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1050. 農業における水問題への対応

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1050.  農業における水問題への対応

現在とは全く異なる気候が予測される未来において、水不足は農業に多大な影響をもたらしかねません。6月19日、Nature誌の論説は、農業における水問題に緊急に対応する必要性を述べました。

過去を振り返ると、水不足が災厄をもたらした例として、1930年代の北米におけるダストボールから、1980年代にエチオピア、21世紀初頭にオーストラリア、そして2020年シリア・イラク・イランを襲った干ばつなど、が挙げられます。数季にわたって雨が十分降らなければ、作物は枯れ、家畜は飢え、ときに飢饉と紛争の引き金となります。

気候変動は農家が依存する降雨パターンを予測不能にします。IPCCによると、2100年までに温暖化によって極端な干ばつにさらされる世界人口の割合は3%から8%に増加することが予測され、産業革命期と比べて3度の温暖化のもと、とりわけ低・中所得国の人々が極端な干ばつに直面すると予測されています。農業の気候適応が緊急に求められています。

しかしこれまで同じ場所で栽培されてきた作物や、同じ場所で放牧されてきた家畜は、降雨パターンが変わったからといって新しい場所に移ることはできません。そのため、生産者、および生産者を通じて国民および経済の食料安全保障の責務を負う政府が、人類にとって不可欠な農業が未来も存続できる方法を考えなければなりません。その方法として、作物の干ばつ耐性を向上する、あるいはもともと乾燥した条件で生存できる作物品種を選抜していくことを可能にする研究開発推進が急務です。

 


(参考文献)
How to address agriculture’s water woes, Water isn’t the only challenge facing agriculture in a climate-altered future, but a lack of it could have catastrophic effects. By Bianca Nogrady
Nature 630, S26-S27 (2024) https://www.nature.com/articles/d41586-024-02037-w

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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