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234. 国際的な研究ネットワークで社会貢献を目指す -イネいもち病研究を通してー

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国際農研は、開発途上地域の研究者や技術普及員と一緒になって現場の問題を解決したり、解決に向けた支援をしたりすることが一つの役割です。

イネのいもち病は、熱帯から温帯のイネが栽培されるすべての地域で発生し、最も被害が大きく怖い重要病害の一つです。1970年以降、近代改良品種が広い面積で普及し、連続して栽培されるようになると、より顕著に発生が認められるようになりました。

いもち病は重要病害のため多くの基礎研究が行われ、いもち病菌の病原性遺伝子の同定・単離や分子生物学的な病原性の機構解明も進んできています。またイネ品種側でも抵抗性遺伝子が単離され、詳細な抵抗性の機構も解明されてきています。 しかし、それらの知見を農家が使える防除技術として提供していくためには、まだ長い時間がかかりそうです。

そこで、国際農研は2006年より、フィリピンの国際稲研究所(IRRI)などと協力しながら、イネいもち病を克服するための国際的なネットワーク研究を開始しました。この中では、世界のいもち病菌レースの変異や分布、それに対応するイネ遺伝資源の抵抗性変異を明らかにし、両者の関係を明らかにすること、抵抗性や病原性を評価する基本的な研究手段である判別システムを開発すること、これらを使って安定的な抵抗性を示すイネ品種を育成することを通して、防除技術につなげていくことを目標としています。

また、東南アジアや南アジア、あるいはアフリカの国立の農業研究機関や大学の研究者と共同で、判別システムを開発しながら、若い研究者と防除技術を開発するために必要な材料、研究、アイデアなどを議論し、お互いの成長も図りながら研究者の養成にも取り組み、新たな技術を独立して開発していける人材の確保も目指してきました。 

判別システムは単なる道具でしかありません。それを用いた育種材料の育成や病原菌レースの解明、それらを組み合わせた防除技術の開発に向けて、彼らが個性的な研究を推進することを期待しています。


本文は、広報JIRCAS掲載記事を再掲しています。


(熱帯・島嶼研究拠点 福田 善通)

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