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49. 新型コロナウイルス・パンデミック -Nature Climate Change 論文:COVID-19下の強制的待機による一時的な二酸化炭素排出量削減の推計

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2020年5月19日、Nature Climate Change誌で、「COVID-19下の強制的自宅待機(隔離・移動制限)による一時的な二酸化炭素排出量の削減(Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 forced confinement)」論文が発表されました。その概要を紹介します。

2020年以前、二酸化炭素排出量は、2019年に増加が見られなかったのを除き、10年間に毎年約1%ずつ増加していました。再生エネルギー生産は拡大していましたが、化石燃料と並行して使われ、代替するまでには届かず、陸上輸送からの排出量は増え続けました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による政策は世界のエネルギー需要パターンを激変させています。国境が閉鎖され、人々が自宅での待機を迫られた結果、移動が減り、消費パターンが変化しました。この論文は、規制中の二酸化炭素排出量の減少を推計するために、政府による政策とデータを整理しました。

リアルタイムでCO2排出量を計測するデータの不足から、代わりに著者らは、異なる政策が排出量に与える影響の度合いを捉えるインデックス(confinement index: CI)に基づいて国レベルでの排出量を推計するアプローチを考案し、6つの経済セクターに関する毎日の活動データを利用しました。

2019年平均と比べ、2020年4月初頭までに、日ごとの世界的な二酸化炭素排出量はマイナス17%(-11~-25%)減少したと推計され、その半分程は陸上輸送の変化によるものでした。ピーク時において、国ごとの排出量は平均で―26%減少しました。2020年の年間排出量へのインパクトは、強制待機・隔離措置がいつまで続くかによりますが、6月中旬までにパンデミック前の条件に戻るのであれば―4%(-2 ~-7%)、2020年末までに世界中で何らかの規制が続く場合は-7%(-3~-13%)の排出減と想定されます。危機後の政策・経済インセンティブが、今後数十年にわたる世界的な二酸化炭素排出量の方向性を決定づける可能性があります。

 

参考文献

Le Quéré, C., Jackson, R.B., Jones, M.W. et al. Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 forced confinement. Nat. Clim. Chang. (2020). https://doi.org/10.1038/s41558-020-0797-x

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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