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1498. 南アジアの猛暑、気候変動で発生確率が約3倍に

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1498. 南アジアの猛暑、気候変動で発生確率が約3倍に

 

World Weather Attribution(WWA)は2026年5月14日、2026年4月から5月にかけてインドおよびパキスタンで発生した極端高温について、迅速要因分析(rapid attribution study)の結果を公表しました。

報告によれば、今回の熱波ではインド各地で最高気温46℃を超える地点が観測され、数億人規模が危険な高温環境にさらされました。また、熱関連死亡として、インドで少なくとも37人、パキスタン・カラチで10人が報告されています。加えて、冷房需要の増加に伴う電力需要の急増や、100万km²を超える地域で農業干ばつが確認されたとされています。

WWAは、観測データおよび19の気候モデルを用いて分析を実施し、人為起源の気候変動により、今回のような15日間の熱波の発生確率が約3倍に高まったと結論づけています。また、産業革命前の気候と比較した場合、同規模の熱波は約1℃低い気温であったと推定しています。

さらにWWAは、現在の気候条件では今回規模の15日間熱波は「約5年に1度」の頻度で発生し得るとし、任意の年に約20%の確率で同程度の高温が発生する可能性があると分析されています。一方で、2022年に発生した熱波は、より長期間かつ早期に発生したことから、今回よりも稀な事象であったと評価しています。

また、WWAは「4月の極端高温」の増加率が「5月」よりも大きいことを指摘しています。これは、南アジアにおいて危険な暑熱の時期が前倒しされ、かつ長期化している可能性を示すものです。さらに、乾燥した高温に加え、モンスーン前の高湿度環境による「湿潤熱(humid heat)」のリスク増加にも言及しています。

加えて、過去10年間における全球平均気温の上昇(約0.4℃)に伴い、同様の熱波の発生確率は約35%上昇し、強度も約0.3℃上昇したと推定されています。

将来予測についてWWAは、現在よりさらに1.3℃温暖化が進行した場合、今回規模の熱波はさらに2倍以上発生しやすくなり、気温も追加で約1.2℃上昇する可能性があるとしています。また、「現在では極端とされる2026年4月下旬の気候条件が、将来的には比較的涼しいモンスーン前の状態となる可能性がある」と指摘しています。

一方で、南アジアではエアロゾルや灌漑拡大による局地的な冷却効果が存在し、気温上昇の幅自体は他地域より小さくなる可能性も指摘されています。しかし同時に、これらの要因は相対湿度を上昇させることで人体の熱放散を妨げ、結果として熱ストレスを増幅させる可能性があるとされています。

さらに報告では、インドやパキスタンにおけるHeat Action Plans(HAPs)などの暑熱対策を評価しつつも、屋外労働者や低所得層、不十分な住宅環境に居住する人々が依然として高いリスクにさらされている点を指摘しています。また、熱波が正式な「災害」として位置付けられていない場合が多く、防災予算の対象となりにくいことも課題として挙げられています。加えて、都市化に伴う緑地減少やヒートアイランド現象、大気汚染の悪化が、南アジアにおける熱リスクを複合的に高めているとしています。

今回の分析は、南アジアにおける極端高温が単発的な異常現象ではなく、人為的な気候変動の影響を受けて発生頻度および強度が高まっていることを示すものといえます。今後は、気温そのものの上昇に加え、湿度や都市環境の変化を含めた複合的な暑熱リスクへの対応が一層重要になると考えられます。

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)
 

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