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147. 日中と夜間の気候変動影響の非対称的な変化
Global Change Biology誌で「気温・雲量・湿度・降水量と葉面積指数に関する日中の非対称性の世界的な変化量 Global variation in diurnal asymmetry in temperature, cloud cover, specific humidity and precipitation and its association with leaf area index」論文が公表されました。
気候の変動が生物学的世界へ与える影響は、緯度・生息環境・空間規模によって異なります。対照的に、こうした変化が起こる一日のうちの時間帯については、比較的にこれまで十分な議論がありませんでした。生物学的に重要な生物活動は一日の内の特定の時間帯に起こり、日中と夜間の気候変動影響の非対称的な変化は、自然界に大きなインパクトをもたらす可能性があります。本論文は、最高気温・最低気温・雲量・湿度や降水量に関し、日中と夜間の平均変化率について調べました。1983年から2017年の間、時間ごとの気候データをもとめ、各時間を日照中あるいは日没の暗い時間へと振り分けました。非対称的に0.5℃以上温暖化うる地域に関しては、雲量・湿度・降水量について調べ、非対称的な温暖化への生物学的対応を捉えうる指標として、葉面積指数(leaf area index-LAI)の変化についても調べました。夜間の気温変化が日中の気温変化よりも0.5℃以上高い場合、雲量・湿度・降水量が上昇する関係を示しました。逆に、日中の気温変化が夜間の気温変化よりも0.5℃以上高い場合、気温・雲量・湿度・降水量は下がりました。雲量の増加が日中の気温低下をもたらすことにより、0.25℃以上の夜間の温暖化を経験した地域面積が、日中の温暖化を経験した地域の2倍以上に及び、より湿潤となったことで、植物生理や種の間の関係に大きな影響を及ぼしかねません。逆に夜間に比べて日中の温暖化がおこる場合は、高温・乾燥状態と相関があり、高温ストレスと水不足にさらされることを意味します。
参考文献
Daniel T. C. Cox et al, Global variation in diurnal asymmetry in temperature, cloud cover, specific humidity and precipitation and its association with leaf area index, Global Change Biology (2020). DOI: 10.1111/gcb.15336
(文責:研究戦略室 飯山みゆき)