平成31年度計画

第1 研究開発の成果の最大化その他の業務の質の向上に関する事項

1 政策の方向に即した研究の推進とPDCAサイクルの強化

(1)政策の方向に即した研究の戦略的推進

  • ア 開発途上地域の農林水産業の技術の向上や国際情勢の観点に加え、我が国の政策への貢献、我が国の農林水産研究の高度化や技術の向上への波及効果等の観点や国際農林水産業研究戦略(2016年7月13日農林水産技術会議決定)を踏まえ、研究開発を戦略的に推進する。特に、政策の方向に即した研究推進に資する外部資金獲得に向けた支援を強化する。
  • イ JIRCASが行う研究開発により得られた技術シーズや知見等について、民間企業、研究機関、大学、生産者、その他公的機関の関係者に広く情報提供し、意見交換を行う。また、各種の展示会等に参加及び出展し、研究成果の普及を推進する。
  • ウ 各研究課題について具体的な達成目標を記載した工程表を作成し、これに基づいて研究課題の進捗管理を行う。平成30年度に試行的に導入した研究職員の年間研究・業務計画書を活用し、工程表に基づく研究課題の進捗管理と研究領域における研究指導等との連携を図る。
  • エ 外部の専門家・有識者による外部評価会議を組織し、中長期計画の達成状況に基づく研究課題評価を実施する。
  • オ 評価結果や社会情勢の変化、平成30年度に実施した中間点検結果の中長期目標達成への効果等を踏まえ、研究課題の変更、強化、中止等、必要に応じた見直しを行う。

(2)法人一体の評価と資源配分

  • ア 農林水産省が設定する評価軸及び指標等に基づき、業務の運営状況並びに研究の進捗状況について自ら評価・点検するため、中長期計画評価会議を設置する。中長期計画評価会議における評価・点検結果を踏まえ、適切に計画を見直す。
  • イ 中長期計画評価会議及び主務大臣による評価結果を踏まえ、予算・人員等の研究資源を的確に配分する。また、理事長の裁量による研究職員への効果的なインセンティブの付与や研究環境の充実を図る。
  • ウ 委託プロジェクト研究費、競争的研究資金等の外部資金の獲得に積極的に取り組む。
  • エ 主務大臣による評価結果等については適時・適切に業務運営に反映する。

2 産学官連携、協力の促進・強化

  • ア 国際機関、国内外の研究機関、普及機関、大学、民間企業等との連携・調整機能を強化し、情報及び人的交流を積極的に推進する。特に、「『知』の集積と活用の場」等を活用し、産学官連携を強化する。
  • イ グローバル・フードバリューチェーン戦略や科学技術外交の推進等、重要な政府方針等に貢献するため、国内外の研究ネットワークとの連携を強化する。また、グローバル・フードバリューチェーン戦略の今後の取組方針に関する議論に参加する。
  • ウ 研究交流及び人事交流を通じて農林水産関係研究開発法人との協力関係の強化に努める。
  • エ 熱帯・島嶼研究拠点の地理的特性を活かし、農研機構が実施する農業生物資源ジーンバンク事業に係るサトウキビ、パイナップルや熱帯果樹等遺伝資源の維持・保存、育種事業に係るサトウキビの交配やイネの世代促進、その他国内の民間・大学等の研究機関が実施する我が国の農林水産業の発展に資する研究業務に協力する。

3 知的財産マネジメントの戦略的推進

(1)知的財産マネジメントに関する基本方針の策定

平成28年度に見直した知的財産マネジメントに関する基本方針を運用し、研究開発成果の社会実装を促進するための知財管理を着実に進める。

(2)知的財産マネジメントによる研究開発成果の社会実装の促進

  • ア 平成30年度に設置した法務・知財チームが中心となり、研究開発の企画・立案段階から終了後の一連の過程において知的財産マネジメントに取り組む。知的財産マネジメントを戦略的・効率的に推進するため、知的財産マネジメント担当職員が外部セミナー等へ参加し、随時情報を取りまとめ所内職員への周知を行う。
  • イ 研究開発成果を地球公共財(GlobalPublicGoods)として開発途上地域で活用する観点を含め、成果の権利化・秘匿化・公知化等の取扱いや実施許諾等に係る方針を検討し、研究成果の社会実装の迅速化や知的財産管理の円滑化を図る。
  • ウ 知的財産マネジメントに関する基本方針に基づき、戦略的な知的財産管理のために必要な取組を実施する。平成30年度に開始した知的財産セミナーの内容を充実させ、職員の知財リテラシーの一層の向上を図る。 

