平成30年度計画

第1 研究開発の成果の最大化その他の業務の質の向上に関する事項

1 政策の方向に即した研究の推進とPDCAサイクルの強化

(1)政策の方向に即した研究の戦略的推進

  • ア 開発途上地域の農林水産業の技術の向上や国際情勢の観点に加え、我が国の政策への貢献、我が国の農林水産研究の高度化や技術の向上への波及効果等の観点や国際農林水産業研究戦略(2016年7月13日農林水産技術会議決定)を踏まえ、研究開発を戦略的に推進する。中長期目標期間の中間年であることから、研究プログラムに関する中間点検を行う。
  • イ JIRCASが行う研究開発により得られた技術シーズや知見等について、民間企業、研究機関、大学、生産者、その他公的機関の関係者に広く情報提供する。
  • ウ 各研究課題について具体的な達成目標を記載した工程表を作成し、これに基づいて研究課題の進捗管理を行う。
  • エ 外部の専門家・有識者による外部評価会議を組織し、中長期計画の達成状況に基づく研究課題評価を実施する。
  • オ 評価結果や社会情勢の変化等を踏まえ、研究課題の変更、強化、中止等、必要に応じた見直しを行う。

(2)法人一体の評価と資源配分

  • ア 農林水産省が設定する評価軸及び指標等に基づき、業務の運営状況並びに研究の進捗状況について自ら評価・点検するため、中長期計画評価会議を設置する。中長期計画評価会議における評価・点検結果を踏まえ、適切に計画を見直す。
  • イ 中長期計画評価会議及び主務大臣による評価結果を踏まえ、予算・人員等の研究資源を的確に配分する。また、理事長の裁量による研究職員への効果的なインセンティブの付与や研究環境の充実を図る。
  • ウ 委託プロジェクト研究費、競争的研究資金等の外部資金の獲得に積極的に取り組む。
  • エ 主務大臣による評価結果等については適時・適切に業務運営に反映する。

2 産学官連携、協力の促進・強化

  • ア 国際機関、国内外の研究機関、普及機関、大学、民間企業等との連携・調整機能を強化し、情報及び人的交流を積極的に推進する。
  • イ グローバル・フードバリューチェーン戦略や科学技術外交の推進等、重要な政府方針等に貢献するため、国内外の研究ネットワークとの連携を強化する。
  • ウ 研究交流及び人事交流を通じて農林水産関係研究開発法人との協力関係の強化に努める。
  • エ 熱帯・島嶼研究拠点の立地特性を活かし、農研機構が実施する農業生物資源ジーンバンク事業や育種事業、その他国内の民間・大学等の研究機関が推進する我が国の農林水産業の発展に資する研究業務に協力する。

3 知的財産マネジメントの戦略的推進

(1)知的財産マネジメントに関する基本方針の策定

平成28年度に見直した知的財産マネジメントに関する基本方針を運用し、研究開発成果の社会実装を促進するための知財管理を着実に進める。

(2)知的財産マネジメントによる研究開発成果の社会実装の促進

  • ア 研究開発の企画・立案段階から終了後の一連の過程において知的財産マネジメントに取り組む仕組みを構築・運用する。知的財産マネジメントを戦略的・効率的に推進するため、知的財産マネジメントの中心的役割を担う知財チームを設置する。
  • イ 研究開発成果を地球公共財(GlobalPublicGoods)として開発途上地域で活用する観点を含め、成果の権利化・秘匿化・公知化等の取扱いや実施許諾等に係る方針を検討し、研究成果の社会実装の迅速化や知的財産管理の円滑化を図る。
  • ウ 知的財産マネジメントに関する基本方針に基づき、戦略的な知的財産管理のために必要な取組を実施する。 

