国際機関動向

FAO 「食糧と農業の未来 - トレンドと課題(The future of food and agriculture – Trends and challenges)」の概要

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FAOによる本報告書は、2050年に世界銀行は97億人に達するという国連の予測に基づき、2012年水準よりも50%多く食糧・飼料・バイオ燃料を増産する必要があると推計する。地域差は大きく、多くの地域では2050年までに必要な農業増産は現状の3割程度であるが、人口増・需要急増が見込まれるサブサハラアフリカと南アジアでは農業生産は倍増する必要がある. 他方、世界的に農業生産性の向上は気候変動や自然資源劣化のために漸減傾向にあり、農業生産性維持のために保全農業・クライメート・スマート・アグリカルチャーなどの革新的な方法が模索されねばならない。本報告書は、飢餓と貧困撲滅を成功させる上で、持続可能な農業・食料システム構築とともに、我々が立ち向かわなければいけない課題を指摘する。

以下、21世紀農業を取り巻く変化を理解する鍵となる15のトレンドである。

  1. 人口増・都市化・高齢化―世界的に人口増は緩やかとなるが、アフリカと南アジアでは増え続ける。
  2. 経済成長・投資・貿易・食糧価格-経済成長は食糧需要を上昇させる。現行以上の農業部門投資が必要とされる。
  3. 自然資源を巡る競争―農業拡大が森林破壊の最大要因であり、また非効率的技術による伝統的バイオマス燃料依存も自然資源への負荷を高めている。農業・産業・都市の拡大は水資源不足をもたらす。
  4. 気候変動 -農業部門は気候変動に大きく影響を受け、またGHG排出により影響を与えてもいる。農業部門における気候変動対応・緩和策の施行が急務となっている。
  5. 農業生産性と革新  -農業増産の必要性に対し、近年気候変動の影響もあり、農業生産性の伸びは停滞している。研究開発・民間投資の促進を通じ、農業生産性向上のための革新が必要とされている。
  6. 越境する病虫害-グローバリゼーションの中、越境する病虫害の問題が深刻化し、薬への抵抗性を獲得しつつあるウイルス・バクテリアの広域な拡散が人類にも健康被害の脅威を及ぼしている。
  7. 紛争・危機・自然災害―近年、紛争とそれに伴う難民問題が食糧危機・栄養問題の原因として再び台頭してくるようになった。気候変動により旱魃・洪水も頻発化し、脆弱な社会では社会・政治の不安定化が紛争につながるケースも懸念される。
  8. 貧困・不平等・食糧安全保障の危機―世界的には貧困は減少傾向にあるものの、サブサハラアフリカでは未だに絶対的貧困層が増加している。農村貧困解消には、農業だけでなく雇用・生業多様化を支援して行く必要がある。
  9. 栄養と健康―栄養失調・微栄養素不足・肥満、の三重苦が世界人口の多数に影響を及ぼしている。
  10. 構造変化と雇用―過去、農業生産性の改善とともに非農業部門への労働移動・経済貢献度のシフト・都市-農村所得格差の解消、という経済構造変化が見られた。今日の途上国では、構造変化がうまく進んでおらず、細分化された土地・停滞する農業生産性・限られた雇用機会、など若者世帯が希望を持てない状況にある。若者への経済機会提供のための創造的な介入が必要である。
  11. 移民と農業における女性の台頭 -貧困・気候変動・紛争・自然資源への競争が、経済的困窮を背景とした移民を増加させることが予測される。男性農業から離職する一方で、農業・農産品か向上が女性によって担われる現象が報告されている。
  12. 変遷する食糧システム―都市化に伴う小売におけるスーパーマーケットの台頭により、食品の標準化・加工化の必要性が高まり、資本のない小規模農民はバリューチェーンから脱落せざるを得ないケースも増えている。また、バリューチェーンが「近代化」するにつれ、輸送コストだけでなく、農産物への化学肥料使用増加によりGHG排出が高まり、環境への負荷が高まることが懸念される。
  13. 食品ロス・廃棄物―世界的に生産された食糧の3割がフードチェーンの過程で廃棄されているとされる。途上国においては、ロスの多くが生産・ポストハーベスト段階で起きていると推定されており、インフラの制約・低い技術・知識の不足等が原因として指摘されている。
  14. 食糧・栄養安全保障のためのガバナンス -持続可能な開発目標SDGs達成のためには、世界的・国ごとのコミットメントが必要である。
  15. 開発金融 -伝統的に低所得途上国はODAに依存してきたが、それだけではSDGs達成に不十分かもしれない。

詳しくは以下のリンクにある報告書要約版原本を参照。
http://www.fao.org/3/a-i6881e.pdf

(文責 飯山みゆき)