研究成果情報 - ラオス
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- ラオス産小型魚類2種のDNAマーカーによる遺伝的多様性・集団構造評価(2013)
ラオスの遠隔農村部で重要な食料資源となっている小型在来魚類Esomus metallicus(コイ科)とParambassis siamensis(タカサゴイシモチ科)のDNAマーカーが開発され、これにより、ビエンチャン市周辺及びナムグム川西岸における当該2種の遺伝的多様性を評価できる。さらに、集団構造解析による地域的特異性の評価を通じ、集団間の遺伝的交流実態を推量できる。
- ラオスの農家在来技術である強酸性土壌でのコウモリ糞の植え穴施用の作用(2013)
ラオスの強酸性水田土壌での水稲跡畑作物栽培ではアルミニウム害が問題となるが、農家在来技術であるコウモリ糞の植え穴施用は、土壌の交換性アルミニウムを低下させて畑作物に対するアルミニウム害を軽減し、初期生育を促進する。また、カルシウムやマグネシウム等の交換性陽イオンや有効態リンなどを富化し、養分溶脱の進んだ土壌の改善に寄与する。
- ラオスにおける在来テナガエビMacrobrachium yui の遺伝的多様性(2012)
テナガエビの遺伝的集団構造解析を行ったところ、本種は集団間で遺伝的に分化しており、河川間で遺伝的交流は見られない。ラオス北東部に生息する集団は集団サイズ及び遺伝的多様度ともに低下しており、各地域集団の遺伝的特性に適した資源回復手法が必要とされる。
- 気候変動下の蒸発散量の変化がメコン川下流域のコメ市場に与える影響と生産余力(2011)
メコン川下流域を対象とする気候変動の影響の分析が可能なコメの需給モデルを用いて、気候変動が、メコンデルタ地域のコメ生産量を減少させることを示し、また、灌漑開発計画とモデルで推定された作付面積の比較により、メコン川下流域4カ国各県各地域の生産余力を示した。
- ラオスにおけるテナガエビの生活史特性に基づいた資源管理手法(2011)
ルアンプラバン県におけるテナガエビMacrobrachium yuiの生活史に関する野外調査の結果、雌は洞窟河川へ遡上し、その内部で主に7月から8月にかけて繁殖するとみられる。その生態的特性に基づき現地住民及び行政とともにテナガエビ漁の禁漁期を設定し資源管理を実施する。
- インドシナ半島地域における肉用牛飼養標準と飼料資源データベース(2010)
インドシナ半島熱帯地域に特有な在来種及びブラーマン種肉用牛のエネルギー及びタンパク質要求量に基づいた肉用牛飼養標準と、同地域固有の飼料資源の一般成分及び栄養価を収載した飼料資源データベースである。飼料設計を支援するためのソフトウェアが添付されている。
- 養殖対象として有望なラオス在来コイ科魚類Hypsibarbus malcolmi の種苗生産および成長(2010)
Hypsibarbus malcolmiは、孵化後2日目(2日令)には親由来の栄養である卵黄の吸収完了と同時に、人為的に培養した小型動物プランクトン(淡水産ワムシBrachionus angularis)を摂餌し、体長10 mm強となる孵化19日後には主な器官が完成し稚魚となる。共食いせず、活発に摂餌することから種苗生産期間の生残率も高く(>90%)、養殖対象種として有望である。
- 大メコン圏における経済統合が農業に与える影響評価と貧困解消を実現するための政策提言(2009)
大メコン圏の国境周辺地域の比較事例研究を通じて、農業分野の経済統合が、産地形成の進展、雇用機会の増大等により貧困解消に寄与している一方、競争激化により作目転換等を強いられている地域が存在し、激変緩和のための関係国間の政策調整が必要である。
- 初期生活史特性に基づくラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの種苗生産技術(2008)
ラオス北部に生息し、零細農民の貴重な現金収入源である陸封型テナガエビM. yuiの種苗生産技術を開発した。本種は両側回遊型テナガエビ同様、浮遊幼生期を有し、孵化から浮遊幼生期まで洞窟河川内で過ごす。浮遊幼生を3.5 pptに調整した人工海水で飼育することにより、その多くを着底に至るまで成長させ、さらに着底後、直ちに淡水飼育に切り替えることで飼育可能である。
- ラオスにおける淡水在来魚キノボリウオ亜科2種の集約的種苗生産(2008)
仔魚の初期餌料として有効な淡水産ワムシ(Brachionus sp.)の大量培養技術を導入することにより、ラオスにおいて需要の高いキノボリウオ亜科魚類のキノボリウオ(Anabas testudineus)およびスネークスキングラミー(Trichogaster pectoralis)の集約的種苗生産が可能となる。また、キノボリウオの仔稚魚期に頻発する共食いを軽減するには、大型・小型個体の選別および給餌管理が有効である。
- アジア開発途上地域の農業技術開発目標の重要度(2006)
アジア開発途上地域の農業研究者、普及職員及び農家の間には、農業技術の開発目標の重要度や、技術開発目標の達成により期待される効果の認識に差がある。特に農業経営・技術普及に関する研究については、貧困解消への寄与が農家から期待されており、この分野の研究成果を農業技術政策へ反映させる努力が、研究開発への信頼醸成のために重要である。
- 衛星データの時系列解析による耕作-休閑サイクルの同定と植生回復力の推定(2005)
衛星データを用いた植生被覆の時系列解析による耕作-休閑サイクルの同定と植生指数の組み合わせによって、ラオス北部などの焼き畑地帯の植生の回復力が推定できる。