4 研究開発成果の社会実装の強化

(1)研究開発成果の公表

研究開発成果は、研究成果情報、学術雑誌等への論文掲載、学会での発表等により積極的に公表する。その際には、公表前に権利化の可能性、秘匿化の必要性等を十分検討する。

(2)技術の普及に向けた活動の推進

  • ア 研究成果のデータベース化・マニュアル化を図り、ウェブサイト等で公開する。各種の展示会や交流イベント等に積極的に参加し、研究成果の普及に向けた広報活動に取り組む。
  • イ 成果の利活用が見込まれる国や地域において、関係機関等と連携し、成果の普及に向けた活動を行う。

(3)広報活動の推進

  • ア 第要覧等の見直しを行って最新版を作成するとともに、我が国及び関係国において、JIRCASの業務への理解を増進し、知名度を向上させるため、平成28年度に策定された広報戦略に基づいて戦略的な広報活動に取り組む。
  • イ プレスリリース・取材対応等、メディアを有効に活用するとともに、刊行物の発刊、メールマガジンの発信、外部イベントへの出展など、多様な媒体・機会を活用して情報発信を行う。
  • ウ 現地ワークショップや説明会を通じて、研究分野やターゲットに応じた効果的な情報発信を行う。

(4)国民との双方向コミュニケーション

  • ア シンポジウムやセミナーの開催、見学や技術相談への対応等を通じて、効果的な双方向コミュニケーションを進める。
  • イ JIRCASの活動に対する国民の声を把握するとともに、理解を増進するため、一般公開に加え、外部イベントへの出展、サイエンスカフェ、出前授業等のアウトリーチ活動に積極的に取り組む。
  • ウ 共同研究の相手機関や研究対象地の所在国政府等と連携し、研究実施地域の住民の理解を得るための取組を推進する。

(5)研究開発成果の中長期的な波及効果の把握と公表

  • ア 独立行政法人化以降に選定した主要普及成果の中から2件について、追跡調査を実施する。調査結果は速やかにウェブサイト等で公表する。
  • イ JIRCASの研究開発成果や活動が、我が国及び開発途上地域の農業や社会の発展に果たしてきた貢献について広く国民に認知されるよう、ウェブサイト等を活用して情報発信する。

5 行政部局等との連携強化

  • ア 行政部局のニーズに対応するため、関係行政部局との人事交流や諸会議等を通じて情報交換に努める。また、研究成果等を検討する会議に関係行政部局の参加を求める。
  • イ 行政部局の要請に対応するため、緊急時対応を含む連携や各種連絡会議、シンポジウムの開催、専門家派遣等に協力する。
  • ウ 行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、JIRCASの高い専門知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な分析及び鑑定を実施する。
  • エ 他の国立研究開発法人、大学、国公立機関、民間、海外機関等から講習生、研修生を積極的に受け入れ、人材育成や技術水準の向上に貢献する。
  • オ 国際農林水産業研究を包括的に行う機関として、国際機関や学会等の委員会・会議等に職員を派遣するなど、要請に応じて活動に協力する。

6 研究業務の推進(試験及び研究並びに調査)

(1)研究の重点化及び推進方向

  • ア 「別添」に示した研究を重点的に推進する。
  • イ 国内外の関係機関との情報交換や相互連携体制の整備に努め、開発途上地域、先進諸国、CGIAR等の国際研究機関、NGO等民間団体、国際的な研究ネットワーク等と連携して効果的な国際共同研究を実施する。
  • ウ JIRCAS及び農林水産関係国立研究開発法人が開催する研究成果検討会議等に相互に出席し、各法人の研究動向について相互理解を深めると共に、連携を強化する。さらに、研究を効率的に推進するため、共同研究や委託研究、依頼出張等、他法人との多様な研究交流を行う。

