平成27年10月27日、国連大学ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)において若手外国人農林水産研究者表彰(農林水産省農林水産技術会議主催)の表彰式典が挙行されました。式典は、まず表彰式において、小林芳雄農林水産省農林水産技術会議会長の主賓挨拶に続き、来賓の皆様の挨拶、選考委員会の岩元睦夫座長より審査経緯の報告をいただきました。また、賞の授与では、小林会長より表彰状が、岩永勝JIRCAS理事長より奨励金の目録が受賞者に授与されました。

表彰式に引き続き受賞者講演が行われ、受賞者による研究成果の発表が行われ、つつがなく式典を終えることができました。

本賞は、開発途上地域のための農林水産業及び関連産業に関する研究開発に優れた功績をあげている又はあげつつある若手外国人研究者を農林水産省農林水産技術会議会長が表彰するもので、今回が9回目です。受賞者と業績名は、次のとおりです。

受賞者と業績名(敬称略)

業績:ヒートショック誘導抵抗性のメカニズム、有効性、および実用的応用

Dr. Ani WIDIASTUTI

  • Dr. Ani WIDIASTUTI
  • アニ・ウィディアストゥティ
  • 国籍:インドネシア
  • 所属:ガジャマダ大学

 

 

[業績概要]

農薬の過剰使用に対する解決策のひとつとして、抵抗性誘導技術の応用による植物の防御機構を利用する方法がある。メロンおよびイチゴの苗に対し、熱ショック処理(50°C、20秒間)を施すことで抵抗性が誘発され、灰色かび病(Botrytis cinerea)および炭疽病(Colletorichum gloeosporioides)への感染抑制効果が認められた。メロンでは、熱ショック処理12時間後および72時間後にペルオキシダーゼ(POX)およびキチナーゼ1(CHI1)遺伝子の発現に増加が見られ、イチゴでは処理2日後にキチナーゼ2-1(CHI2-1)遺伝子の発現増加が見られた。熱ショック誘導抵抗性は、熱ショック処理を施した葉(局所的)および非処理の葉(全身性)においても認められた。メロンでは、POXおよびCHI遺伝子発現の一度目のピーク後に、サリチル酸(SA)蓄積量に増加が見られた。本研究では、熱ショック誘導抵抗性の発現機構においては、同時に活性化される二つの異なる経路、すなわちバイパス経路である第一の経路、そしてSA上流で起こりSAの蓄積を引き起こす第二の経路の存在が示された。この結果は、園芸学会ウリ科作物研究小集会において2010年に初めて発表され、近年、集中的な農薬使用が及ぼす影響への懸念から、インドネシアの農家への普及も進められている。

業績:ラオスでの持続可能な畜産農業促進のための牛用飼料向けサイレージ技術と農業副産物の開発と利用

Dr. Viengsakoun NAPASIRTH

  • Dr. Viengsakoun NAPASIRTH
  • ビエンサクン·ナパサー
  • 国籍:ラオス
  • 所属:ラオス国立大学

 

 

[業績概要]

ラオスのような熱帯諸国においては、畜産は自然状態での放牧の形態が取られてきた。これは、家畜の栄養状態が自然環境に大きく依存することを意味し、とりわけ乾期の飼料不足は共通の課題であり、対処する必要がある。受賞者は、現地の資源を生かすことでラオスにおける飼料の質および供給量の改善に取り組んできた。

受賞者は、ラオス国内の自然飼料に含まれる化学組成および栄養価の評価に加え、サイレージ技術を導入し、化学組成および発酵特性の評価を行った。さらに国内で生産されたサイレージからは、発酵スターターの候補となり得る、酸ストレスへの強い耐性と優れた乳酸生産性を示す二種の乳酸菌が分離された。これらの菌株は、質および保存性の高いサイレージの生産に役立つことが期待される。

ラオスでは近年、放置されたキャッサバ工業残渣の腐敗により環境汚染が引き起こされ、その軽減にはキャッサバ残渣の飼料利用が非常に期待されている。受賞者は、キャッサバ残渣には栄養素に加えサイレージ発酵に役立つ乳酸菌が豊富に含まれること、またサイレージ技術がキャッサバ残渣の飼料としての品質保持に役立つことを示した。これらの研究成果をもとに、現在実験農場において、ラオス国内の肉牛用飼料としてのキャッサバ工業副産物利用の有効性の検証が始められている。

業績:ナイル川デルタ地帯の土地及び水生産性を高めるための、小規模農場向けで費用対効果の高い揚床機械の開発

Dr. Atef SWELAM

  • Dr. Atef SWELAM
  • アーテフ・スウェラム
  • 国籍:エジプト
  • 所属:国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)

 

[業績概要]

エジプトにおいて、集約農業地域における水および土地保全を促進するため、ナイル川デルタ地帯における小規模農家向けに、揚床での整地および播種に役立つ費用対効果の高い揚床機械が開発された。これは、プロトタイプを用いて、参加農家の協力のもと、小麦畑における試験および改良を重ねた後に作成されたものである。本機は、作業精度が改善されており、さらに整備の容易さおよび植え付け速度の調整機能を備えており、これにより複数の作物の植え付けが可能となる。この技術は新しいプロトタイプの長期にわたる試験的使用とその検証結果を踏まえ、現在は現地の製造業者により採用され製造されている。

揚床植え付けの機械化は、小麦、トウモロコシおよびテンサイにおいて、用水量の減少、作業効率の改善や収量の増加など、多くの利点をもたらすことが明らかとなった。さらに、活動が活発な根域における水はけを改善することで浸透損失の低減にも効果が見られた。これらの成果を受け、現地での揚床植え付け技術の採用が進み、3年間(2011年-2014年)で小麦の耕地面積1,670ヘクタールから45,000ヘクタールにまで拡大した。

揚床植え付けの機械化はエジプト全域に広がり、エチオピア、エリトリア、イラク、ヨルダン、モロッコ、ナイジェリア、ウズベキスタン、スーダンなどの周辺国においても導入が進んでいる。また、当該機械は、集約型作物(小麦、ベルシーム、米)および非集約型作物(トウモロコシ、テンサイ、ソラマメ)のどちらに対しても使用が可能である。

当該機械は、1) 用水量の25%削減、2) 播種量の50%削減、3) 費用の25%削減、4) 肥料効率の30%向上、5) 収量の15-25%増加、そして6) 新卒者への現地における投資機会の提供といった、目覚ましい成果をあげている。