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693. オゾン層回復における国際協調の役割
693. オゾン層回復における国際協調の役割
1月9日、米国気象学会の第 103 回年次総会において、国連環境計画と世界気象機関は、南極上空のオゾン層が回復傾向にあることを発表しました。
オゾン層は、太陽からの有害紫外線から人類と環境を保護する言わば地球の保護シールドです。オゾン層回復への取り組みは1987年のモントリオール議定書によって開始され、オゾン層破壊物質 (ODS) と呼ばれる 100 近くの化学物質の生産と消費の規制を目指してきました。
モントリオール議定書で規定された4年ごとの評価において、今回評価を担当した科学評価パネルは、成層圏でオゾン層破壊を引き起こす化学物質の生産・使用を世界的に規制してきたことが功を奏して、禁止されたオゾン層破壊物質の99%を段階的に廃止することに成功、成層圏上層のオゾン層の回復により人類が有害な紫外線にさらされる確率の削減に貢献したと評価しています。今後、現在の政策が維持されれば、オゾン層は、南極では 2066 年ごろまでに、北極では 2045 年までに、その他の地域では 2040 年までに、1980 年の値に回復すると予想されます。
科学評価パネルは、モントリオール議定書の取り組みは温暖化回避にも有効であるとします。同議定書の改定では、その他の代替フロンの生産・使用廃止も求められてきており、こうした物質はオゾン層の破壊に直接は貢献しなくとも、強烈な温室効果ガスです。これら物質生産・使用の全廃は、2100年までに0.3-0.5℃の温暖化抑制に貢献しうるとしています。
科学評価パネルはまた、大気上空にエアロゾルを意図的に注入する(成層圏エアロゾル注入-SAI: Stratospheric Aerosol Injection)ことで太陽光反射のコントロールをはかる気候工学(geoengineering)の影響についても議論し、成層圏の温度・対流・オゾン生成や破壊に影響することで、意図しない結果をもたらしうる可能性について警告しました。
(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)