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1493. 国際植物防疫デー

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1493. 国際植物防疫デー

 

5月12日は、国連が定めた「国際植物防疫デー(International Day of Plant Health)」です。この国際デーは、植物の健康を守ることが、飢餓の解消や貧困の削減、生物多様性や環境の保全、さらには持続可能な経済発展につながるという認識を世界的に高めることを目的としています。

私たちの生活は、植物によって支えられています。私たちが呼吸する酸素の約98%は植物から生み出され、日々口にする食料の約80%も植物が供給しています。しかしその一方で、植物の病害虫により、世界の農作物は毎年最大40%が失われているといわれています。これは、世界中で十分な食料と栄養を届ける努力を妨げる大きな要因となっています。

植物防疫、いわゆるプラント・バイオセキュリティは、植物にとっての水際対策や衛生管理のような役割を担っています。国境を越えて病害虫が侵入・拡散することを防ぎ、万が一発生した場合には迅速に対応するための仕組みです。こうした取り組みは、私たちの食卓を守り、農家の雇用を守るだけでなく、国際貿易を円滑にし、かけがえのない生態系や生物多様性を保全することにもつながっています。

私たち一人ひとりにもできることがあります。海外からの帰国時や旅行の際には、植物、果物、野菜、種子などを安易に持ち込まないことが重要です。これらには目に見えない病害虫が付着している可能性があり、日本の農業や自然環境に大きな被害をもたらすおそれがあります。特に、土壌や土の付いた植物は病害虫が潜むリスクが高く、原則として日本への持込みが禁止されています。また、植物や植物製品をオンラインで購入する際には、信頼できる販売元であるか、必要な検疫手続きが行われているかを確認することが求められます。さらに、身近な植物に異変が見られた場合には、速やかに関係機関へ情報提供することが大切です。

植物病害虫は、世界の食料安全保障や経済にも大きな影響を及ぼしています。農作物や貿易に莫大な損失をもたらしているほか、気候変動の影響により、病害虫の発生が早まったり、これまで見られなかった地域に拡大したりする事例も増えています。将来にわたって安定した食料供給を確保するためにも、植物の健康を守る取り組みは今後ますます重要になっていきます。
植物の健康を守ることは、私たち自身の暮らしと未来を守ることにつながっています。

植物の健康を守るためには、日々の防疫対策だけでなく、持続可能な防除法を開発する研究も重要です。その一環として、害虫の個体数を抑える天敵昆虫の活用や、殺虫剤の効果を継続的に確認し、適切な利用につなげるためのモニタリングなどの取組があります。国際農研では、害虫の発生状況を継続的に調べたり、天敵昆虫を使った防除にかかる費用を評価したりすることで、農薬に頼りすぎない持続可能な防除法の開発に取り組んでいます。例えばタイでは、天敵昆虫の増殖コストを試算し、方法によってはこれを一定程度低く抑えられることを明らかにしました。この結果は、天敵昆虫が農薬に頼りすぎない防除体系において利用できる1つの選択肢になり得ることを示しています。こうした研究は、将来にわたって植物の健康を守るための新しい可能性を広げています。

 

(参考文献)
Kusano, E., Malee, S., Sirimachan, N., Pinsri, N., Sappanukroh, P., Nitjarunkul, A., Jamrutsri, P., & Kobori, Y. (2026). Cost estimation model for small-scale rearing systems of natural enemy insects: Propagation for controlling Spodoptera frugiperda (Lepidoptera: Noctuidae) in Thailand.
CABI Agriculture and Bioscience, 7, 6. https://doi.org/10.1079/ab.2026.0006
(文責:戦略統括室 飯山みゆき、社会科学領域 草野栄一、生産環境畜産領域 小堀陽一)

 

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