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371. 世界の樹種の約三分の一が絶滅の危機に瀕している

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371. 世界の樹種の約三分の一が絶滅の危機に瀕している


樹木は森林の分布や構成を決定し、地上の植物・動物種にすみかを提供し、また、林・草原、あるいは都市の人工的な環境において生物多様性やカーボン吸収源の重要な構成要素となっています。このように樹木は生態学的・文化的・経済的に非常な重要な役割を果たしていますが、これまで世界レベルでの樹木の多様性・分布・保全の状況について、驚くほど情報が整理されていませんでした。

これを受け、過去5年間にわたり、グローバル・ツリー・アセスメントという研究プロジェクトが、 世界の58,497種の樹種について絶滅危機リスク等の情報をとりまとめました。その結果について、イギリスに本部を持つ非営利団体の植物園自然保護国際機構(Botanic Gardens Conservation International :BGCI)が報告書にまとめています(State of the World’s Trees Report)。

報告書の概要は、世界の樹種の約三分の一が絶滅の危機に瀕していると報告しています。樹種に対する脅威として、森林伐採や生息域の消失、木材等の乱獲、侵略的外来病害虫の拡散が挙げられており、気候変動も目に見えるインパクトを与えているとされます。

世界的に樹木の多様性は偏っており、最も樹種が多くみられるのが中央南アメリカで、その次が東南アジアとアフリカの熱帯地域となります。絶滅の危機に瀕している種の割合が最も高いのが熱帯アフリカであり、とりわけマダガスカルは危機的状況にあります。欧州・アジア・北米の温帯地域においては、樹木の種の多様性は相対的に低いものの、絶滅の危機に瀕する種の割合も低くなっています。

開発途上国では、農地拡大が森林破壊や劣化の主要な要因となっています。農地拡大の背景には、慢性的な農業生産性の低迷や、既存の農業からの収入の低さがあります。既に開かれた農地における作物の生産性、そして農家に対する収入を向上させることは、農地拡大を抑制し、森林破壊を回避する効果が期待されます。開発途上国における農業生産性を向上する技術開発は、食料生産増加のみならず、樹木などの多様性・環境保全の観点からも必要とされています。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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