリアのマレー・ダーリング川流域
- アメリカのサン・ホアキン・バレー
世界土壌デー2021「土壌の塩類化を阻止し、土壌の生産性を高める」では、土壌劣化の要因である土壌塩類化への取り組みを通じて、土壌改善を図る社会を奨励し、健全な生態系と人間の幸福を維持する重要性への認識を高めることを目的としています。
国際農研においても、これまで、土壌の塩類化が顕著である中央アジアのアラル海流域に位置するウズベキスタン共和国を対象に、低コストの塩類化対策技術の開発に取り組んできました。その成果として、以下のガイドラインと技術マニュアルを作成しました。
• 「高地下水位条件下における圃場レベルの塩害軽減対策のガイドライン」
(ロシア語、ウズベク語)
https://www.jircas.go.jp/en/publication/manual_guideline/28
• 「塩害軽減のための浅層暗渠排水技術マニュアル」
(日本語、英語、ロシア語、ウズベク語)
https://www.jircas.go.jp/en/publication/manual_guideline_59
そして、2021年4月からスタートした「持続的土地管理プロジェクト」では、インド共和国において土壌塩類化が深刻であるヒンドゥスタン流域を対象に、農家が営農活動の一環として取り組める低コストの灌漑排水技術による塩類化対策の開発を進めています。
(文責:農村開発領域 大西純也)