4 研究開発成果の社会実装の強化

(1)研究開発成果の公表

研究開発成果は、研究成果情報、学術雑誌等への論文掲載、学会での発表等により積極的に公表する。その際には、公表前に権利化の可能性、秘匿化の必要性等を十分検討する。

(2)技術の普及に向けた活動の推進

  • ア 研究成果のデータベース化・マニュアル化を図り、生産者・企業・普及組織等が利用しやすいように工夫しながらウェブサイト等で公開する。各種の展示会や交流イベントへ積極的に参加するとともに、一般公開や市民公開講座を通じて研究成果の普及に向けた広報活動に取り組む。
  • イ 成果の利活用が見込まれる国や地域において、現地ステークホルダーと成果の普及や社会実装に向けた意見交換を行い、情報発信に取り組む。
  • ウ 研究開発の成果の実用化及びこれによるイノベーションの創出を図るため、必要に応じ、JIRCASの研究開発の成果を事業活動において活用し、又は活用しようとする者に対し、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成20年法律第63号)に基づく出資並びに人的及び技術的援助を行う。その際には、「研究開発法人による出資等に係るガイドライン」(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局決定)を踏まえ、関連規程を整備した上で適切に実施する。

(3)広報活動の推進

  • ア 研究の進捗を反映した広報資料を作成する。我が国及び関係国において、JIRCASの業務への理解を増進し、知名度を向上させるため、平成28年度に策定された広報戦略に基づいてターゲットを明確にした広報活動に取り組む。
  • イ プレスリリース・取材対応等、メディアを有効に活用するとともに、刊行物の発刊、メールマガジンの発信、外部イベントへの出展など、多様な媒体・機会を活用して情報発信を行う。
  • ウ 現地ワークショップや説明会を通じて、研究分野やターゲットに応じた効果的な情報発信を行う。

(4)国民との双方向コミュニケーション

  • ア シンポジウムやセミナーの開催、見学や技術相談への対応等を通じて、効果的な双方向コミュニケーションを進める。
  • イ JIRCASの活動に対する国民の声を把握するとともに、理解を増進するため、一般公開や市民公開講座に加え、外部イベントへの出展、サイエンスカフェ、出前授業等のアウトリーチ活動に積極的に取り組む。
  • ウ 共同研究の相手機関や研究対象地の所在国政府等と連携し、研究実施地域の住民の理解を得るための取組を推進する。

(5)研究開発成果の中長期的な波及効果の把握と公表

  • ア 独立行政法人化以降に選定した主要普及成果の中から2件について、追跡調査を実施する。調査結果は速やかにウェブサイト等で公表する。
  • イ JIRCASの研究開発成果や活動が、我が国及び開発途上地域の農業や社会の発展に果たしてきた貢献について広く国民に認知されるよう、ウェブサイト等を活用して情報発信する。

5 行政部局等との連携強化

  • ア 行政部局のニーズに対応するため、関係行政部局との人事交流や諸会議等を通じて情報交換に努める。また、研究成果等を検討する会議に関係行政部局の参加を求める。
  • イ 行政部局の要請に対応するため、緊急時対応を含む連携や各種連絡会議、シンポジウムの開催、専門家派遣等に協力する。日本で開催されるG20首席農業研究者会議(MACS)に協力する。
  • ウ 行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、JIRCASの高い専門知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な分析及び鑑定を実施する。
  • エ 他の国立研究開発法人、大学、国公立機関、民間、海外機関等から講習生、研修生を積極的に受け入れ、人材育成や技術水準の向上に貢献する。
  • オ 国際農林水産業研究を包括的に行う機関として、国際機関や学会等の委員会・会議等に職員を派遣するなど、要請に応じて活動に協力する。

6 研究業務の推進(試験及び研究並びに調査)

(1)研究の重点化及び推進方向

  • ア 「別添」に示した研究を重点的に推進する。
  • イ 国内外の関係機関との情報交換や相互連携体制の整備に努め、開発途上地域、先進諸国、CGIAR等の国際研究機関、NGO等民間団体、国際的な研究ネットワーク等と連携して効果的な国際共同研究を実施する。
  • ウ JIRCAS及び農林水産関係国立研究開発法人が開催する研究成果検討会議等に相互に出席し、各法人の研究動向について相互理解を深めると共に、連携を強化する。さらに、研究を効率的に推進するため、共同研究や委託研究、依頼出張等、他法人との多様な研究交流を行う。

