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677. 食料生産の環境への影響
677. 食料生産の環境への影響
Our World In Dataはオクスフォード大学の研究者たちの協力を得て、地球規模課題の解決のための情報活用を促進する目的で設定されたプラットフォームですが、「食料生産の環境への影響」について特集したダッシュボードを公表しました。
特集では、食料生産の環境への影響について次のようにとりまとめています。
① 食料生産は世界の温室効果ガス排出量の26%を占める
② 農業は世界の居住可能領域(habitable land、氷や砂漠ではない土地のこと) の50%を占める
③ 農業は世界の淡水取水量の 70%を利用している
④ 農業は世界の海洋及び淡水における富栄養化(富栄養化とは肥料や下水、動物のし尿など陸地からの栄養流出液によっておこる水の汚染現象)の 78%を占める
⑤ 人間を含まない哺乳類のバイオマスの94%を家畜動物が占め、このことは家畜と野生哺乳動物の重量比が15対1であることを意味する
⑥ 鳥類バイオマスの71%を家禽類が占め、このことは家畜と野生動物の重量比が3対1であることを意味する
生産過程についてよく言われることは、植物性食品に比べ、動物性食品の環境負荷が高いことです。同時に、生産過程における環境負負荷は、国や地域の特徴、生産体系によって大きく異なり、その差は10倍以上であった研究事例もあるとのことです。
こうした事実を踏まえると、我々が何を食べどのように生産を行うかは、気候変動対策、水ストレス・汚染削減、土地の再生、世界の野生生物保護、の実現に大きく影響してきます。
Nature誌の論説によると、気候変動目標や世界の生物多様性を保全しようという戦略のほとんどすべてが、農地面積を現在の水準で維持あるいは削減することを求めています。しかし、2050年までに約100億人に増加すると予測される世界人口を養ううえで、2010年比で穀物生産を40-60%増する必要性があるとされ、収量向上を想定したとしても、世界で1~4億ヘクタールの農地拡大が避けられないとみなされています。穀物・家畜生産性をさらに向上するのに加え、たくさんの土地を必要とする商品への需要を削減することが求められます。
欧州連合(EU)は食料生産の環境への影響を削減する政策・戦略を推進していることで知られていますが、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)前日の12月6日、EU市場において森林破壊・劣化につながる食品規制の法整備に合意したことが報道されました。
法案自体は12か月前に提出されていましたが、最終合意案では、合法・違法にかかわらず、商品作物が生産・調達される農地からのトレーサビリティを要求することになっています。新たな政策が施行されれば、EU市場において、パームオイル、肉牛、大豆、コーヒー、ココア、材木、ゴム、および関連製品(牛肉、家具、チョコレートなど)の輸出入を行う際、企業が厳格なデューデリジェンス(適正評価手続き)を行うことが義務付けられることになるそうです。
こうした欧州の動きは、世界各国・地域の食料戦略にも影響を与えると考えられます。
(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)