Pick Up

960. ChatGPTはアフリカ水田稲作農家の質問に対して適切な回答ができるのか?

関連プログラム
情報


960.  ChatGPTはアフリカ水田稲作農家の質問に対して適切な回答ができるのか?

 

人工知能(AI)を使った会話型のコンピュータープログラムであるChatGPT(Chat Generative Pre-trained Transformer)は、大量のテキストデータから学習し、自然な文章を生成することができるとして、近年大きな注目を浴びています。

ChatGPTのようなAIは、様々な情報を学習し様々な相談事に即時に回答できるとして、ビジネスや法律分野での課題解決に大きな期待が寄せられています。農業分野においても、農家の課題解決にAIが使えるとすれば、農業普及サービスへのアクセスに制約がある地域・農家への展開が期待されます。

では、農業普及員の数が絶対的に不足するサブサハラ・アフリカ地域において、AIは農家の抱える質問に適切な回答を提供できるでしょうか。国際イネ研究所(IRRI)の齋藤和樹博士らのチームは、この疑問に答えるため、ナイジェリアの灌漑稲作農家の質問に対し、ChatGPTの回答が適切かどうかを評価する研究を実施しました。その結果が、Scientific Reports誌で公表されました。

チームは、ナイジェリアのカノ州における灌漑稲作に関する32の質問をリスト化し、6名の農業指導員に回答を求めました。農業指導員の回答は、ChatGPTの回答とともに、同地域の稲作推奨技術として適切かどうかという点で4人の現地の専門家に評価されました。比較の結果、ChatGTPの回答の方が農業指導員の回答よりもおおむね質が高いと評価されました。一方で、ChatGPTの回答の評価が農業指導員の評価より低かった項目は、播種時期、播種量、化学肥料施肥量や時期など、より具体的な数値が求められる質問でした。

論文は、ChatGPTは農業指導サービスを一部代替することが可能であるとしつつも、農家に実用的な情報提供において、現地の事情に合わせた播種や施肥の時期・量などの栽培管理をAIに取り入れていくことが不可欠であると結論づけています。

 

(参考文献)
Ibrahim, A., Senthilkumar, K. & Saito, K. Evaluating responses by ChatGPT to farmers’ questions on irrigated lowland rice cultivation in Nigeria. Sci Rep 14, 3407 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-53916-1

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

関連するページ