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63. 新型コロナウイルス・パンデミック ― COVID-19による貧困への影響 最新推計

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2020年6月8日、世界銀行は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響を織り込んだ世界貧困率の最新推計値を発表しました。

世界銀行は4月時点において、COVID-19が4000万~6000万人を絶対的貧困に陥れると推計していました。それ以来、パンデミックの震源地はヨーロッパと北米から発展途上国に移行しており、低・中低所得国において死亡率上昇、経済封鎖の長期化とともに、パンデミックの経済コストは上昇しています。この結果を受け、世界的貧困レベルへのウイルス影響の推計も調整する必要があります。

2020年6月世界経済見通し(Pick Up 57)の成長予測モデルに基づき、パンデミックの世界貧困水準へのインパクトを、ベースラインと悪化シナリオの2つについて検討しました。ベースラインでは、アウトブレークの収束により、今年末には経済活動の回復を想定します。一方、悪化シナリオの場合には予想以上にアウトブレークが長引き、経済封鎖がしばらく継続あるいは再発動されることを想定しています。悪化シナリオが実現してしまう場合、脆弱な企業は市場から撤退し、脆弱な世帯は消費を減らし、低所得・中低所得国の中には金融危機が悪化する国も出てくるでしょう。ベースライン・シナリオでは2020年の世界経済成長が5%縮小すると予測されるのに対し、悪化シナリオでは8%縮小が予測されています。ベースライン・シナリオでは、COVID-19により、7100万人が一日当たり1.9ドルの絶対的貧困に陥るとされ、悪化シナリオではその数は1億人に及ぶと予想されています。

以前の見通しでは、サブサハラ・アフリカが最大の打撃を受けるとされていました。今回の予測は、とりわけインドについて悲観的です。サブサハラ・アフリカの状況は前回の予測とほぼ変わりませんが、南アジアはCOVID-19 による貧困層の拡大が予測されています。

注意すべきは、インドの貧困に関する最新の推計が2011-12年時点のものであり、今日の貧困率、かつパンデミック開始前の貧困率について正確な情報がないことです。

前回と同様に、今回の見直しにおいても、貧困予測は多くの不確実性を伴います。成長率の変化、格差、経済成長の貧困削減への役割など、さらなる分析が必要です。

 

参考文献

World Bank. Updated estimates of the impact of COVID-19 on global poverty. Mahler et al. June 8, 2020. https://blogs.worldbank.org/opendata/updated-estimates-impact-covid-19-global-poverty

Pick Up 57. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 世界銀行2020年6月 世界経済見通しhttps://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200604

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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