(2)国際的な農林水産業に関する動向把握のための情報の収集、分析及び提供

  • ア 食料需給や栄養等に関する分析と将来予測を行うため、食料・栄養需給に影響する技術的・社会経済的要因、栄養素の過不足について分析する。さらに、対象品目の拡充等の世界食料モデルの改良を継続し、栄養分析が可能なモデルとして完成させる。また、技術開発の食料需給等への影響を分析する。
  • イ 重点地域及び戦略的に重要な機関に対して職員を派遣するとともに、開発途上地域、先進諸国、国際研究機関や研究ネットワーク、NGO等の民間機関、国内の大学、研究機関、民間企業及び行政等と連携して、情報や資料を継続的に収集し、これを組織的、体系的に整理し、国内外の研究者や行政機関、企業等に対して情報の質と情報の受け手を意識した情報提供を広く実施する。
  • ウ 開発途上地域の農林水産業研究を総合的に実施する我が国唯一の組織として、収集した国際的な研究情報を発信・交換する場としてJ-FARDを戦略的に運営する。
  • エ 理事長インセンティブ経費等を活用し、目的基礎研究を実施する。的確な研究資源(エフォート、予算)を投入し、目的基礎研究を着実に推進する。
  • オ 目的基礎研究の推進にあたっては、「農林水産研究基本計画」に示された基本的な方向を踏まえ、国内外の情勢やニーズ、JIRCASが保有する研究資産等に基づき、将来のイノベーションにつながる先駆的な研究課題を実施する。さらに、進捗状況を評価し、研究課題や手法の修正等、適切かつ柔軟な進行管理を行う。

第2 業務運営の効率化に関する事項

1 経費の削減

(1)一般管理費等の削減

運営費交付金を充当して行う事業については、業務の見直し及び効率化を進め、一般管理費(人件費を除く。)については毎年度平均で少なくとも対前年度比3%の抑制、業務経費については毎年度平均で少なくとも対前年度比1%の抑制を行うことを目標に、削減する。

(2)調達の合理化

  • ア 定量的な目標や具体的な指標を含む「調達等合理化計画」を6月末までに策定し、着実に実行するとともに、実績評価の際に自己評価を行う。
  • イ 特殊で契約相手が特定される場合など、関係規程に則った随意契約の適用、単価契約の拡大等により、公正性を確保しつつ、研究開発物品の調達の迅速化を図る。
  • ウ 農研機構との間で共同調達、落札価格情報の共有などの連携を進め、効率化を図る。

2 組織・業務の見直し・効率化

(1)組織・業務の再編

  • ア 中長期目標の達成やPDCAサイクルの強化に向けて、組織・研究体制や業務を柔軟に見直す。
  • イ グループウェアにおけるワークフロー(電子決裁)の利用促進を図るとともに、テレビ会議システムを活用することにより拠点も含めた意思決定の迅速化、業務の効率化を図る。勤務時間管理システムを導入し、職員等の勤務時間の適正な管理を実施し、効率化を図る。
  • ウ 上記の取組により、適切な人員配置と業務の最適化を図る。

(2)研究施設・設備の集約(施設及び設備に関する計画)

研究施設・設備整備については、老朽化の現状や研究の重点化方向を踏まえ、整備しなければ研究推進が困難なもの、老朽化が著しく改修しなければ研究推進に支障をきたすもの、法令等により改修が義務付けられているものなど、業務遂行に真に必要なものを計画的に整備するとともに、利用を促進し、利用率の向上を図る。
共同研究棟耐震工事の着工及び進行に際し、施工を行う農研機構から着工前及び工事期間中の十分な情報入手に努め、JIRCASの研究業務継続にとって必要な要望を行う。また、JIRCASとして対応すべきリスク軽減対策等については、研究業務を円滑に継続するために必要な対策を実施する。

第3 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

1.予算

平成31年度予算(単位:百万円)

