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1535. AIが切り拓く「食」の未来 ~食品イノベーションの新たな展開

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1535. AIが切り拓く「食」の未来 ~食品イノベーションの新たな展開

 

私たちが日常的に口にする食品の多くは、経験と試行錯誤に依存して開発されてきました。新たな食品の開発には、原材料の選定、配合設計、発酵、製造、官能評価など多くの工程が含まれ、それぞれに多大な時間と実験が必要とされます。一方で、世界の食料システムは温室効果ガス排出や生物多様性損失の要因の一つとされており、持続可能な食の実現に向けた革新的な手法の導入が求められています。
Nature Foodに掲載されたDattaら(2026)のレビュー論文は、こうした課題に対する有力な手段として人工知能(AI)に注目し、従来の経験則に依拠した食品開発を、予測・設計に基づく食品科学へと発展させる可能性を指摘しています。

同論文によれば、特に植物由来食品、発酵食品、培養食品などの代替タンパク質分野は、AI活用の重要な対象とされています。AIは、タンパク質や脂質などの分子構造データから機能性や味、食感を予測し、有望な原材料や配合の候補を提示することが可能とされています。これにより、従来は多数の試作を要した開発プロセスの効率化が期待されています。また、発酵工程の最適化、製造条件のリアルタイム制御、香りや食感の予測など、食品開発全体にわたる応用可能性が示されています。

一方で、著者らはAIの導入自体を目的化すべきではない点を強調しています。論文では、不適切なAI活用は品質の低い成果の生成や環境負荷の増大、さらには消費者の信頼低下につながる可能性があると指摘されています。食品は健康や安全、文化的価値と密接に関わる分野であることから、AIの活用には慎重な検討が必要とされています。特に、時間、コスト、不確実性の低減に資する具体的な課題に対して、人間の専門知識と組み合わせて活用することの重要性が示されています。

さらに同論文では、AIとロボットの統合による自律型研究開発(いわゆるセルフドライビング・ラボ)や、製造現場におけるデジタルツインの活用といった今後の展開についても言及されています。また、大規模言語モデル(LLM)を用いたレシピ設計など、個人の嗜好や栄養、環境負荷を考慮した応用の可能性も示されています。

著者らは今後の研究開発の方向性として、食品を設計可能な材料として捉えるアプローチ、科学的知見を組み込んだ機械学習の高度化、AIとロボットによる自律型研究開発基盤の構築、ならびに栄養・持続可能性・嗜好性を統合的に評価するAIの開発などを挙げています。
以上は主として当該レビュー論文の内容に基づくものですが、食品分野におけるAI活用は、経験則に依存してきた開発プロセスを変革する可能性を有しています。一方で、その社会実装にあたっては、技術的有効性のみならず、安全性、持続可能性、社会的受容性を踏まえた慎重な対応が求められると考えられます。

 

(参考文献)
Datta, B., Buehler, M.J., Chow, Y. et al. Artificial intelligence for food innovation. Nat Food (2026). https://doi.org/10.1038/s43016-026-01380-7

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)
 

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