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世界銀行「世界開発指標から読み解く、持続可能な開発目標 アトラス2017年版(World Bank. 2017. Atlas of Sustainable Development Goals 2017:From World Development Indicators)」の概要

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「持続可能な開発目標 アトラス2017年度版」は、17の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals - SDGs) の達成に向けたトレンドと課題について、地図や図表を駆使し、視覚的な解説を試みている。アトラスは、データソースとして、主に、世界銀行により編纂された、開発・生活水準に関する国際比較可能な統計をまとめた世界開発指標-World Development Indicators (WDI)に依拠している。

SDGsが取り扱う広範な課題に配慮して、本書は、世界銀行の専門家が重要視する問題を選択的に扱わざるを得なかった。それでも、本書はSDGsが対象とする17課題 [貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー、水・衛生、エネルギー、経済成長と雇用、インフラ・産業化・イノベーション、不平等、持続可能な都市、持続可能な消費と生産、気候変動、海洋資源、陸上資源、平和、実施手段]を網羅し、国・地域別に各SDG 達成に向けての進展度の把握を試みている。

2017年版アトラスでは、所得水準と地域、の2つの手法を用いて国をグループ分けしている。例としてSDG目標1[貧困]に関する記述を挙げる。1990年には世界人口の35%に相当する18億人が絶対的貧困に陥っており、その半数は東アジア・太平洋地域に集中していた。1990年から2013年までの間、東アジア・太平洋地域-とりわけ中国-と南アジアにおける絶対的貧困層人口の大幅な削減により、世界的にはおよそ10億人が絶対的貧困から抜け出すことができた。サブサハラアフリカでは一日1.90ドル以下で暮らす絶対的貧困に置かれた人々の相対的割合は減少傾向にあるものの、人口増により絶対的貧困層は1990年よりも1億1300万人増加して2013年には3億8900万人に増加した。このため現在、サブサハラアフリカは世界の絶対的貧困層の半数を抱えることになった。絶対的貧困の撲滅は現実的な目標ではあるが、持続的な成長と不平等の解消を前提とする。

その他のSDGs目標・課題についても、世界的トレンドと地域間比較が試みられている。例として、栄養失調と発育障害は、食料廃棄物問題の顕在化にもかかわらず、1990年来半減し、感染症の負荷も減少傾向にある。他方、水へのアクセスは拡大したが、衛生状況の改善は遅々としている。多くの人々にとって、ヘルスケアと教育への支出は自己負担に依存している。経済成長の環境への負荷は増大・加速し、エコシステムへのダメージは累積している。インフラは拡充しているが、人口増が急速であるサブサハラアフリカのような地域では、都市の居住インフラや農村の道路アクセス問題が大きな課題である。政府予算・海外直接投資は金融危機後の落ち込みから回復しつつあるものの、政府開発投資はターゲット水準に達していない。

より詳しい内容に関しては、報告書原文を参照のこと(https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/26306)。
World Bank. 2017. Atlas of Sustainable Development Goals 2017: From World Development Indicators. Washington, DC: World Bank. doi:10.1596/978-1-4648-1080-0. License: Creative Commons Attribution CC BY 3.0 IGO
   
なお、概要に関する本翻訳は、世界銀行から公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。
(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)

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