Pick Up

314. エチオピア高原で土壌保全と住民の生活を両立させる!?

関連プログラム
情報

 

314. エチオピア高原で土壌保全と住民の生活を両立させる!?
 

世界の食料・環境問題、飢餓・貧困の撲滅などに取り組むSDGs、その活動を支えているのは、私たちの足元にある土地です。世界では農地を含む20億ヘクタールの土地が荒廃しており、更に毎年1,200万ヘクタールが砂漠化、土地の劣化や干ばつで荒廃しています。「私たちの地球は病んでおり、土地の劣化は約32億人に影響を与え、世界の土地の70%は人間の活動によって変容した。私は、国際的な行動と連帯による自然に関する新しい取り組みを呼びかける。私たちは、気候変動に向けた行動と将来の世代の利益のために、土地修復とネーチャーベースドソリューションをスケーリングアップしていくことができる。」と、António Guterres国連事務総長は述べています。1994年6月17日に「沙漠化に対処するための国連条約」が採択され、以来この日を「世界砂漠化・干ばつ対処の日」としています。それに関連するオンラインイベントが6月14日に開催され、砂漠化、土壌劣化、干ばつについてのハイレベルの対話が行われます。また、国連砂漠化防止条約のCOP15開催が来年夏ごろに延期して開催されます。

国際農研でも、前中長期計画期間中(2016年~2020年)、サブサハラアフリカの中でも最も土地劣化の危険度が高いブルキナファソ中央台地とエチオピア高原地帯において、土壌・水・植生等の資源の適切な管理と小流域を単位とした持続的集約化に資する流域管理モデルの提案に向け、研究調査を実施してきました。その一つの研究成果が、この度「沙漠研究」誌に掲載されることが決まりました。研究の舞台となったエチオピア北部の高原地帯では、土壌侵食防止のための集水域管理として、州政府による森林の囲い込み政策が実施されています。この政策は、植生保護の観点からは大変効果的ですが、家畜を抱える地域の農民は自然植生からの燃料採集と家畜放牧が制限されるため、農村住民の生活に制約が生じていることがわかっています。住民の生活と土壌保全を持続的に両立させるための対策が必要です。JIRCASではアデイ・ザボイ集水域を対象に土壌侵食リスクマップを作成し、集水域内の土壌侵食の71%が僅か10%の場所からの侵食であり、特に傾斜角が6度を超えると土壌侵食リスクが上がることをモデルにより明らかとしました。傾斜角13度を超えると石組み等の保全が実施されにくい現状があるため、よりリスクの高い場所で集中的な囲い込みを実施する必要があります。一方で傾斜角6度以下の比較的緩い傾斜地において段階的に森林の囲い込みを季節的に開放することで、住民のニーズと植生保護を両立していくことが可能となります。

 

参考文献

・    UNCCD High-Level Dialogue on Desertification, Land Degradation and Drought: https://www.unccd.int/high-level-dialogue-desertification-land-degradat…


・    (6月末にリンク開設の予定) Ogawa et al.(2021) https://doi.org/10.14976/jals.31.1_1

 

(文責:環境プログラム 林 慶一)

関連するページ