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1062.世界食料価格動向および食料安全保障に関する4つの知見

1062.世界食料価格動向および食料安全保障に関する4つの知見
7月11日、世界銀行はブログにて、COVID-19パンデミック来の世界食料価格動向および食料安全保障に関する4つの知見を発表しました。
COVID-19 後に世界食料価格は上昇したが、2022年に最高値を付けた後は下落傾向にある
2020年、サプライチェーンの寸断とパンデミックに起因する流通ボトルネックが世界食料価格の上昇をもたらし、2022年2月末のロシアのウクライナ侵攻を機とした農業輸出国による輸出禁止によって、2022年前半、といわけ穀物価格と食料油価格は歴史的高値をつけました。2022年半ばにはウクライナからの輸出再開で価格は落ち着きをとりもどしたものの、2023年中盤までパンデミック前より高水準を維持していました。その後、世界食料価格は下落傾向をとり、2024-2025年に かけてさらなる下落が予測されています。
食料価格は世界的に高止まりしている
サプライチェーン寸断や地政学的緊張にともなう国際食料価格の変動は各国の国内市場に深刻な影響をもたらします。輸入コストの増大に加え、通貨価値の下落は、とりわけ輸入食料に過度に依存する国々においてインフレ圧力を加速させています。さらに国際価格とローカルレベルでの異常気象といった現象がしばし非対称的に波及することが、国内価格動向を複雑にします。2020年末以来エネルギー価格やサプライチェーンのボトルネック等複合的な要因で上昇傾向にあった肥料価格は、ウクライナ戦争で急騰し、インフレ促進要因として浮上しました。2022年後半以降、肥料価格は落ち着いてはいるものの高止まりし、インフレ圧力の要因にとどまっています。さらに、先進国における賃金上昇インフレが国内食料価格の底上げ要因となっています。国内食料価格は2022年ピーク後に下落しているものの、全般的にパンデミック以前の水準を超え、東アジア・太平洋・南アジア地域を除き、食料価格インフレが2桁を維持している国々も多い状況が続いています。
脆弱な社会層に対する価格インパクトの評価はより困難に
世界的なインフレ動向を把握する上で、とりわけ食料安全保障に課題があると同時にデータ入手困難な紛争地域の状況評価に課題があります。伝統的にインフレ指標として使用されている消費者価格指標(CPI)や特に食料価格に特化した指標も、基本的に都市部を対象としており、紛争条件にある地域のローカル価格を捕捉するうえで制約があります。さらに指標自体、食料価格上昇に直面した世帯による多様な適応戦略を反映するわけではなく、また、危機に際した主食食品の入手可能性や質に関する変化を捉えられない傾向があります。
新たなAI(人工知能)ツールが、よりリアルタイムで精密なデータ提供に道を開く
以上の課題を鑑みて、世界銀行はデータの正確性・タイムリーさを向上するために、36か国を対象に新たな機械学習技術を取り入れています。例えばイエメンでは国連機関等のモニタリングをサポートするリアルタイム価格(Real Time Prices:RTP)データを提要し、地域レベルの燃料・為替レート・食料価格ショックに配慮した食料安全保障リスクのモニタリングを可能にしています。RTPデータはダウンロード可能で、プロジェクト関係者に開かれたデータとして維持されていく予定です。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)