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166. WFP「一皿のコスト(The Cost of a Plate of Food)」

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WFP(国連世界食糧計画)は今月、「一皿のコスト(The Cost of a Plate of Food )」報告書を発行しました。以前は「豆を数える(Counting the beans)」と呼ばれていた報告書の名称が変更されたもので、本報告書が第3版になります。

コメや豆といった簡単な食事(その土地で好まれている基本的な食事)にいくら必要で、それは所得に対してどのくらいの割合になるのでしょうか? たとえばニューヨーク州であれば、スープ1杯1.26ドル、日々の所得の0.6%にすぎません。それに対して南スーダンでは、日々の所得の186%にも相当するのです。もしニューヨーク州の人が所得に対して同じ割合を支出しなければならないとしたら、スープ1杯392.82ドルにもなってしまいます。ここには大きなギャップがあります。

日々の所得に占める1皿の食事のコストが高い国20か国の中で17か国がサブサハラアフリカの国です。食料輸入とインフォーマルな労働への高い依存度が一因と考えられます。

多くの国で、紛争や気候変動などによって、土地を離れたり生計手段を失ったりして、家族を養うための食料を入手できなくなるという影響がありました。さらに今年は新型コロナウイルスの影響で、食料を市場で買う都市部の人々がますます大きなリスクにさらされました。WFPは、長期的に持続可能なフードシステムを構築するためのより一層の投資が必要だと呼びかけています。

 

国際農研では、マダガスカルやブルキナファソなどを事例として農家調査を行い、世帯で消費された食料から、農村部での食事パターンや栄養供給について実証分析を行っています。栽培作物と食事との関係、消費者としての嗜好や行動にも注目しつつ、より実効性のある農業・栄養介入の方法を探っていきます。そしてその分析結果を、農林水産業研究の戦略的方向性に活かし、世界の食料・栄養安全保障に貢献することを目指しています。

11月10日(火)にオンラインで予定されている国際シンポジウムでは、COVID-19のグローバル・フードシステムへの影響、またポスト・コロナ時代における農業研究課題について議論を行います。ぜひご参加ください。

 

JIRCAS創立50周年記念国際シンポジウム2020

「ポスト・コロナ時代のグローバル・フードシステムをとりまく地球規模課題の展開と農林水産業研究における国際連携の役割」

https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2020/e20201110

 

参考文献

WFP. The Cost of a Plate of Food 2020. https://cdn.wfp.org/2020/plate-of-food/?_ga=2.37786085.793668845.160386…;

accessed on Oct 28, 2020.

 

WFP News releases. New WFP report shows access to food grossly unequal as coronavirus adds to challenges https://www.wfp.org/news/new-wfp-report-shows-access-food-grossly-unequ…

accessed on Oct 28, 2020.

 

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)

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