Pick Up

1508.ヒートドームに初の科学的定義、極端高温の理解と予測精度向上へ

関連プログラム
情報


1508.ヒートドームに初の科学的定義、極端高温の理解と予測精度向上へ

 

ヒートドーム(Heat Dome)とは、上空の強い高気圧が長期間停滞することで大気中に熱が閉じ込められ、広範囲に異常高温をもたらす現象を指します。近年、北米や欧州をはじめ世界各地で発生した記録的な熱波の説明に用いられる機会が増えていますが、これまで明確な科学的定義は提示されていませんでした。

Overland ら(2026)は、北米における極端高温事象の解析を通じて、ヒートドームに関する定量的な気象学的定義を初めて提示しました。同研究では、1940~2025年までの北米の気象データを解析し、ヒートドームを「上空500hPa高度場の強い正偏差と、それに伴う地表面の極端高温が同時に発生する現象」と定義しています。また、同研究では、北米で発生した極端高温事象の多くがヒートドームと関連している一方で、すべての熱波がヒートドームによって引き起こされるわけではないことも示しています。

さらに、同研究によれば、ヒートドーム発生時には上空の高気圧性循環に伴う下降気流の強化により雲の形成が抑制され、その結果として日射が増加し、地表面付近の昇温が一層強まることが確認されています。このような大気循環の特徴を定量的に把握することにより、極端高温の発生要因をより正確に評価できる可能性が示されています。

本研究は北米の事例解析に基づくものですが、近年はアジア、欧州、アフリカなど世界各地で深刻な熱波が頻発しています。著者らは、ヒートドームの明確な定義が熱波研究における共通基盤となり、将来の気候モデルによる評価や極端高温リスクの比較分析に資する可能性があると指摘しています。

以上を踏まえると、極端高温は人の健康被害にとどまらず、水資源、農業生産、エネルギー需要など社会経済活動全体に影響を及ぼす重要な課題であり、本研究は「ヒートドーム」という概念を科学的に整理することで、今後の気候変動影響評価や適応策検討の基盤を提供するものと考えられます。

 

(参考文献)
J. E. Overland, F. Kretschmer, C. A. Smith et al., Toward a Scientific Definition of Heat Dome Events, 2026. https://doi.org/10.1016/j.wace.2026.100913


(文責:戦略統括室 飯山みゆき)

 

関連するページ