理事長挨拶

 

激動と充実の5年間を振り返る

理事長 小山修

小山理事長

新型コロナウイルス感染症の収束が見込めない2021年4月に開始された第5期中長期計画は、荒波の中の船出となりました。準備段階から海外渡航が制限される中、長期の信頼関係に基づく外国共同研究相手側機関からの献身的な協力も得て、研究活動を開始・継続しました。その後も、2022年のウクライナ侵攻をはじめとする地政学的なリスクが世界の食料システムの不安を増幅させ、ミャンマーなどの主要な研究対象国での政情不安も継続して、現場での問題解決型共同研究を主体とする活動は大きな制約を受けました。

一方、気候変動などの地球規模の課題が顕在化する中、国連ではSDGs達成のための多くの活動が展開され、2021年9月の国連食料システムサミットでは、食料の生産から消費に至る活動を持続可能なシステムへ転換していくことが確認されました。我が国も、2050年までにカーボンニュートラルを目指すこととなり、2021年5月には、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するための中長期的な政策方針「みどりの食料システム戦略」が策定されました。さらに、2024年には25年ぶりに食料・農業・農村基本法が改正され、「食料安全保障の確保」や「環境と調和のとれた食料システムの確立」などの新たな政策が開始されました。

第5期において「我が国を代表する国際農林水産業分野における研究機関として(中略)、我が国を含む世界の農林水産業技術の向上を図り、持続可能な農林水産業の発展に寄与する」という高邁な使命を与えられた国際農研は、「企画」、「環境」、「食料」、「情報」という4つの業務セグメントを配置し、簡素で効果的な業務運営が行える体制を整えました。多分野の専門別領域に所属する研究職員が複数の学際的な研究プロジェクトに参画する特色ある研究推進方式「マトリックス制」の改善も進めました。このほか、情報広報室による広報・連携業務の法人一体としての推進や、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進などのガバナンスの強化も進めました。

長年の努力が報われ、BNI(生物的硝化抑制)強化コムギは、世界を驚かす研究成果となり、日本を含む各国に展開されました。アフリカのリン肥料施肥技術やアジアでの農産廃棄物微生物糖化技術も現場での技術普及が進展しました。水管理による水田メタン削減手法は、二国間炭素クレジットの方法論に採用され、国際的なルールメイキングへの参画も実現しました。みどりの食料システム戦略に貢献する「グリーンアジア」プロジェクトでは、対象とするアジアモンスーン地域に向けて、我が国の多くの機関が開発に関与した多くの普及可能な技術をカタログにとりまとめ、生産性と持続性を両立させる有望技術の現地実証を行いました。これらの活動は、我が国で開催されたG7農業大臣会合など多くの国際会議や国際機関で紹介され、世界の食料安全保障や持続可能な農業・食料システムの確立のための国際的な議論に貢献しました。

世界の農林水産業や国際共同研究を巡る状況は、日々変化を続けています。特に、私たちの法人が対象としている熱帯・亜熱帯地域、開発途上地域では、経済のグローバル化、都市化、経済の急成長などによって、新しい技術へのニーズも大きく変化しています。激動と充実の5年間だった「第5期」における国際農研の活動には目を見張るものがありましたが、高邁な使命に比較すれば未だ道半ばです。国際農研は、2030年に創立60年を迎えますが、科学技術による食料・環境問題の解決の新たなステージに向けて、「地球と食料の未来のために」を合い言葉に、現地パートナーとともに現場中心の国際共同研究に地道に取り組み、人類共通の新たな価値を創造していきます。

第5期の組織・業務推進体制

理事長略歴

日本語
略歴(小山修).pdf408.57 KB
英語
CV(Osamu KOYAMA).pdf158.79 KB