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757. 国連世界水開発報告書2023:水のためのパートナーシップと協力

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757. 国連世界水開発報告書2023:水のためのパートナーシップと協力

ユネスコ世界水質評価プログラムによる報告書「国連世界水開発報告書2023:水のためのパートナーシップと協力」から、農業における水利用についての報告をまとめました。

 

世界の水

過去40年間をみると、世界全体で水使用量は年間約1%ずつ増加しています。人口増加、社会経済発展などにより、2050年まで同様の割合で増加すると予測され、この増加の大部分は、中低所得国、特に新興国に集中しています。水不足は、物理的な水ストレスの局所的な影響と、淡水汚染の加速と拡散の結果、常態化しつつあります。

世界人口の約10%が水ストレスの高い国や危機的状況にある国に住んでいます。気候変動により、中央アフリカ、東アジア、南米の一部などの現在水が豊富な地域では季節的な水不足が進み、中東やアフリカのサヘル地帯など、すでに水が不足している地域ではさらに悪化すると考えられています。

水質に関するリスクの兆候は、低所得国、中所得国、高所得国すべてに見られます。低所得国の環境水質の悪さは、排水処理の低レベルに起因することが多く、高所得国では農業からの流出がより深刻な問題になっています。

 

農業における水利用

多くの場合、農民が共通の灌漑システムを管理するための水利組合が組織されます。中でも地域の他機関から社会資本を受け、地元NGOによる長期的な関与、民主的な内部プロセス(例:選挙による議長や理事)を持つ小規模な水利組合が最も成功しています。

しかしながら、実施体制の不備、役割と責任の不明確さ、女性の参加不足、行政権限の不足などが原因で、うまく機能していない組合も見受けられます。また、政府機関(灌漑局や水資源省など)により義務付けられた制度の細則や規則によって、水利組合の有効性が制限される可能性も生じます。

2050年までに都市の水需要が80%増加すると予測されています。農業から都市中心部への水の配分は、成長する都市の淡水需要を満たすための一般的な戦略となっています。農業からの水の再配分は、成長する都市の需要を満たすという点では、おおむね成功していると言えます。しかし、農業・農村の観点でみると、灌漑用水は減少し、食料安全保障の低下や農家の生計収入の減少につながるという否定的な結果が観察されています。金銭的な支援や新たなインフラ整備などへの補償や、利益配分の取り決めは、こうした悪影響を埋め合わせるのに役立ちます。

水-エネルギー-食糧-生態系ネクサス(WEFE Nexus)*はEUが支援するプログラムで、WEFEの相互関連性とトレードオフを理解するための体系的アプローチを提供しています。WEFEアプローチは、水、エネルギー、食料の安全保障と、それを支える水、土壌、土地などの生態系が相互依存していることに重点を置き、すべてのセクターを統合して、人々と環境の異なる目標、利益、ニーズのバランスを取ろうとする持続可能性の全体像を提供するものです。

 

* WEFE Nexus(水-エネルギー-食糧-生態系ネクサス
グローバルプログラム「ネクサス地域対話」の枠組みで開発されました。独立した情報および促進プラットフォームで、EUが支援しています。このプログラムは、ドイツ経済協力開発省(BMZ)と欧州連合(EU)の共同出資による国際協力機構(GIZ)によって実施されています。

 

(参考)
The United Nations World Water Development Report 2023: partnerships and cooperation for water; executive summary https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000384657

 

(文責:情報広報室 金森紀仁)

 

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