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998. 気候変動とチョコレート

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998. 気候変動とチョコレート

ここ数か月、チョコレートの原料であるココアの価格が高騰しています。世界銀行のとりまとめる商品価格統計によると、2023年3月にキロ当たり2.75ドルであったココア価格は、2024年3月に7.09ドルと、158%も上昇しました。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、最近のココア価格高騰の背景に、気候変動の影響を指摘します。

ココアの生産は赤道に近い地域に集中しています。ココア世界生産量の4分の3を占める西アフリカでは、過去3年連続で熱波や豪雨といった異常気象や気候の変化がココア収穫量に打撃を与え、多くの小規模農家の収入が減少しました。例えば、2023年の最終四半期にガーナとコートジボワールを襲った豪雨により、カカオの成長と収量に影響を及ぼすスウォーレンシュートウイルス(swollen shoot virus)やカカオの木の真菌性疾患で収量損失をもたらすブラックポッド病(black pod disease )が蔓延し、ココア豆が腐ったり硬くなったりするなどして、収量に甚大な被害をもたらしました。

2022年・23年の世界ココア生産の58%を占めるガーナとコートジボワールでの生産ダメージは、世界市場にも及んでいます。国際的なココアの業界団体は、2023-2024年期、世界で374,000トンの供給不足に見舞われると予測しています。ちなみに、前期の不足は74,000トンでした。UNCTADエコノミストは、ココアの世界需要は価格非弾力的(価格の変化が消費者の需要にほとんど影響を与えない)であり、供給ショックは価格高騰につながると解説しました。先物市場では、3月26日、ココア1トンあたりの価格が初めて10,000ドルを超えたと伝えられています。この影響は、小売価格に波及し、インフレ・生活コストの上昇をもたらすことが予測されています。

UNCTAD専門家は、ココアの価格高騰は気候変動が社会経済にもたらす影響の大きさを示す一例に過ぎないと警告し、気候変動対策の緊急性を訴えました。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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