研究成果情報 - ラオス

国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。

各年度の国際農林水産業研究成果情報

  • ラオス山地では植栽密度と立地選択によりチーク成長が倍増する(2021)
    ラオス山間部では植栽密度のコントロールと植栽する斜面の形状や傾斜の選択によって人工林チークは肥大成長および伸長成長に倍程度の差異を持つことから、適地判定が重要である。凹形緩傾斜面の下部が適地として最も推奨され、密植は避けた方が成長がよい。
  • ラオス淡水魚発酵調味料のヒスタミン生成は仕込み時の塩分調整で抑制できる(2020)

    ラオス農村世帯で生産・消費される淡水魚発酵調味料には製品ごとに塩分のばらつきがあり、低塩分の製品では高濃度のヒスタミンが生成される傾向がある。魚、塩、米糠の重量比を3:1:1となるよう混ぜ合わせる伝統的な製法に従い、仕込み時の塩分を18%程度に調整することにより、発酵に伴うヒスタミンの生成を抑制できる。

  • 汎用小型ドローンから陸稲圃場のイネと雑草を高精度で判別できる(2020)

    オブジェクトベース画像解析は、画素値の類似したピクセルの集合を1つのセグメントとし、セグメント単位で分類する高解像度画像に適した手法である。同手法を用いて、陸稲圃場のドローン空撮画像を解析することで、イネ・雑草・土壌を高精度で分類でき、圃場内の雑草の空間分布を迅速に把握することで、除草作業の効率化が期待できる。

  • アメリカミズアブ幼⾍はキノボリウオの飼料タンパク質源として有効である(2019)

    果実残渣等を用いて簡易に生産できるアメリカミズアブ幼虫をタンパク源として調製した餌は、ラオスの主要な養殖対象魚であるキノボリウオにおけるタンパク質同化効率が従来の魚粉飼料よりも優れ、タンパク質含量が少ない飼料でも高成長が期待できる。

  • ラオスの重要な⾷⽤⿂パケオの資源保全に資する⽣態的情報(2019)

    ラオスの重要な漁業資源であるパケオ Clupeichthys aesarnensis はニシン科の小魚で、乾物や発酵食品の主要な原料であるが、主な漁場では乱獲による漁獲量の減少が強く懸念されている。本種は周年産卵することから、適切な資源管理を行うには禁漁期ではなく禁漁区の設定が有効である。

  • 穂ばらみ期の地上分光計測データから収穫前にコメの収量が予測できる(2018)

    穂ばらみ期の水稲群落上で分光計測を行うことで、収穫1カ月前に収量を予測することが可能である。さらに早い生育ステージ(幼穂形成期)でも低い精度で収量を予測できるが、開花後の成熟期に入ると予測は困難になる。収量の推定には、分光データのうち窒素とバイオマスに関連したレッドエッジ(700–760 nm)と近赤外(810–820 nm)の波長が重要である。

  • キノボリウオの水田養魚は種苗の低密度放流により無給餌でも成立する(2018)

    ラオス山村域では、農民の動物タンパク質摂取不足を改善するために養魚振興が求められている。山村域の小規模農家が実施可能な水田養魚において、在来種であるキノボリウオを用いた場合、養魚種苗の低密度放流により無給餌でも高水準の生産性が見込まれ、さらに給餌することで生産性は向上する。

  • 養魚ため池の貯留水を雨季水稲と乾季畑作に利用することで収益増が期待される(2018)

    ラオス中部の中山間農村では、養魚用ため池の貯留水の活用により、雨季初期に水が不足する圃場の初期灌漑と乾季には畑作を行うための補給灌漑が可能になる。養魚に必要な最低水量を維持することで、ため池を養魚と灌漑に併用できる。また4月上旬に貯留水を抜く慣行法よりも、乾季畑作の灌漑に合わせて2月に水を抜く方が利益の増加が見込まれる。

  • ラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの浮遊幼生飼育技術の開発(2017)

    ラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの浮遊幼生は、孵化後から着底するまでは塩分3.5 pptの人工海水で飼育し、その後1週間を1.7 pptで馴致飼育した後に淡水飼育を開始することが好適条件である。この方法を用いることで浮遊幼生の70%以上が稚エビまで成長する。

  • インドシナ半島の発酵型米麺のタンパク質分解と特徴的なテクスチャの関連性(2016)

    インドシナ半島で生産、消費される発酵型米麺では、原料米のコメ貯蔵タンパク質の一部が選択的に分解を受けることで、伸展性に優れたテクスチャとなる。発酵させない場合、麺のゲルの破断点となる構造がタンパク質により形成されるため、伸展性に乏しい。