区分 企画・連携推進業務 資源・環境管理研究業務 農産物安定生産研究業務 高付加価値化研究業務 情報収集分析業務 法人共通 合計
収入                
  前年度よりの繰越金 2 3 4 3 1 14 3 17
  運営費交付金 425 659 787 657 262 2,791 702 3,493
  施設整備費補助金 73 0 0 0 0 73 0 73
  受託収入 26 83 144 38 4 295 0 295
  寄附金収入 0 0 0 0 0 0 0 0
  諸収入 0 1 1 1 0 3 0 3
  計 527 746 936 699 268 3,176 705 3,881
支出                
  業務経費 225 270 325 320 116 1,256 0 1,256
  施設整備費 73 0 0 0 0 73 0 73
  受託経費 26 83 144 38 4 295 0 295
  一般管理費 0 0 0 0 0 0 107 107
  人件費 205 394 468 341 148 1,556 599 2,155
  計 530 746 937 699 268 3,180 705 3,885

[注記]

  1. 「前年度よりの繰越金」については、平成31年度に繰越となった人件費を計上した。
  2. 運営費交付金は、平成31年度政府予算による運営費交付金予算を計上した。
  3. 「受託収入」については、農林水産省及び他省庁分の委託プロジェクト費等を計上した。
  4. 百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

2.収支計画

平成31年度収支計画 (単位:百万円)

区分 企画・連携推進業務 資源・環境管理研究業務 農産物安定生産研究業務 高付加価値化研究業務 情報収集分析業務 法人共通 合計
費用の部 484 780 972 722 279 3,238 2,296 5,533
   経常費用 468 747 933 694 267 3,109 711 3,820
   人件費 191 366 436 317 138 1,448 464 1,912
   賞与引当金繰入 14 27 32 24 10 108 26 134
  退職給付費用 0 0 0 0 0 0 109 109
  業務経費 216 250 298 298 107 1,170 0 1,170
    受託経費 26 82 141 36 4 289 0 289
    一般管理費 0 0 0 0 0 0 97 97
  減価償却費 20 22 26 19 8 94 16 110
    財務費用 0 0 0 0 0 0 0 0
    臨時損失 17 33 39 28 12 129 1,584 1,713
収益の部 485 781 974 718 280 3,238 2,296 5,533
  運営費交付金収益 404 616 731 615 245 2,610 561 3,171
    賞与引当金見返に係る収益 14 27 32 24 10 108 26 134
  退職給付引当金に係る収益 0 0 0 0 0 0 109 109
諸収入 0 1 1 1 0 3 0 3
  受託収入 26 83 144 38 4 295 0 295
  寄附金収益 3 0 1 0 0 4 0 4
    資産見返負債戻入 20 22 26 13 8 88 16 104
    臨時利益 17 33 39 28 12 129 1,584 1,713
純利益 0 1 2 △4 0 0 0 0
前中長期目標期間繰越積立金取崩額 0 0 0 2 0 2 0 2
総利益 0 1 2 △2 0 2 0 2

[注記]

  1. 収支計画は、平成31年度政府予算ベースで作成した。
  2. 独立行政法人会計基準の改訂により、平成31年度から「賞与」及び「退職」については引当金を導入する。
  3. 「臨時損失」及び「臨時利益」には、独立行政法人会計基準の改訂に伴い、前年度末時点の賞与引当金及び退職給付引当金を計上する際に発生する費用及び収益を計上した。
  4. 「受託収入」は、農林水産省及び他府省の委託プロジェクト費等を計上した。
  5. 百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

3.資金計画

平成31年度資金計画 (単位:百万円)

区   分 企画・連携推進業務 資源・環境管理研究業務 農産物安定生産研究業務 高付加価値化研究業務 情報収集分析業務 法人共通 合計
資金支出 572 746 937 699 268 3,222 705 3,927
業務活動による支出 448 726 907 675 259 3,015 696 3,711
   投資活動による支出 82 21 30 24 9 166 9 175
財務活動による支出 0 0 0 0 0 0 0 0
   翌年度への繰越金 42 0 0 0 0 42 0 42
                 
資金収入 572 746 937 699 268 3,222 705 3,927
   業務活動による収入 452 743 932 696 267 3,089 702 3,791
    運営費交付金による収入 425 659 787 657 262 2,791 702 3,493
     受託収入 26 83 144 38 4 295 0 295
   寄附金収入 0 0 0 0 0 0 0 0
     その他の収入 0 1 1 1 0 3 0 3
   投資活動による収入 73 0 0 0 0 73 0 73
     施設整備費補助金による収入 73 0 0 0 0 73 0 73
    その他の収入 0 0 0 0 0 0 0 0
   財務活動による収入 0 0 0 0 0 0 0 0
     その他の収入 0 0 0 0 0 0 0 0
   前年度よりの繰越金 47 3 5 3 1 60 3 63

