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131. デジタル農業と持続的なフードシステムの未来:ハイレベル政策文書の分析

 

学術誌Ecosystem Servicesにて、論文「デジタル農業と持続的なフードシステムの未来:ハイレベル政策文書の分析」が発表されました。

農業において、センサーや機械知能といったデジタル技術の応用は、エコシステムや食料生産に変革をもたすと期待されています。一方で精密技術がエコシステムに与える影響については、まだ決定的な証拠はありません。技術の可能性に焦点を当てた分析の多くは、デジタル農業に良い影響を与えるとしていますが、デジタル農業が実際にもたらす具体的な証拠に基づくというよりも、誇大な宣伝の結果ではないかと懐疑的な専門家もいます。しかしながら、多くの研究者や政策関係者は、データに基づいた意思決定によって有害な投入を削減し、希少な投入を最小化することで、現在の食料生産にパラダイムシフトをもたらす可能性に期待を寄せています。しかし、実際にはデジタル農業の未来がどのようなものになるのか、そしてエコシステムサービスの提供を含め、農業生産・フードシステムをどう変革しているのか、まだ分からないことが多いのが事実です。

本論文は、将来の食料システムの在り方・投資・デザイン・ガバナンスに影響を与える国際機関が、デジタル技術の行く末をどのように考えているかという観点から、この分野で影響力の高い世界銀行、国連食糧農業機関(FAO)、経済協力開発機構(OECD)が作成したデジタル農業に関する報告書を分析しています。その結果、これら報告書は原則的に食料生産量の最大化を優先する商業農業・フードシステムを現状維持する路線を踏襲している傾向が分かりました。また、これらの報告書では明示的に議論されていませんが、将来の食料安全保障を達成する上で、社会・制度・行動学・政治変化の考察や既存の食品流通にかかわる格差に向き合う必要性を挙げ、エコシステム研究者がデジタル農業の環境影響の評価に大きく貢献できることを示唆しています。

 

参考文献

Alana Lajoie-O'Malley et al. The future(s) of digital agriculture and sustainable food systems: An analysis of high-level policy documents. Ecosystem Services Volume 45, October 2020, 101183

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S221204162030125X

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)