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160. 国際農業研究のリターン

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農林水産分野の国際研究ネットワークであるCGIARは、低・中所得国における国立農業研究システムと緊密に連携し、世界的な食料危機を回避するための農業技術を開発する上で決定的に重要な役割を担ってきました。

しかし、新たな課題も出現しています。とりわけアフリカにおける低所得国の国立農業研究システムは、食料安全保障を満たしつつ、農業が直面する地球環境アジェンダに対応する上で、キャパシティビルディングを必要としています。CGIARはそうした支援において中心的な役割を果たすことが期待されています。これを踏まえ、カリフォルニア大学・ミネソタ大学・ノースダコタ州立大学の研究者が中心となり、CGIARの過去の研究投資の評価を行い、将来の投資決定の材料となる情報を提供することにしました。

過去50年間、CGIARは現在価値でおよそ600憶ドル相当の研究投資を行ってきました。主に主食作物の収量向上への貢献につながったこの投資は、約10倍のリターン(便益費用比率 10:1)をもたらしました。とりわけ貧困層の人々に十分な食料を安価に提供することで飢餓と貧困の削減に貢献すると同時に、農業による環境フットプリントを抑制しました(生産増加を単収向上で達成することで、農地拡大を最小限におさめました)。

本報告書は、近年、小規模農民を対象とした国際農業研究への支援が先細る傾向に懸念を表明しつつ、農業研究は研究から社会的インパクトへの時間を要するものであるが、CGIAR研究の高いリターンのエビデンスにあるように、長期的な視点から支援を続ける必要性を訴えています。

 

私たち国際農研は、CGIARのパートナーとして、CGIAR研究センターとの共同研究や研究者の派遣等を行い、低所得国や熱帯・亜熱帯地域の不良環境における安定的な食料生産への貢献を目的とした研究をすすめてきました。国際農研は、11月10日(火)に国際連携の重要性をテーマにしたシンポジウムを開催します。是非ご参加ください。

JIRCAS創立50周年記念国際シンポジウム2020

「ポスト・コロナ時代のグローバル・フードシステムをとりまく地球規模課題の展開と農林水産業研究における国際連携の役割」

https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2020/e20201110

 

参考文献

Julian M. Alston, Philip G. Pardey, and Xudong Rao. (2020) The Payoff to Investing in CGIAR Research. The Supporters of Agricultural Research (SoAR) Foundation. https://supportagresearch.org/assets/pdf/Payoff_to_Investing_in_CGIAR_R…

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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