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1082. 食料システム変革介入評価法の課題
1082. 食料システム変革介入評価法の課題
食料システムは我々の食生活の選択に多大な影響を及ぼします。消費者に栄養ある食へのアクセスを保障する観点から、2021年国連食料システムサミットでも100か国以上が食料システム変革へのコミットメントを表明しました。しかし、食料システム変革の過程は複雑で予測不能です。その原因として、先日のブログで述べたように、食料システムには、生産から流通そして消費にかけて重層的に関係者がかかわっており、その関係性も極めて複雑であることが挙げられます。
The Journal of Nutrition誌に公表された論文は、栄養ある食へのアクセス改善を目標としてアジア・アフリカで実施された食料システム介入プロジェクトを評価する方法的課題を指摘したうえで、改善に向けた提案を行いました。
まず、論文は、方法的な課題として、食料システムへの介入が望ましいインパクトをもたらしたかどうかを評価したエビデンスの少なさを指摘しました。食料システムはダイナミックで様々な要素が絡まっており、介入の影響は様々な分野に波及しかねません。研究を設計するうえで「変化の理論Theories of Change」に沿い、介入とインパクトの間の仮説をしっかり立てておく必要があります。
同時に、食料システムの相互連関という特性により、外的要因と介入のアウトカム・効果を判別しづらい問題があります。従来の介入試験では、ランダムに被検者を割り振り、コントロール集団と比較することで介入の効果を図りますが、食料システムの下で異なる変数をコントロールできないという事実は、介入がない場合と比べて食料システム変革の介入の効果を正確に測ることが困難であることを意味しています。
データ収集にもハードルがあります。介入は一般的に民間部門の企業の参加を伴いますが、適切なデータがタイムリーに記録されない問題や、データの帰属性についての課題があります。また、食料システムに沿った財の移動を捕捉できないケースも多々あります。
最後に、一つの効果を取り出したとして、介入の全ての効果を反映しているわけではありません。栄養面での効果だけに注目し、その他の食料の入手可能性や消費者行動といったほかの要因を軽視することは、食料システムの複雑性の本質を捉えず、不完全な効果分析に終わってしまいます。
以上を踏まえ、論文は、食料システム介入のインパクト評価を厳密に実施するうえで、「変化の理論Theories of Change」を用いて介入によるトレードオフやシナジー及び意図しない帰結を含む様々なアウトカムを想定し、複数の手法を用いた柔軟な介入・評価手法設計を行い、そうした過程について透明性をもって包括的に記述・説明することの重要性を提案しました。
(参考文献)
Lynnette M Neufeld, et al. Food Systems Interventions for Nutrition: Lessons from 6 Program Evaluations in Africa and South Asia, The Journal of Nutrition, Volume 154, Issue 6, 2024, Pages 1727-1738, https://doi.org/10.1016/j.tjnut.2024.04.005
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)