(2)国際的な農林水産業に関する動向把握のための情報の収集、分析及び提供

  • ア 食料需給や栄養等に関する分析と将来予測を行うため、食料・栄養需給に影響する技術的・社会経済的要因、栄養素の過不足について分析する。さらに、畜産物を含む世界食料モデルを完成させる。加えて、所得分布のモデルへの導入を検討する。
  • イ 重点地域及び戦略的に重要な機関に対して職員を派遣するとともに、開発途上地域、先進諸国、国際研究機関や研究ネットワーク、NGO等の民間機関、国内の大学、研究機関、民間企業及び行政等と連携して、情報や資料を継続的に収集し、これを組織的、体系的に整理し、国内外の研究者や行政機関、企業等に対して情報の質と情報の受け手を意識した情報提供を広く実施する。
  • ウ 開発途上地域の農林水産業研究を総合的に実施する我が国唯一の組織として、収集した国際的な研究情報を発信・交換する場としてJ-FARDを戦略的に運営する。
  • エ 理事長インセンティブ経費等を活用し、目的基礎研究を実施する。的確な研究資源(エフォート、予算)を投入し、目的基礎研究を着実に推進する。
  • オ 目的基礎研究の推進にあたっては、「農林水産研究基本計画」に示された基本的な方向を踏まえ、国内外の情勢やニーズ、JIRCASが保有する研究資産等に基づき、将来のイノベーションにつながる先駆的な研究課題を実施する。さらに、進捗状況を評価し、研究課題や手法の修正等、適切かつ柔軟な進行管理を行う。

第2 業務運営の効率化に関する事項

1 経費の削減

(1)一般管理費等の削減

運営費交付金を充当して行う事業については、業務の見直し及び効率化を進め、一般管理費(人件費を除く。)については毎年度平均で少なくとも対前年度比3%の抑制、業務経費については毎年度平均で少なくとも対前年度比1%の抑制を行うことを目標に、削減する。

(2)調達の合理化

  • ア 定量的な目標や具体的な指標を含む「調達等合理化計画」を6月末までに策定し、着実に実行するとともに、実績評価の際に自己評価を行う。
  • イ 特殊で契約相手が特定される場合など、関係規程に則った随意契約の適用、単価契約の拡大等により、公正性を確保しつつ、研究開発物品の調達の迅速化を図る。
  • ウ 農研機構との間で共同調達、落札価格情報の共有などの連携を進め、効率化を図る。

2 組織・業務の見直し・効率化

(1)組織・業務の再編

  • ア 中長期目標の達成やPDCAサイクルの強化に向けて、組織・研究体制や業務を柔軟に見直す。
  • イ グループウェアにおけるワークフロー(電子決裁)の利用促進を図るとともに、テレビ会議システムを活用することにより拠点も含めた意思決定の迅速化、業務の効率化を図る。人事・給与システムの更新を実施し、人事記録、通知書等の作成や昇任・昇格情報に基づく給与計算等業務の効率化を図る。
  • ウ 上記の取組により、適切な人員配置と業務の最適化を図る。

(2)研究施設・設備の集約(施設及び設備に関する計画)

研究施設・設備整備については、老朽化の現状や研究の重点化方向を踏まえ、整備しなければ研究推進が困難なもの、老朽化が著しく改修しなければ研究推進に支障をきたすもの、法令等により改修が義務付けられているものなど、業務遂行に真に必要なものを計画的に整備するとともに、利用を促進し、利用率の向上を図る。
共同研究棟耐震補強工事に際し、施工を行う農研機構から設計段階の十分な情報提供を受けるとともに、耐震補強工事に関連する改修工事へのJIRCASの要望を適時に実施する。また、耐震補強工事設計の内容によっては、工事に伴うリスク軽減対策等、研究業務を円滑に継続するための対策を講ずる。

第3 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

1.予算

平成30年度予算(単位:百万円)

区分 企画・連携推進業務 資源・環境管理研究業務 農産物安 定生産研究業務 高付加価値化研究業務 情報収集分析業務 法人共通 合計
収入                
前年度よりの繰越金 4 10 11 8 4 37 9 46
運営費交付金 392 664 786 653 259 2,754 679 3,433
施設整備費補助金 60 0 0 0 0 60 0 60
受託収入 16 61 123 32 7 238 0 238
寄附金収入 0 0 0 0 0 0 0 0
諸収入 0 1 1 1 0 3 0 3
 計 472 735 921 694 270 3,092 688 3,780
支出                
業務経費 217 268 324 320 114 1,242 0 1,242
施設整備費 60 0 0 0 0 60 0 60
受託経費 16 61 123 32 7 238 0 238
一般管理費 0 0 0 0 0 0 127 127
人件費 182 406 476 342 149 1,556 560 2,116
475 735 923 694 270 3,097 688 3,785