[注記]

  1. 資金計画は、平成31年度政府予算を基に予定キャッシュフローとして作成した。
  2. 「受託収入」は、農林水産省及び他府省の委託プロジェクト費等を計上した。
  3. 「業務活動による収入」の「その他の収入」は、諸収入額を記載した。
  4. 百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

4.自己収入の確保

外部研究資金の獲得、受益者負担の適正化、特許実施料の拡大等により、自己収入の確保に努める。

5.保有資産の処分

   現有の施設・設備について自主点検を行い、利用率の低いものについては、その改善の可能性等の検討  を行ったうえ、保有の必要性が認められないものについては適切に処分する。

第4 短期借入金の限度額

短期借入金は、4億円を限度とする。

第5 不要財産又は不要財産となることが見込まれる財産がある場合には、当該財産の処分に関する計画

なし 

第6 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画

なし

第7 剰余金の使途

なし

第8その他業務運営に関する重要事項

1 ガバナンスの強化

(1)内部統制システムの構築

  • ア 理事長のリーダーシップの下、役職員の担当業務、権限及び責任を明確にする。また、役員会及び運営会議等において、迅速かつ的確な意思決定を行うとともに、役職員間の円滑な意思伝達を行う。
  • イ 指揮命令系統を明確化し、JIRCASの方針や決定事項について速やかに所内に周知・実施する。
  • ウ 研究活動における不適正行為を防止するため、海外での研究活動に起因する事象を含め、JIRCASの業務遂行の障害となる要因(リスク)を識別、分析、評価し、適切な対応を実施する。これまでに整備したリスク管理体制のもと、リスクの発生防止及び発生したリスクへ適切に対応する。

(2)コンプライアンスの推進

  • ア JIRCASに対する国民の信頼を確保する観点から、コンプライアンス一斉研修やコンプライアンスルールブックを活用し、法令遵守や倫理保持に対する役職員の意識向上を図る。
  • イ 政府が示したガイドライン等を踏まえ、研究活動における不適正行為を防止するために必要な体制を整備するとともに、コンプライアンス一斉研修やeラーニング等による職員教育を行う。

(3)情報公開の推進等

公正な法人運営を実現し、法人に対する国民の信頼を確保する観点から、法定情報の速やかな公開に努める。さらに、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第141号)等に基づき、情報公開を推進するとともに、情報開示請求に対しては適切に対応する。

(4)情報セキュリティ対策の強化

  • ア 政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群(平成30年度版)を踏まえ、情報セキュリティポリシーを見直すとともに、これに基づき情報セキュリティ対策を講じる。また、サイバーセキュリティ基本法に基づき、3年に1度(平成29年度~)監査対象となる内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)主導の独立行政法人を対象としたセキュリティマネジメント監査を実施し、セキュリティ対策の効果的な強化を推進する。さらに、全役職員の情報セキュリティに関する意識の向上を図るため、所内セキュリティセミナーの内容の充実を図る。
  • イ 情報セキュリティ監査を定期的に実施し、改善等の指摘があった場合には速やかに改善策を講じる。
  • ウ 保有する個人情報や技術情報を適切に管理する。

(5)環境対策・安全管理の推進

  • ア 薬品等の管理に関する安全教育、職場巡視及び定期的な点検を行い、化学物質等を適正に管理する。化学薬品管理システムを更新する。
  • イ 生物材料等の入手と管理に関する教育訓練を行うとともに、法規制のある生物材料について適正に管理する。
  • ウ 法人内で使用するエネルギーの削減を図る。また、廃棄物等の適正な取扱を職員に確実に周知し、リサイクルの促進に取り組む。
  • エ 職員の安全衛生意識の向上に向けた教育・訓練、職場巡視などモニタリング活動を実施し、作業環境管理の徹底を図る。また、ヒヤリハット事例等を活用した事故等の未然防止活動に取り組む。
  • オ 「非常時における業務継続計画に基づく業務継続力向上のためのマニュアル」を活用し、必要な対策を施すとともに、職員の防災意識の向上を図る。また、外部委託による安否確認システムを導入し、JIRCAS役職員等の安全確保等に関して万全な体制を整える。

