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AFRICA AGRICULTURE STATUS REPORT 2016(AGRA (2016)). Progress towards Agricultural Transformation in Africaの概要

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 本レポートは、MDGsやマプト宣言を指標として、アフリカ農業の進歩トレンド、変化を推進する要因、新たな課題、等を評価するものである。以下の11章と、国別の農業関連主要指標のアネックスからなる。
 以下、総括的なCh1の要点をまとめる。

Ch1: Africa’s Emerging Agricultural Transformation: Evidence, Opportunities and Challenges
Ch2: Strengthening the continental agricultural agenda and accountability framework 
Ch3: Driving Economic Transformation
Ch4: Sustainable Intensification for Resilience 
Ch5: Agricultural Productivity through Intensification and Local Institutions 
Ch6: Getting More for Farmers from Post-Harvest to Market 
Ch7: New Ways of Financing African Agriculture
Ch8: Modernization of Agriculture through Digital Technology 
Ch9: The Roles of Agricultural Research Systems, Advisory Services and Capacity Development and Knowledge Transfer 
Ch10: Achieving Food Security and Nutrition 
Ch11: Putting it all together – Recommendations and Conclusions 
 
Ch1: Africa’s Emerging Agricultural Transformation: Evidence, Opportunities and Challenges

アフリカの直面する10の主要なトレンドについて
(1)    人口爆発:今日サブサハラ・アフリカの人口は9.2億人で世界人口の12%を占めるが、2050年までに21億人・シェア31%、今世紀末までには38億人・34%まで達すると予測される(p.6図1.1)。現在アフリカ人口の62%が25歳以下で、15歳以下人口の増加が予測され、また2015-2050年の間に農村人口が60%増と、農村人口純増が予測される唯一の地域でもある。この人口増は、[1]拡大する都市へ食糧を供給する農村農業システムへの負荷増、[2] 市場アクセスの良い地域における居住・非農業目的のための土地投資・投機による地価高騰、[3]土地無し若年層による出稼ぎ・移民問題の勃発、等の問題を引き起こすと予想される。

(2)    都市化と都市人口増: 地域差はあるものの、アフリカ全体で急激な都市化傾向。急激な都市化は指数的に食糧需要を増加させ、農業システムに大きな負荷を与えうる。まず1990年には都市住民1人を農民3人が支えていたのが、2020年にはフルタイム農民1人が2人の都市住民を支えなければならない(p.8, 出典:Richards et al., 2016)。所得増・生活様式変化による食事内容変化により加工食品等への需要も拡大する。主要穀物、油脂作物、畜産産物の輸入依存も高まる。他方、辺鄙な地方でもバリューチェーン発展に伴い市場アクセスが高まれば、相対的に高い食糧価格がインセンチブとなり、アフリカ農民にとっても市場へ参加するかつてない機会が高まる。政府の市場・土地セクターに関する政策が農業部門のパフォーマンスを左右するであろう。


(3)    労働力の非農業雇用へのシフト:前述したように、アフリカ人口の6割以上が25歳以下若年層であり、2035年までに2.2億人の若者が労働力人口へ流入する(p.9, 出典Filmer & Fox, 2014)。楽観的シナリオの元でも、サブサハラ・アフリカにおける賃労働機会はこれら2.2億人の25%しか吸収できないとされ、農業や自営業部門が少なくとも2030年までに70%を吸収できるようにしなければならないにもかかわらず、農業部門は若者にとって金銭的に魅力があるものではないのが現状である。

(4)    全般的に農業生産性は上昇傾向、貧困削減:2005年までの停滞期に比べ、過去10年、アフリカ農業は持続的成長を維持しつつある。しかし2000-2012年というスパンでみると、農業生産性の向上が貧困削減に必ずしも繋がっていない国も見られる(p.9, 図1.4)。アフリカ小規模農民の40-60%は、未だに主食作物に関して純消費者、あるいは年間を通じて販売よりも購入するほうが多い状況にある(p.11, 出典Jayne, Mather & Mghenyi, 2010)。主食作物が安価で市場で入手できる場合、リスクをマネージできれば、果樹栽培や油脂作物、乳業、畜産、など高付加価値作物へシフトし、所得改善することも可能である。ローカルな食糧市場の機能改善を図ることで、農業・非農業生産性改善と経済構造変化の促進を図ることを検討すべきである。

