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1502. 海面上昇の加速、観測精度向上により要因解明が進展
1502. 海面上昇の加速、観測精度向上により要因解明が進展
全球平均海面水位(Global Mean Sea Level: GMSL)の上昇は、主に海水温の上昇に伴う熱膨張と、氷河・氷床の融解などによる海洋水量の増加によって生じるとされています。観測された海面上昇量と、これら既知の寄与要因の合計が整合するかどうかは、将来の気候変動予測や沿岸域における適応策の信頼性に関わる重要な課題です。
Huayi Zheng らが『Science Advances』に発表した研究(2026年)では、潮位計、衛星高度計、Argoフロート、GRACE重力衛星などの観測データを統合し、1960~2023年、1993~2023年、2005~2023年の3期間について、海面上昇の収支(バジェット)解析が実施されました。同研究によれば、観測された海面上昇量と各寄与要因の合計との差(残差)は、いずれの期間においても年あたり0.18 mm以内に収まり、海面上昇収支はほぼ閉じた状態に到達したと報告されています。
また同研究では、全球平均海面水位の上昇速度が、1960~2023年で年平均2.06 mm、1993~2023年で3.41 mm、2005~2023年で3.94 mmと、時代とともに加速していることが示されています。さらに、1960年以降の寄与割合については、海洋の熱膨張が約43%と最大であり、これに氷河融解、グリーンランド氷床、南極氷床などの寄与が続くと報告されています。
同研究では、収支の整合性が改善した要因として、衛星高度計の補正精度の向上、海洋内部温度データの品質管理の改善、氷床質量収支推定の更新、潮位計データに対する鉛直地殻変動補正の高度化などが挙げられています。一方で、地下水利用などを含む陸水貯留量の変動については、依然として大きな不確実性が残ることも指摘されています。
以上のように、本研究は、観測技術の進展により海面上昇の要因がより高精度に把握されつつあることを示しています。これらの知見は、将来の海面上昇予測の精度向上に向けて、衛星観測や海洋観測体制の継続的な維持・強化が重要であることを示唆するものです。
(参考文献)
Huayi Zheng et al., Improved closure of the global mean sea level budget from observational advances since 1960, Science Advances, Vol.12, Issue 21 (2026). DOI: 10.1126/sciadv.aea0652
(文責:戦略統括室 飯山みゆき)