[注記]

  1. 運営費交付金は、平成30年度政府予算による運営費交付金予算を計上した。
  2. 「受託収入」については、農林水産省及び他省庁分の委託プロジェクト費等を計上した。
  3. 百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

2.収支計画

平成30年度収支計画 (単位:百万円)

区分 企画・連携推進業務 資源環境管理研究事業 食料安定生産研究事業 農村活性 化研究事業 情報収集・提供事業 法人共通 合計
費用の部 430 741 924 693 271 3,058 697 3,755
  経常費用 430 741 924 693 271 3,058 697 3,755
   人件費 182 406 476 342 149 1,556 560 2,116
   業務経費 210 250 298 299 106 1,163 0 1,163
   受託経費 16 60 121 30 7 233 0 233
   一般管理費 0 0 0 0 0 0 118 118
   減価償却費 21 25 29 21 9 106 18 124
  財務費用 0 0 0 0 0 0 0 0
  臨時損失 0 0 0 0 0 0 0 0
                 
収益の部 429 762 936 704 254 3,085 874 3,959
  運営費交付金収益 377 651 758 644 240 2,669 852 3,522
  運営費交付金収益 389 655 771 641 255 2710 679 3389
   諸収入 0 1 1 1 0 3 0 3
  受託収入 16 61 123 32 7 238 0 238
  寄附金収益 3 0 2 0 0 5 0 5
   資産見返負債戻入 21 25 29 17 9 101 18 119
   臨時利益 0 0 0 0 0 0 0 0
                 
純利益 0 1 2 △3 0 0 0 0
前中長期目標期間繰越積立金取崩額 0 0 0 2 0 2 0 2
総利益 0 1 2 △1 0 2 0 2

[注記]

  1. 収支計画は平成30年度政府予算ベースで作成した。
  2. 当法人における退職手当については、役員退職手当支給規程及び職員退職手当支給規程に基づいて支給することとなるが、その全額について運営費交付金を財源とするものと想定している。
  3. 「受託収入」は、農林水産省及び他府省の委託プロジェクト費等を計上した。
  4. 百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

3.資金計画

平成30年度資金計画 (単位:百万円)

区分 企画・連 携推進業務 資源環境管理研究事業 食料安定生産研究事業 農村活性化研究事業 情報収集・提供事業 法人共通 合計
資金支出 520 735 923 694 270 3,141 688 3,829
  業務活動による支出 408 715 895 672 262 2,951 679 3,630
  投資活動による支出 67 20 28 22 8 145 9 154
  財務活動による支出 0 0 0 0 0 0 0 0
  翌年度への繰越金 44 0 0 0 0 44 0 44
                 
資金収入 520 735 923 694 270 3,141 688 3,829
  業務活動による収入 408 726 909 686 267 2,995 679 3,674
   運営費交付金による収入 392 664 786 653 259 2,754 679 3,433
    受託収入 16 61 123 32 7 238 0 238
   寄附金収入 0 0 0 0 0 0 0 0
   その他の収入 0 1 1 1 0 3 0 3
  投資活動による収入 60 0 0 0 0 60 0 60
   施設整備費補助金による収入 60 0 0 0 0 60 0 60
   その他の収入 0 0 0 0 0 0 0 0
  財務活動による収入 0 0 0 0 0 0 0 0
    その他の収入 0 0 0 0 0 0 0 0
  前中長期目標期間よりの繰越金 51 10 13 8 4 86 9 95

[注記]

  1. 資金計画は、平成30年度政府予算を基に予定キャッシュフローとして作成した。
  2. 「受託収入」は、農林水産省及び他府省の委託プロジェクト費等を計上した。
  3. 「業務活動による収入」の「その他の収入」は、諸収入額を記載した。
  4. 百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