2 研究を支える人材の確保・育成

(1)人材育成プログラムの実施

  • ア 改訂したJIRCASの人材育成プログラムに基づき、人材育成の取組を実施する。
  • イ 進路希望ヒアリング、キャリアデザインシート作成等を行い、職員の能力向上を積極的に支援する。
  • ウ 行政部局等との人的交流、知識の習得や技能の向上を図るための各種研修の開催、外部機関等が行う研修の活用等により、職員の資質向上を図る。

(2)人事に関する計画

  • ア 業務の着実な推進のため、必要に応じて職員を重点的に配置するなど、柔軟で適切な人事配置を行う。
  • イ クロスアポイントメント制度、テニュア・トラックを付した任期付制度や再雇用制度、公募による採用等、多様な制度を活用し、JIRCASの業務推進に必要な人材の確保に努める。
  • ウ 優秀な女性・若手職員を積極的に採用するとともに、女性の幹部登用、ワークライフバランス推進等の男女共同参画の取組を強化する。

(3)人事評価制度の改善

  • ア 関係規程や業績評価マニュアル等を整備し、公正かつ透明性の高い業績及び能力評価システムを運用するとともに、人事評価結果を適切に処遇等に反映する。
  • イ 研究職員については、研究業績、研究成果の社会実装、運営業務への貢献等、多角的な観点に基づく業績評価を実施する。また、制度の改善方向を引き続き検討する。

(4)報酬・給与制度の改善

  • ア 役職員の報酬・給与については、国家公務員や民間企業の給与水準等を勘案した支給水準とする。
  • イ クロスアポイントメント制度など多様な雇用体系に柔軟に対応できる報酬・給与制度の導入に取り組む。
  • ウ 透明性の向上や説明責任の一層の確保のため、給与水準に係る検証結果や取組状況を公表する。

3 主務省令で定める業務運営に関する事項

前中長期目標期間繰越積立金は、第3期中期目標期間中に自己収入財源で取得し、第4期中長期目標期間へ繰り越した有形固定資産の減価償却に要する費用等に充当する。
また、施設及び設備に関する計画については、中長期計画第2の2(2)、職員の人事に関する計画については、同第8の2(2)のとおり行う。

[別添] 試験及び研究並びに調査に係る研究の推進方向

1 開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発

気候変動や環境劣化等、深刻化する地球規模的課題に対処するため、アジア及びアフリカ地域を中心とする開発途上地域において、持続的な資源・環境管理技術の開発を進める。具体的には以下の研究を重点的に実施する。

メコンデルタ地域からの温室効果ガス(以下「GHG」)排出削減を目指し、地域の農産廃液を肥料として水田利用する際の施用量等農家圃場で検証する。またこれまで得られたGHG削減の諸技術を組み合わせて地域に適応する際の影響について、農家経済、環境への負荷等を踏まえた評価に着手する。畜産分野では、飼料添加物等によるGHG排出量の削減が可能な飼養技術を実証する。加えて、極端現象に対する農作物天候インデックス保険を試作し表明選好分析により現地実証する。さらに、干ばつ等の水リスクに対する灌漑システムの利用向上手法パッケージのプロトタイプを作成する。

ブルキナファソにおいて、農家圃場での最適な肥培管理法の検証、流域スケールでの資源利用評価モデルの実証を行う。エチオピアにおいては、保全農業の資源の持続的活用に係る有効性を評価する。また社会経済的側面から共有地管理制度のあり方を評価し、結果を主要ステークホルダーに提示する。

パラオの対象流域における水、土砂、栄養塩の流出のシナリオ分析に着手するともに地域資源を活用した環境保全型栽培技術を提示する。フィリピンでは作物土壌シミュレーションモデルを使い、窒素の肥培管理シナリオを提示する。インドでは浅層暗渠による除塩効果のデータ収集と解析を行う。インドとベトナムで耐塩性遺伝子を導入したダイズ後代系統の現地適応性試験と現地選抜を行う。

施肥窒素の削減・利用率向上や農地由来の一酸化二窒素排出等の環境問題解決にBNI能を活用するため、コムギやトウモロコシの遺伝資源のBNI活性評価するとともに、ブラキアリア牧草やソルガムを栽培した圃場における土壌中の窒素動態への影響等を評価する。

