615. アフリカの持続的なコメ生産に関するField Crops Research特集号

CGIARセンターの1つであるアフリカライスセンター（Africa Rice Center、旧WARDA）の50周年を記念し、国際に著名な研究雑誌であるField Crops Research（エルゼビア社）に特集号「Sustainable productivity enhancement of rice-based farming systems in Africa」が発表されました。
今回の特集号の論文はアフリカ稲作に関する最先端の研究を行っている研究者らによって19本の論文が執筆されました。その内容ですが、過去50年間に実施されたアフリカ稲作における栽培育種学的な研究課題、現在の有望な技術、そして将来の研究方向性などを取り上げており、アフリカの様々なイネ生産環境・地域（西アフリカのサヘルの灌漑水稲からマダガスカルの高地）および多様なトピック（施肥技術、作付体系、水管理、除草技術、作物生育モデル、品種改良）をカバーしています。その特集号の発表された18論文を総括した論文（Rodenburg and Saito, 2022）では、以下に示す6つのこの分野の将来の研究方向性をあげています。
https://www.sciencedirect.com/journal/field-crops-research/special-issu…

1. よりいっそう天水田と陸稲を対象に研究・技術開発を行うこと。
2. ファーミングシステムおよびランドスケープレベルを考慮した技術開発。
3. 限れた資源、気候変動緩和・対応策、生物多様性の保全を含めた持続性に関する研究強化。
4. 3を実現するために、圃場レベルだけでなく、ファーミングシステムおよびランドスケープレベルを対象とした持続性に関するパフォーマンスインディケーターを策定し、活用する。
5. 省力化のための機械化を含めた技術開発・導入の強化。
6. 他分野との研究の連携強化。

国際農研は1990年代からAfricaRiceとの共同研究を行ってきました。今回の特集号には国際農研の研究員が以下の2つの論文に貢献しました。

• Hidetoshi Asai, Kazuki Saito, Kensuke Kawamura, 2021. Application of a Bayesian approach to quantify the impact of nitrogen fertilizer on upland rice yield in sub-Saharan Africa Field Crops Res. 272, 108284. https://doi.org/10.1016/j.fcr.2021.108284
• Tovohery Rakotoson, Yasuhiro Tsujimoto, Tomohiro Nishigaki, 2022. Phosphorus management strategies to increase lowland rice yields in sub-Saharan Africa: A review. Field Crops Res. 275, 108370.https://doi.org/10.1016/j.fcr.2022.108670

（参考文献）

Field Crops Research Special issue: Sustainable productivity enhancement of rice-based farming systems in Africa. Edited by Jonne Rodenburg, Kazuki Saito https://www.sciencedirect.com/journal/field-crops-research/special-issu…
Africa Rice Center: https://www.africarice.org/
Jonne Rodenburg, Kazuki Saito, 2022. Towards sustainable productivity enhancement of rice-based farming systems in sub-Saharan Africa. Field Crops Res. 287, 108670. https://doi.org/10.1016/j.fcr.2022.108670

（文責：社会科学領域・Africa Rice Center 齋藤和樹）