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861. 南極海氷の不安定化の兆候

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861. 南極の海氷

北極および南極の海氷の状態が、北半球および、南半球での季節の変わり目に際し、歴史的に低い水準に達することが見込まれています。最新の衛星データの解析によると、南極の海氷は変動が極めて大きいものの、1986年に報告された最小記録よりも100万平方キロメートル低い値となる見込みです。

これまで地球温暖化に対して何とか抵抗を示していた南極海氷にとって、研究者は懸念を表明します。南極海氷の不安定化は、地球システム全体に波及する影響を及ぼしかねません。南極の巨大な氷の表面は、太陽のエネルギーを反射し、氷の周辺の水を冷却することで、地球の気温のコントロールに大きな役割を果たしてきました。海氷が消失するにすれ、暗色の海面が太陽光を反射するかわりに吸収し、水温を高めて氷の融解を加速する、アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) が生じます。氷による冷却効果を失うことで、地球の「冷蔵庫」であった南極が「放熱機」に転じてしまう可能性 (from Earth's refrigerator to a radiator)が懸念されます。
 

他の大陸から孤立し海洋に囲まれていることから、南極は独自の気象・気候システムを維持してきました。2016年まで冬季における南極海氷は実際に拡大していました。一方、2022年3月に南極東部を襲った熱波は、従来マイナス50℃近くであるべき気温をマイナス10℃に押し上げました。海氷面積の最低記録の更新は、これまで地球温暖化の影響から隔離されてきた南極大陸の気候システムの在り方が根本的に変わってしまってきている兆候と指摘する研究者もいます。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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