4.自己収入の確保

受益者負担の適正化、特許使用料の拡大を図ることなどにより自己収入の確保に努める。

5.保有資産の処分

既存の施設・設備等のうち、利用率の低いものについては、その改善の可能性等の検討を行う。

第4 短期借入金の限度額

短期借入金は、4億円を限度とする。

第5 不要財産又は不要財産となることが見込まれる財産がある場合には、当該財産の処分に関する計画

なし 

第6 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画

なし

第7 剰余金の使途

なし

第8その他業務運営に関する重要事項

1 ガバナンスの強化

(1)内部統制システムの構築

  • ア 理事長のリーダーシップの下、役職員の担当業務、権限及び責任を明確にする。また、役員会及び運営会議等において、迅速かつ的確な意思決定を行うとともに、役職員間の円滑な意思伝達を行う。
  • イ 指揮命令系統を明確化し、JIRCASの方針や決定事項について速やかに所内に周知・実施する。
  • ウ 研究活動における不適正行為を防止するため、海外での研究活動に起因する事象を含め、JIRCASの業務遂行の障害となる要因(リスク)を識別、分析、評価し、適切な対応を実施する。これまでに整備したリスク管理体制のもと、リスクの発生防止及び発生したリスクへ適切に対応する。

(2)コンプライアンスの推進

  • ア JIRCASに対する国民の信頼を確保する観点から、コンプライアンス一斉研修やコンプライアンスルールブックを活用し、法令遵守や倫理保持に対する役職員の意識向上を図る。
  • イ 政府が示したガイドライン等を踏まえ、研究活動における不適正行為を防止するために必要な体制を整備するとともに、コンプライアンス一斉研修やeラーニング等による職員教育を行う。

(3)情報公開の推進等

公正な法人運営を実現し、法人に対する国民の信頼を確保する観点から、法定情報の速やかな公開に努める。さらに、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第141号)等に基づき、情報公開を推進するとともに、情報開示請求に対しては適切に対応する。

(4)情報セキュリティ対策の強化

  • ア 平成29年度に見直した情報セキュリティポリシーに基づき情報セキュリティ対策を講じる。あわせて、政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群の改定が平成30年度に見込まれることから、情報セキュリティポリシーの見直しに着手する。また、全役職員の情報セキュリティに関する意識の向上を図るため、所内セキュリティセミナーの内容の充実を図る。
  • イ 情報セキュリティ監査を定期的に実施し、改善等の指摘があった場合には速やかに改善策を講じる。
  • ウ 保有する個人情報や技術情報を適切に管理する。

(5)環境対策・安全管理の推進

  • ア 薬品等の管理に関する安全教育、職場巡視及び定期的な点検を行い、化学物質等を適正に管理する。運用から5年が経過した化学薬品管理システムを更新する。
  • イ 生物材料等の入手と管理に関する教育訓練を行うとともに、法規制のある生物材料について適正に管理する。
  • ウ 法人内で使用するエネルギーの削減を図る。また、廃棄物等の適正な取扱を職員に確実に周知し、リサイクルの促進に取り組む。
  • エ 職員の安全衛生意識の向上に向けた教育・訓練、職場巡視などモニタリング活動を実施し、作業環境管理の徹底を図る。また、ヒヤリハット事例等を活用した事故等の未然防止活動に取り組む。
  • オ 「非常時における業務継続計画に基づく業務継続力向上のためのマニュアル」を活用し、必要な対策を施すとともに、職員の防災意識の向上を図る。

2 研究を支える人材の確保・育成

(1)人材育成プログラムの実施

  • ア 改訂したJIRCASの人材育成プログラムに基づき、人材育成の取組を実施する。
  • イ 進路希望ヒアリング、キャリアデザインシート作成等を行い、職員の能力向上を積極的に支援する。
  • ウ 行政部局等との人的交流、知識の習得や技能の向上を図るための各種研修の開催、外部機関等が行う研修の活用等により、職員の資質向上を図る。

