Pick Up
282. 2020年気候変動のハイライト
2021年4月22日、アメリカ・バイデン大統領主催の気候変動サミットに合わせ、日本政府も大幅な温室効果ガス排出目標を表明しました。バイデン大統領は、異常気象・極端気象の頻発化を放置することの経済コストに懸念を示し、一国では解決できない気候危機の問題に国際社会が連携する必要を訴えました。
19日に発表された世界気象機関(WMO)が 2020年世界気候変動白書(State of the Global Climate 2020)でも異常気象・極端現象が言及されています。
多くの人々にとり、2020年はCOVID-19パンデミックが世界を混乱に陥れた年として記憶されていますが、報告書は、2020年は人為的な気候変動によってもたらされた異常気象などによって人々の生活が大きく影響を受けた年であったことを強調しています。その他、報告書は、2020年の気象上の特筆すべき出来事を挙げています。
- まず、二酸化炭素CO2、メタンCH4、亜酸化窒素N2Oなどの温室効果ガスの大気中濃度は、COVID-19封じ込め策による一時的な減少にもかかわらず上昇を続けました。
- 2020年は史上最も暑い年の一つであり、6年連続で記憶に残る暑さを記録しました。
- 6月20日、ロシアの北極圏地域で38℃という暑さを記録しました。
- 海面上昇トレンドは加速し、酸性化の進行は海洋が気候変動を和らげる能力を弱めました。
- 2020年9月、北極圏の氷床は過去2番目に最小のレベルに達しました。南極でも氷の減少が加速しています。
- 北大西洋のハリケーンは活発度を増し、異常熱波、干ばつや森林火災は、多くの死者と数百億ドルにのぼる経済損失をもたらしました。
- COVID-19が農業部門でもたらした物流寸断は、気候インパクトの影響も相まって、食料安全保障の危機を悪化させました。
気候変動サミットにおいて、バイデン大統領は、気候変動に対応する上で、科学的知見に基づいて行動することの重要性も強調しました。このPick Upコーナーでも、気候変動に関する国際的な科学議論について紹介してきました。今後も、国際農研の情報プログラムでは、気候変動やフードシステムなど、地球規模課題についての戦略的な科学的情報を体系的に収集・分析し、提供していきます。
参考文献
WMO. State of the Global Climate 2020 https://library.wmo.int/index.php?lvl=notice_display&id=21880#.YHg0ABMz…
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)