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世界銀行「世界開発指標から読み解く、持続可能な開発目標 アトラス2018年版(World Bank. 2018. Atlas of Sustainable Development Goals 2018 : From World Development Indicators)」の概要

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持続可能な開発目標 アトラス2018年度版は、17の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals - SDGs) の達成に向けたトレンドと課題について、180以上の地図や図表を駆使し、視覚的な解説を試みている。このデータソースは、主に、世界銀行により編纂された、開発・生活水準に関する国際比較可能な統計をまとめた世界開発指標-World Development Indicators (WDI)に依拠している。これらの情報からSDGsの進捗と課題が見えてくる。例えば、1960年代来、世界的に平均寿命は伸びつづけているが、今日でも低所得国では死亡の3分の1が5歳以下の乳幼児に集中している。新たなデータによると、世界の成年人口の69%しか金融機関への口座等へのアクセスをもたず、その傾向は女性や若者・貧困層・低学歴層で顕著である。

 SDGsが取り扱う広範な課題に配慮して、本書は、世界銀行の専門家が重要視する問題を重点的に精選しつつ、SDGsが対象とする17課題 [貧困撲滅・飢餓撲滅・健康福祉促進・教育機会促進・ジェンダー平等化・水衛生持続的管理・持続的エネルギー促進・働き甲斐ある雇用・インフラ強化・不平等解消・持続可能な都市・持続的消費・気候変動対応・海洋資源保全・陸域生態系保全・平和促進・パートナーシップ]を網羅し、国・地域別に各SDG の達成に向けての進展度の把握を試みている。

例としてSDG目標2飢餓撲滅に関する記述を挙げる。栄養失調に最も影響を受けるのは乳幼児である。世界的にみて、1990年から2016年の間に発育阻害の5歳以下の子供は9500万人削減した。他方、サブサハラ・アフリカでは人口総数の増加によりその人数は増加し、減少傾向にある南アジアをすぐに上回ることが予想されている。栄養問題には様々な形態がある。低中所得国においては、5歳以下の子供の12%が平均身長に対し低体重(wasting)を被っている一方、5%が肥満である。世界的に5000万人、13人に一人に相当する数の子供が低体重に陥っており、その半数が南アジア、4分の1がサブサハラ・アフリカにいるとされる。男児は女児よりも栄養失調の問題を被りやすい傾向がある。世界的には食料不足は解消傾向にあるが、未だに必要最低限の摂取カロリーに満たない人々が多く存在する。2010年から2015年の間に、マダガスカルでは栄養不良が32%から42%と、世界でも最悪の悪化傾向を示した。

より詳しい内容に関しては、報告書原文、あるいはデータリンク(http://datatopics.worldbank.org/sdgatlas/)を参照のこと。

World Bank. 2018. Atlas of Sustainable Development Goals 2018: World Development Indicators. Washington, DC: World Bank. doi: 10.1596/978-1-4648-1250-7.

概要に関する本翻訳は、世界銀行から公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。 

(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)

 

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