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1026. 東アフリカの洪水被害拡大要因

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1026. 東アフリカの洪水被害拡大要因

ケニア・タンザニア・ブルンジ等の東アフリカ諸国は、大雨季(long rains)と重なる3月末~5月にかけて、豪雨による大洪水を経験し、70万人以上がインフラ損壊・学校閉鎖・家畜や穀物喪失の損害を被りました。

5月23日、極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attribution (WWA)は、東アフリカを襲った豪雨は、エルニーニョの影響よりも気候変動の影響が大きいとする暫定的な分析結果を示し、温暖化によって都市部のインフラ脆弱性問題が洪水被害を拡大しかねないと警鐘を鳴らしました。

3月末から4月にかけての豪雨は、タンガニーカ湖、ビクトリア湖、ナイロビを含む中央高地、ケニア南東部やタンザニア沿岸部の標高の低い地域で、とりわけ大きな被害をもたらしました。

東アフリカは、2020-23年に及ぶ長期の干ばつ、および深刻な洪水を伴う豪雨、と度重なる自然災害により、移動・インフラ被害・食料安全保障・健康リスクなどの人道危機を経験しています。

東アフリカにおける急激な都市化は、とりわけ洪水に見舞われやすく、排水用インフラが不十分なインフォーマルな居住地域における洪水被害を拡大しています。森林破壊や農地拡大に伴う土地利用変化も、洪水リスクを増加させています。

気候モデルは温暖化に伴う降雨増を予測していたのに対し、20世紀末にかけて、東アフリカの大雨季は降雨量が減少する傾向にありました。この「東アフリカパラドックス」ともいえる現象は近年ではあまり観察されず、降雨量は増加する傾向にある一方、新たな気候モデルは降雨量も弱まる可能性を示唆し、この地域における気候の観測値とモデルの解釈が困難であることを示唆しています。

観測値は、長期トレンドを示さず、20世紀末にかけて2008年までは乾燥傾向、過去15年間は降雨増の傾向を示しています。最近の傾向が人為的原因による気候変動により強まっているのかどうかにかかわらず、降雨量の増加は地域における洪水リスクの増大を意味します。

大雨季に対する人為的な気候変動の役割については、統計的に優位でないものの、降雨量増加傾向を示しています。1.2℃の温暖化の下で、平均的に、今回のような出来事は2倍起こりやすく、5%強度が高いと推計されます。将来的に、2℃温暖化のもとでは、降雨の強度はさらに 強まることが予想されます。

WWAチームはまた、今回の豪雨におけるエルニーニョ現象、およびインド洋ダイポール現象の効果を評価しましたが、両現象による自然の気候変動は、東アフリカにおける2024年の大雨季に無視できる影響しか及ぼしていないことが判明しています。

これらを踏まえれば、過去15年間の地域における降雨増加は、部分的に人為的な気候変動による可能性が高いことが推論されます。WWAは、今後の温暖化に対し、洪水に対する強靭性強化への投資の必要性を訴えました。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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