(2)人事に関する計画

  • ア 業務の着実な推進のため、必要に応じて職員を重点的に配置するなど、柔軟で適切な人事配置を行う。
  • イ クロスアポイントメント制度、テニュア・トラックを付した任期付制度や再雇用制度、公募による採用等、多様な制度を活用し、JIRCASの業務推進に必要な人材の確保に努める。
  • ウ 優秀な女性・若手職員を積極的に採用するとともに、女性の幹部登用、ワークライフバランス推進等の男女共同参画の取組を強化する。

(3)人事評価制度の改善

  • ア 関係規程や業績評価マニュアル等を整備し、公正かつ透明性の高い業績及び能力評価システムを運用するとともに、人事評価結果を適切に処遇等に反映する。
  • イ 研究職員については、研究業績、研究成果の社会実装、運営業務への貢献等、多角的な観点に基づく業績評価を実施する。

(4)報酬・給与制度の改善

  • ア 役職員の報酬・給与については、国家公務員や民間企業の給与水準等を勘案した支給水準とする。
  • イ クロスアポイントメント制度など多様な雇用体系に柔軟に対応できる報酬・給与制度の導入に取り組む。
  • ウ 透明性の向上や説明責任の一層の確保のため、給与水準に係る検証結果や取組状況を公表する。

3 主務省令で定める業務運営に関する事項

前中長期目標期間繰越積立金は、第3期中期目標期間中に自己収入財源で取得し、第4期中長期目標期間へ繰り越した有形固定資産の減価償却に要する費用等に充当する。
また、施設及び設備に関する計画については、中長期計画第2の2(2)、職員の人事に関する計画については、同第8の2(2)のとおり行う。

[別添] 試験及び研究並びに調査に係る研究の推進方向

1 開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発

気候変動や環境劣化等、深刻化する地球規模的課題に対処するため、アジア及びアフリカ地域を中心とする開発途上地域において、持続的な資源・環境管理技術の開発を進める。具体的には以下の研究を重点的に実施する。

メコンデルタ地域からの温室効果ガス排出削減を目指し、地域の農産廃液を肥料として水田利用する際の施用量等についてこれまでのポット試験の成果を取りまとめるとともに圃場試験を開始する。また、これまで取り組んできた水稲節水栽培(AWD)による温室効果ガス排出削減効果並びに増収に関するデータを取りまとめる。それらの知見に基づきAWD技術を普及させるための政策提言ペーパーを作成する。畜産部門における高収益低環境負荷牛飼養技術開発の一環として、家畜糞からの温室効果ガス排出量を評価する。加えて、極端現象に対する農作物天候インデックス保険を設計する。さらに、干ばつ等の水リスクに対する灌漑システムの利用向上手法を開発するため、灌漑システムの機能診断法を策定する。

ブルキナファソにおいて、土壌・水保全のための試験を継続し、流域スケールでの評価モデルのプロトタイプを作成するとともに、飼料資源の栄養価を評価する。エチオピアにおいて、在来樹木植生、傾斜地農地およびため池用水の活用に関する試験を継続し、流域内における効果を評価すると共に社会経済的側面から集落による体系的な森林管理の基礎条件を明らかにする。

パラオの対象流域における水、土砂、栄養塩の流出を試算するとともに地域資源を活用した環境保全型栽培技術を検証する。フィリピンでは窒素の肥培管理シナリオを提示する。インドでは浅層暗渠による除塩効果の基礎データを収集するとともに、耐塩性遺伝子を導入した後代系統の現地適応性試験と現地選抜を行う。

施肥窒素の削減・利用率向上や農地由来の亜酸化窒素排出等の環境問題解決に資するBNI強化品種の開発に向けて、コムギやソルガムの遺伝資源でのBNI活性評価を継続するとともに、ブラキアリア牧草やソルガムでの高精度選抜マーカー開発のための遺伝学的解析を進める。