  • ラオスの重要な食用魚パ・コーの生態的情報に基づく資源保全管理(2016)

    西アジアから東南アジア一帯に広く分布し、ラオスにおける重要な食用魚であるタイワンドジョウ科Channa striata(現地名パ・コー)は、近年小型化や資源の減少が危惧されており、資源管理が必要である。本種は体長20 cm以上で性成熟し、4月前後に卵巣が成熟することから、この時期に体長20 cm(2歳)以上の個体を漁獲規制することが資源保全に効果的である。

  • アセアン国別食料需給モデル作成・運用マニュアルによる成果の普及(2016)

    アセアン加盟各国を対象として食料生産・消費の中期予測を行うための非均衡モデルを作成・運用するためのマニュアルを作成し広く公表する。マニュアルは、モデルの作成法を基礎的な計量経済学の概念と共に示し、モデルの理解・作成・運用に寄与する。

  • ラオス中部の田越し灌漑水田では水不足による移植の遅れが水稲減収をもたらす(2015)

    ラオス中部の中山間地農村において、田越し灌漑水田の雨季水稲の減収は、主に水不足による移植時期の遅れにより生じている。収量低下を回避するためには、早期の田面湛水を促し、7月中に移植することが望ましい。

  • ラオス中部の薪利用は、特定の樹種の資源の減少に影響している。(2015)

    ラオス中部の調査対象村の主要な燃料は薪であり、消費量は一世帯当たり年間約1.94トンに達する。また、消費量を村全体で見ると約272トン/年に上り、森林面積に換算すると約16haに相当する。農家は薪として2種類の樹種を好んで採取しており、これらの樹種の減少の原因となっている。

  • ラオスの焼畑二次林の有用樹種を含む樹木データベース(2015)

    樹木図鑑の整備が遅れているラオスにおいて、焼畑二次林に出現する樹木のさく葉標本を閲覧できるよう整備し、各樹木の特徴、用途、高解像度のさく葉標本画像などを収録したラオス語で検索が可能な樹木データベースを基盤情報として構築する。

  • ラオスにおける多様な非木材林産物は農家経済にとって高い有益性を持つ(2014)

    ラオス中山間地域では森林から400種類を越える多種多様な非木材林産物が採集されている。その9割が自家消費であり、中でもキノコ類は周年的に採集されており、安定した食料となっている。また、ホウキグサなどの繊維部門の産品は地域住民の大きな現金収入源である。

  • 生態的特性に基づく小河川での小型コイ科魚類個体群の保全管理(2014)

    インドシナに広く分布する小型のコイ科魚類Rasbora rubrodorsalisは、ラオス中山間農村の重要な食料タンパク源である。本種は短命で、年に複数回世代交代しながら、周年繁殖している。こうした生態的特性に基づき、本種の個体群保全には、季節的な漁獲規制より、上流域の周年的禁漁区の設定が有効である。

  • タイ、ラオスの淡水魚発酵調味料の品質に影響する塩分濃度と発酵期間の重要性(2014)

    タイ、ラオスに共通する淡水魚発酵調味料の塩分濃度、pH、乳酸含量には地域性がある。製品中の主要乳酸菌種は、塩分が10%より高い製品では耐塩性乳酸菌、それより低い製品では乳酸桿菌となる。主に乳酸桿菌を含む製品で乳酸含量が高い傾向が見られる。うま味成分のグルタミン酸含量は発酵の経過に伴い増加する。

  • ラオス産小型魚類2種のDNAマーカーによる遺伝的多様性・集団構造評価(2013)

    ラオスの遠隔農村部で重要な食料資源となっている小型在来魚類Esomus metallicus(コイ科)とParambassis siamensis(タカサゴイシモチ科)のDNAマーカーが開発され、これにより、ビエンチャン市周辺及びナムグム川西岸における当該2種の遺伝的多様性を評価できる。さらに、集団構造解析による地域的特異性の評価を通じ、集団間の遺伝的交流実態を推量できる。

  • ラオスの農家在来技術である強酸性土壌でのコウモリ糞の植え穴施用の作用(2013)

    ラオスの強酸性水田土壌での水稲跡畑作物栽培ではアルミニウム害が問題となるが、農家在来技術であるコウモリ糞の植え穴施用は、土壌の交換性アルミニウムを低下させて畑作物に対するアルミニウム害を軽減し、初期生育を促進する。また、カルシウムやマグネシウム等の交換性陽イオンや有効態リンなどを富化し、養分溶脱の進んだ土壌の改善に寄与する。