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1128. No More Hot Air…Please!
1128. No More Hot Air…Please!
温室効果ガス排出量が過去最高を記録し、気候変動の影響が世界的に深刻化する中、現状のままでは、パリ協定の1.5°C目標は数年以内に達成できず、2°C目標の達成も危うい状況です。各国は、2025年にブラジルで開催されるCOP30に先立ち、2025年初頭に提出に向け、「国が決定する貢献(NDC)」をとりまとめています。
COP30に先立ち、国連環境計画(UNEP)の「エミッションギャップレポート2024(The Emissions Gap Report 2024: No more hot air…please!)」は、アゼルバイジャンのバクーで開催されるCOP29において、2030年まで温室効果ガス排出量半減を目指す、前例のない野心的な目標に共同でコミットすることを呼びかけました。
1.5°Cを最小コストで実現するためには、2030年までに排出量を2019年比で42%削減する必要があります。2°Cを実現するには、2030年までに排出量を28%削減する必要があります。無条件NDCsと条件付きNDCsの両方を完全に実施しても、2030年に予想される排出量は10%しか削減されず、最大2.6°Cの温暖化が予測されます。現在の条件付きNDCsの実施では最大2.8°C、現行の政策では最大3.1°Cの温暖化が予測され、こうしたシナリオは人類・地球・経済に破滅的な影響をもたらします。パリ協定の1.5℃目標のオーバーシュートを抑え込む上には、大気中の二酸化炭素の大規模な除去という大掛かりでコストの嵩む措置が必要となるでしょう。
技術的には、1.5°C達成は可能であり、太陽光・風力・植林等を通じ、抜本的かつ迅速な排出量削減が期待されています。しかしその実現には野心的なNDCsが必要で、そのためには政府全体のアプローチを見直し、社会経済的及び環境的なコベネフィットを最大化する措置を講じ、国際金融アーキテクチャの改革を含む国際協力を強化し、民間セクターの積極的な行動を促し、気候変動緩和分野の投資を最低6倍増加させる必要があります。
とりわけG20諸国、特に排出量の多い加盟国は、大幅な排出量削減コミットメントに大きな責任を負っています。G20加盟国は、2023年の排出量の77%を占めています。G20にアフリカ連合の加盟国を加えると、国の数が大幅に増えるにもかかわらず総排出量は82%で、国家間での責任分担の公平性に配慮する必要性が浮き彫りになりました。現在のNDCsの達成さえ危ぶまれるG20加盟国、とくに最も排出量の多い加盟国は、とくに、排出削減努力を大幅に拡大する必要があります。
気候変動緩和と開発目標を公正に実現するには、より強力な国際的支援と強化された気候ファイナンスが不可欠です。新たに設定される削減目標を達成するために、NDCは適切に設計され、具体的で透明性の高いものとする必要があります。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)