(5)    土壌劣化問題:28%近くのアフリカ農民が既に土壌劣化した農地を耕しているとされ、人口圧力はこの傾向をさらに高めると予測される(p.12, 出典Barbier & Hochard, 2016)。化学肥料の使用推奨には限界があり、様々な土壌・水保全管理手法を統合して持続的農業生産性向上を目指す土地管理戦略が必要とされる。

(6)    土地価格の高騰:近年、市場アクセスのよい地域において、土地賃貸市場が活発化し、土地レンタル価格の上昇が見られる。

(7)    気候変動の不確実性上昇:アフリカは気候変動の影響に最も晒される地域と予想されており、Climate smart agriculture (CSA) の適応が推奨されている。CSAは、[1]持続的な農業生産性と所得向上、[2]気候変動への強靭性強化、[3]可能なかぎりGHG削減、を目的とするが、技術推奨の際は、労働・市場条件・土壌・気候等に応じた地域固有の事情・条件を配慮することが重要である。

(8)    主食穀物輸入依存殿上昇:アフリカ地域ごとに、主要穀物の需要は上昇し、輸入が増える傾向にある。地域別では、東アフリカでは小麦、西アフリカでは米と小麦が純輸入傾向にある(p.15, 図1.7)。また、砂糖、食用油等、高付加価値作物において、消費が生産を上回る傾向が予測されている(p.14, 図1.6)。輸入依存は国内農業生産と波及効果を通じた加工業における雇用創出の隘路ともなっている。経済・産業発展の点からも、農業生産向上は急務である。

(9)    市場アクセス状況の改善:都市化は市場アクセス拡大の機会だが、バリューチェーンで勝ち残るには、農民は、多様性・サイズ・風味・質・安全性といった点での競争力も身につける必要がある。そのための組織化・公的機関による能力開発等が重要となる。

(10)    農地所有条件と農地分配の変化:近年、アフリカ諸国の中には、5ha 保有以下の小規模農民のシェアが減少し、5-100ha程度を保有する中規模農民が台頭しつつあり、一般化は出来ないが、アフリカ農業を牽引する主役となっていくと予想される(p.17-18, 表1.4, 出典 Jayne et al. 2016)。

2000年来、アフリカの小規模農業に従事する農民のシェアは70-80%から40-50%に減少傾向にある(p.19)。その減少傾向は農業生産性向上が顕著な国で著しく、アジアのように農業生産性上昇が経済構造転換を推進しているような国も見られるが、地域差も激しい。さらに、上述したような課題を見据えて備えなければならない。

 詳しくは、以下のURLから報告書を入手されたい。
  http://www.agra.org/aasr2016/

(研究コーディネイター 飯山みゆき)


Key Reference: 
Barbier & Hochard, 2016; Poverty and the spatial distribution of rural population (Policy Research Working Paper, WPS 7101). Washington, DC: World Bank Group.
Filmer & Fox, 2014: Youth Employment in Sub-Saharan Africa. Africa Development Series. Washington, DC: The World Bank. Retrieved from https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/16608/978146…;
Jayne, Mather & Mghenyi, 2010; Principal challenges confronting smallholder agriculture in sub-Saharan Africa. World Development, 38(10), 1384–1398.
Jayne et al. 2016; (in press). Africa’s Changing Farmland Ownership: The Rise of the Emergent Investor Farmer. Agricultural Economics.
Richards et al., 2016: Cities and the future of agriculture and food security: a policy and programmatic roundtable. Food Security, DOI 10.1007/s12571-016-0597-3