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497. ほとんど分かっていなかったカンボジアの海面小規模漁業を解明する

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497. ほとんど分かっていなかったカンボジアの海面小規模漁業を解明する

2022年は零細漁業と養殖の国際年と定められています。健康な食生活に欠かせず文化的にも極めて重要な魚介・海藻類の提供において、小規模な漁業・養殖業従事者は大きな役割を果たしており、振興のための実態把握は極めて重要です。  

持続的な海洋資源利用のためにSDG 14が提唱されていますが、世界では持続性のある漁業は減少し、過剰漁獲が進んでいます。経営体の魚種別漁獲量や操業実態を把握するということは漁業管理を実施するうえで最低限必要なことです。しかし、漁業管理の基礎データとなる漁獲統計は、途上国においては大規模漁業で漁獲された限られた種類のサンプルデータであることが多く、そのうえ小規模海面漁業の漁獲量や操業実態はほとんど分かっていません。

カンボジアの内水面漁業に関する論文は多いが、海面小規模漁業の先行研究はほとんどありません。カンボジアの海面小規模漁業は多くの漁家によって営まれていることから、カンボジア政府の協力を得て、主要な小規模漁業地域を選定し、また調査世帯をランダムサンプリングして、東海大学と国際農研でその実態を分析しました。

調査対象地域の漁業者数、主な漁具・漁法、漁船の概要、漁具ごと季節ごとの主要な魚種の漁獲量、季節ごとの主な魚種の価格、漁場位置、労働実態、1操業あたりのコスト、流通概要、漁業管理に対する漁業者意識などを明らかにしました。

季節によって、漁家の漁獲量が2~3倍異なることや、魚種によってはほとんど差異がないことなどが明らかにできました。漁獲統計データを収集するうえで、この点を加味した調査を実施しないならば、統計推計のうえで大幅な誤差がでることを示唆しています。

地域によって使われる漁具がやや異なることが明らかになりました。資源量推定において、漁具当たりの漁獲量(Catch Per Unit Effort)が使われることがありますが、この結果から地域別の漁具利用の実態を加味した資源量推定が必要であることを示唆しています。

さらに、漁家の女性や子供たちが、漁獲物の流通販売だけでなく、漁業においても重要な役割を果たしていることが明らかとなり、このことから女性・児童労働の監視、管理も重要な水産行政の役割であるといえます。


参考文献

CHIN, L., MIYATA, T., SAITO, H., & ISHIKAWA, S. (2021). Fisning gears, fishing grounds, target species and labor forces of marine small-scale fishery in Kampot Province, Cambodia. La mer, 59, 1-38. 

(文責:水産領域 宮田 勉)