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1304. 致命的な暑さと湿気

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1304. 致命的な暑さと湿気

 

気候変動は、異常な暑熱現象の頻度増加と湿度の変動が相まって、直接的および間接的な健康リスクの悪化、エネルギー資源の逼迫、そして経済損失につながるため、世界の健康をますます脅かしています。猛暑は、特に脆弱で資源の乏しい地域において、ますます深刻な地球規模の健康リスクをもたらしています。

Annual Review of Environment and Resources誌で発表された文献レビューは、1990年以降の猛暑と湿度の現象を調査することで、これらの影響を軽減するための的を絞った戦略と潜在的な改善策を提案しています。

このレビューによると、1990年から2023年までの年間平均熱波日数は15.6日でした。最初の17年間(1990年から2006年)の年間平均熱波日数は12日でした。しかし、2007年から2023年の間には熱波の頻度が増加し、年間平均日数は19.3日に増加しました。特にアフリカ、中東、アジアの一部で、世界的な熱波日数の明らかな増加が観測されています。

猛暑は、高温と長期間にわたる持続を特徴とし、通常、2~3日間連続して続く場合は熱波として分類されます。他の研究とは異なり、研究者らは、場所と時間による猛暑の変化を測定するために、周囲温度と、湿度、日射、風を考慮した湿球黒球温度(wet-bulb globe temperature ―WBGT)を使用しました。

高齢者、幼児、既往症のある人々などの脆弱な集団は、生理的適応能力の低下により、より大きなリスクに直面しています。社会経済的に恵まれない地域の住民もまた、曝露の増加と適応能力の低下により、脆弱です。職業上の曝露はこれらの格差をさらに悪化させ、農業や建設業などの屋外労働者は、熱や脱水症状への直接的かつ長期的な曝露により、より高いリスクに直面しています。研究によって異常な暑さと湿度の生理的影響に関する理解は深まってきましたが、データの一貫性の欠如、統一された熱波の定義の欠如、特に特定の集団における死亡率と罹患率への影響に関する知識の不足など、課題は依然として残っています。

論文は、これらの課題に対処するには、データの充実と湿度の修飾効果に関する包括的な評価が必要であると主張しました。熱中症対策行動計画を強化するための世界的な協力が不可欠であり、特に資源不足地域における介入のアクセス性と有効性の向上に重点を置いた取り組みの必要性を訴えました。

(参考文献)
Shuang Zhou et al. 2025. Lethal Heat and Humidity Events. Annual Review of Environment and Resources
Vol. 50 https://doi.org/10.1146/annurev-environ-111523-102139

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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