国際機関動向

世界銀行2018「総力を結集せよ- サブサハラ・アフリカにおけるマルチセクター・アプローチを通じた発育阻害の解決へ [All Hands on Deck : Reducing Stunting through Multisectoral Efforts in Sub-Saharan Africa].」概要

関連プログラム
情報収集分析
国名
アフリカ

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1990年以来、年齢に対して低身長、すなわち発育阻害(stunting)に陥る5歳以下の子供の数は、世界的に大幅に減少傾向にある。サブサハラ・アフリカにおいては、発育阻害に陥る子供の割合は減少傾向にある一方、その絶対数は世界的動向に反して増え続けており、地域の長期的な人的資源開発と経済成長に悪影響を与えることが懸念される。

栄養状況の改善には、保健部門(health sector)のみならず、農業・教育・社会保障・水・公衆衛生(water, sanitation and hygiene - WASH)部門間の協調が不可欠であることが認識されてから久しい。実際に、低栄養状況の解決にはマルチセクター・アプローチによる解決を前提とした、すなわちいわゆる総合的な取り組みが実施されてきた。残念なことに、栄養に関するマルチセクター・イニシアチブ関連プロジェクトは必ずしも常に期待された成果を上げてきたとは言い難く、マルチセクター・アプローチを標榜するだけでは十分ではないことが認識されるようになってきた。本報告書は、サブサハラ・アフリカにおける発育阻害の撲滅を目指し、より効果的なマルチセクター介入の設計を目的とし、各国の事情に応じた全セクター共通目標設定や、これが不可能な場合の特定セクターへの介入の優先順位付け(sequencing)に役立つエビデンスを提供する。

本報告書は、栄養状況改善に貢献しうる複合的な要因を理解する努力の一環として、サブサハラ・アフリカ33か国について、各国固有の栄養問題、とりわけ発育阻害(stunting)の複合的な要因に関して、マルチセクターの視点から分析を行った。とりわけ、十分な栄養を保障するための三大要因である、世帯食料安全保障(household food security and care)、ヘルスケアへのアクセス(health care access)、そして水・公衆衛生(WASH)、に着目した。サブサハラ・アフリカ諸国では、これら三大要因の全てにアクセスを持つ子供は極めて少数であり、二つの要因にアクセスを有する状況でさえ稀である。チャド、エチオピア、ニジェールの三か国では、三要因の一つもアクセスがない子供が半数に達した。同時に、2つ以上の要因へのアクセスは、低い発育阻害率と相関があった。この知見は、発育阻害が蔓延する地域において、異なるセクター間での共同目標設定が重要であることを示唆する。また、世帯所得上昇と発育阻害の減少、降雨量減少と発育阻害率の上昇、に関する相関に言及し、気候変動のコンテクストを踏まえ、所得に関する気候関連リスクを緩和する政策の重要性を強調した。

 

本記事は、以下のブログの内容に言及している。

http://blogs.worldbank.org/health/all-hands-deck-halting-vicious-circle-stunting-sub-saharan-africa

より詳しい内容に関しては、以下のサイトを通じ報告書原文を参照のこと

“World Bank Group. 2018. All Hands on Deck : Reducing Stunting through Multisectoral Efforts in Sub-Saharan Africa. World Bank, Washington, DC. © World Bank. https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/30119 License: CC BY 3.0 IGO.”

https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/30119/127344.pdf?sequence=4&isAllowed=y

なお、概要に関する本翻訳は、世界銀行から公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。

(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)

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