2 熱帯等の不良環境における農産物の安定生産技術の開発

食料増産の推進とアフリカをはじめとする世界の栄養改善に向けて、低肥沃度や乾燥等の不良環境のため農業生産の潜在能力が十分に発揮できていない熱帯等の開発途上地域を対象として、農産物の安定生産技術の開発を進める。具体的には以下の研究を重点的に実施する。

アフリカにおける食料と栄養の安全保障促進への貢献をめざし、イネ増産については、生産性等に優れた育種素材や栽培技術の現地評価と、開発された技術の普及に必要な条件の検証をさらに進める。地域作物については、ヤム・ササゲの有用形質評価手法の実証・利用を進めるとともに、パートナー機関への提供を開始する。耕畜連携については、サイレージを利用した酪農技術の検証を進めるとともに、飼料と食料の多目的作物について収量性・耐乾性、栽培手法の比較評価を行う。

不良環境に適応可能な作物開発技術の開発については、根長および窒素利用の効率化に関わる遺伝子を導入するための戻し交配を継続するとともに、遺伝子固定系統の中から優良系統を選抜する。IR64の遺伝的背景を持つリン酸利用効率関連遺伝子導入系統の適応試験を開始する。耐塩性遺伝子を途上国のダイズ普及品種へ導入するための戻し交配・選抜を継続する。キヌアにおいては、有用分子素材や変異体を同定する。

サトウキビとエリアンサスの属間雑種BC1から株出し性が優れる育種素材を選定する。SSRマーカーによる解析等によりエリアンサスの高密度連鎖地図を作製する。さらに、多用途型サトウキビの機械収穫特性を明らかにする。

ベトナム国内のイネウンカ類に対する抵抗性遺伝資源の保有状況を調査する。サバクトビバッタの交尾および産卵特性を明らかにする。サトウキビ白葉病に関する健全種茎生産技術を現地実証試験で評価する。イネいもち病抵抗性遺伝子集積個体の選抜と抵抗性固定系統を確保する。ダイズさび病抵抗性遺伝子の集積品種育成の戻し交配を継続する。ダイズ紫斑病に対する抵抗性育種素材を探索する。

3 開発途上地域の地域資源等の活用と高付加価値化技術の開発

アジア地域における農山漁村開発を支援し、開発途上地域の農民の所得向上と、我が国が進めるグローバル・フードバリューチェーン戦略に貢献するため、多様な地域資源の活用と、新たな高付加価値化技術を開発する。具体的には以下の研究を重点的に実施する。 

アジア地域伝統食品の高品質化・高付加価値化のため、地域特性を考慮した品質評価法・製造加工技術の適用性の検証・改良を進め、ネットワーク参画機関等との協力により社会実装に向けた取り組みを行う。また、地域食料の生産から消費までのバリューチェーン形成過程を、市場調査や各種指標をもとに解明する。

低コストで高効率分解を達成できる生物学的同時酵素生産糖化法(BSES法)の高度化を図るため、微生物集団による連続的な糖化プロセスを構築するとともに、微生物糖化技術と藻類による液体燃料生産技術の開発に着手する。未利用バイオマスからのポリヒドロキシ酪酸(PHB)生産技術のプロセス設計を開始するとともに、作物に対するPHBの施用効果を明らかにする。

インドシナ中山間農村の生産性向上と生活・栄養の改善を図るため、低地ではICT技術を用いて水稲生産性と品種特性を把握し、栽培適地図のプロトタイプを作成するとともに、水田やため池を利用した農民参加型養魚技術を確立する。丘陵地では、農民参加型による陸稲推奨品種の選抜と高付加価値化に係る成分評価を行うとともに、高付加価値NTFPポテンシャルマップを作成する。さらに山間部農村での不足栄養素を補うための指針及び改善技術を提示する。

東南アジア地域森林資源の高付加価値化技術を開発するため、チーク人工林の成長や樹形に影響を及ぼす要因を明らかにするとともに、林況の土壌浸食への影響を評価する。さらに、有用樹種の幹材積を推計する手法を構築する。フタバガキ科林業樹種について、環境に応じて発現変動する遺伝子群の検出と展葉を誘導する環境条件の解明を行うとともに、種内変異と成長特性の連関を明らかにする。

東南アジア沿岸域において生態系に調和した水産資源利用技術の開発及び普及に資するため、二枚貝類の養殖適地選定及び環境資源の適正利用、地域在来資源の活用や複合的養殖の普及拡大等を目指した技術開発ならびに指針のとりまとめを進める。

平成31年度計画
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