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153. アフリカ・サヘル地域の大洪水

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アフリカのサヘル地域は乾燥による問題を抱えておりますが、現在、大洪水が発生しています。サヘル全域では無差別的で激しい暴力が発生しており、350万人以上が国内でまたは国境を越えて避難することを余儀なくされています。これは世界で最悪かつ最も急速に拡大している人道的危機とも言えますが、その真っ只中でこの洪水被害が起こったため、その被害はまさに脅威的なレベルとなっています。

季節的な雨は8月に始まり、この10年で最悪だと考えられています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は声明のなかで、すでに援助物資は配布されているものの、ブルキナファソ、チャド、マリの広い範囲にまたがる地域で、避難所、安全な水、医療をさらに数千人が必要としていると述べました。5人に1人が暴力で避難しているブルキナファソでは、13の地域すべてで危険な水位の急上昇が起こり、41人が死亡し、12,300世帯以上が家を失いました。保健センターは損害を受け、水は汚染され、それにともなう健康被害が危惧されるうえ、農地も水没し、食料不足と、生計を収穫に依存している農民とその家族の脆弱性が高まっています。

チャドでは236,000人以上が洪水の影響を受けました。マリでも、数千人が影響を受け、何百もの家屋が破壊されました。また、UNHCRによると、ニジェールも最も大きな打撃を受けている国の1つで、9月24日現在で71人が死亡し、35万人以上が全国の洪水の影響を受けています。避難民を受け入れている6つのサイトが洪水に見舞われ、9,000人以上が避難所を緊急に必要としています。

そして、南スーダンでは全域での豪雨と洪水が「壊滅的な」レベルの飢餓の脅威を生み出し、数十万人が家を失いました。WFPの関係者は、洪水はこの60年間で最悪の可能性があり、昨年の洪水の水が完全に引く前に今年の雨が始まったと説明しました。WFPによると、国の総人口の約半分に相当する約550万人が人道支援を必要としています。2019年の洪水はすでに「前例のない」ものであり、そして洪水シーズンのピークはこれからであるため、今年の危機はさらに深刻になる可能性があるとしました。南スーダンは、長年の内戦、地域間の紛争、政治的な争い、汚職により、自然災害に対して脆弱になっています。WFPは、食料を届けようにも届けられられない状態であることを踏まえ、洪水によって作物が破壊されたコミュニティを含め、完全に遮断された地域への飛行機とボートによる支援のための資金提供を呼び掛けました。

 

参考文献

UN News (2020) Flooding leaves South Sudan facing threat of ‘catastrophic’ hunger levels. https://news.un.org/en/story/2020/09/1074152  [Accessed on Oct 9, 2020]

UN News (2020) Deadly flooding adds new danger to communities fleeing Sahel violence. https://news.un.org/en/story/2020/09/1073452  [Accessed on Oct 9, 2020]

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)

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