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国際食料政策研究所(IFPRI)「グローバル食料政策レポート・2017年版 [International Food Policy Research Institute. 2017 Global Food Policy Report.]」概要

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国際食料政策研究所(IFPRI)は、毎年、食料政策にまつわる最新事情の概要と見通しに関する専門家の見解を「グローバル食料政策レポート」としてまとめている。2017年版報告書は、低・中所得国において、急激な都市化がもたらす食料安全保障・栄養改善の課題を特集している。

第一章では、都市化する世界の食料安全保障と栄養問題に関連した、2016-2017年の食料政策のハイライトをまとめている。2016年は、栄養改善に関する多くの国際イニシアチブが発足、例として、第2回栄養学国際会議(ICN2)と持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえ、「2016-2025年 栄養のための行動の10年」が宣言された。気候変動分野でも2015年COP21で協議されたパリ条約が2016年に発効した。さらに第3回ハビタット・サミットで167カ国より採択された新都市アジェンダ(the New Urban Agenda)により、都市化問題も重要な国際開発課題として浮上した。その他、G7による国際栄養課題への取組み, G20による持続可能な開発目標達成の為の農業イノベーション支援、アフリカ開発銀行による農業構造変容への戦略的重点の発表、など国際社会による食料安全保障・栄養改善へのコミットメント表明も行われた。2016年の機運を引き継ぎ、2017年、そしてそれ以降の急激な都市化が食料安全保障・栄養に与える影響を見据えていく必要がある。都市人口の増加分の90%はアフリカ・アジアに集中し、とくに中国・インド・ナイジェリアだけで2050年までに9億人の都市住民を抱えることが予測されている。農村・都市部双方において、食料安全保障・栄養を改善する上での最大の課題は、小規模農民を中心とする農業生産者と都市部消費者の間の連携の強化である。本報告書の各章は、農村・都市関係の強化を目的とした、戦略的な政策改善、バリューチェーン強化、都市間仲介、非都市部への投資、といったテーマについて論じている。

本報告書はまた、途上国農業研究投資・生産性・飢餓状況等の指標・トレンドなどIFPRIが編纂した詳細最新データや、IFPRI経済政策モデル(IMPACT)を用いたシナリオ分析に基づく食料安全保障・栄養の見通しを提示している。より詳しいデータベースは、政策関係者・研究者のためにオンラインで公開されている。本書は、最近の文献レビューをまとめたIFAD (2016)「サブサハラ・アフリカにおける農村-都市関係と フードシステム」(https://www.ifad.org/documents/10180/b9021802-e3f7-4bd5-b0ea-760a8fbaab…)と合わせて読むと興味深い。

より詳しい内容に関しては、以下の報告書原文を参照のこと

International Food Policy Research Institute. 2017 Global Food Policy Report. http://www.ifpri.org/publication/2017-global-food-policy-report

なお、概要に関する本翻訳は、IFPRIから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。

(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)

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