2 熱帯等の不良環境における農産物の安定生産技術の開発

食料増産の推進とアフリカをはじめとする世界の栄養改善に向けて、低肥沃度や乾燥等の不良環境のため農業生産の潜在能力が十分に発揮できていない熱帯等の開発途上地域を対象として、農産物の安定生産技術の開発を進める。具体的には以下の研究を重点的に実施する。

アフリカにおける食料と栄養の安全保障促進に資するため、イネ増産については現地への適応性や品質・収量性等に優れた育種素材の育成と、開発された技術の現地適用性および普及条件の検証をさらに進める。地域作物については、ヤムの有用形質にかかる遺伝解析と形質評価を進め、ササゲについては新規育種素材育成のために交配と世代促進を開始する。耕畜連携については、モザンビークにおける耕畜連携モデルに必要な技術等の開発を進め、地域農家の経済状態を把握する。

不良環境に適応可能な作物開発技術の開発については、イネの地表根に関するQTLを持つ系統群を育成するとともに、イネの根の伸長に関する新規QTLの遺伝的変異を解析する。窒素利用効率に関する遺伝子を導入した準同質遺伝子系統の栽培試験を継続するとともに、途上国のイネ普及品種へ導入するための戻し交配を継続する。耐塩性遺伝子を途上国のダイズ普及品種へ導入するための戻し交配を継続する。

多型マーカーを用いてタイのエリアンサスF1集団における遺伝子型の判定結果を得るとともに、タイの飼料用サトウキビの成分分析による飼料価値と株出し栽培における収量を明らかにする。

ベトナムにおけるイネウンカ類の殺虫剤抵抗性データを得る。サバクトビバッタの集合状況と卵サイズとの関係を解明する。サトウキビ白葉病媒介虫に対する殺虫剤施用技術を開発する。イネいもち病真正抵抗性遺伝子または圃場抵抗性遺伝子を組み合わせた集積系統群育成のための雑種集団を確保する。ダイズさび病抵抗性遺伝子集積新品種の導入効果を評価する。

3 開発途上地域の地域資源等の活用と高付加価値化技術の開発

アジア地域伝統食品の高品質化・高付加価値化のため、各国の地域特性や経済発展段階に合致した品質評価法および製造技術の開発と適用性の検証・改良を進め、研究ネットワークを通じて情報と技術の共有化を図る。また、フードバリューチェーンに沿って、地域食料の加工・流通調査、消費者調査等を進めるとともに、これまで得られた生産・流通データを解析し、大都市の消費者嗜好やニーズを解明する。

東南アジア地域における農産廃棄物等の未利用バイオマスを活用するため、新規糖化微生物コンソーシアムから分離した嫌気性好熱アルカリ性菌(Herbivorax saccincola A7)の酵素複合体に関する性質を明らかにする。また生物学的同時酵素生産糖化法に適した、共培養可能なβグルコシダーゼ生産菌の単離及び解析を行う。

インドシナ中山間農村の生産性向上と生活・栄養の改善を図るため、低地では水稲不適地での陸稲適用によるコメの生産性向上を図るとともに、タンパク質増産のための養魚技術を開発する。丘陵地では、陸稲有望品種の選定と非木材林産物の資源分布ポテンシャルに基づく陸稲-休閑体系を提示する。また、山間部農村における栄養供給の実態把握を行い、魚類等地域タンパク資源を有効利用するための技術開発を進める。

東南アジア地域森林資源の高付加価値化技術を開発するため、チーク人工林の成長量と木材品質の評価指標を開発するとともに、ラオスにおけるチーク生産適地図を作成する。さらに、フタバガキ科林業樹種の環境操作実験を行い遺伝子発現情報を収集するとともに、種子油成分など高付加価値化のための形質の評価を行う。

東南アジア沿岸域において生態系に調和した水産資源利用技術を開発するため、二枚貝類の養殖適地選定及び環境資源の適正利用の提言、淡水エビの産卵様式解明と幼生育成技術の改良、魚粉・魚油削減飼料の有効性の実証、複合的養殖に関する普及マニュアル原版の作成を行う。

平成30年度計画
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