国際農林水産業研究センターにおける人材育成プログラム

国際農林水産業研究センターにおける人材育成プログラム
人材育成プログラム【H28改訂】.pdf345.54 KB

平成19年2月28日
改正 平成23年12月28日
改正 平成25年8月31日
改正 平成28年9月5日
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター

1.人材育成プログラム改正の背景

  • 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(以下、「JIRCAS」という。)は、農林水産技術会議が平成18年3月に策定した「農林水産研究における人材育成プログラム」を受けて、平成19年2月、「人材育成プログラム」を策定した。このプログラムにより、研究部門、管理・支援部門のそれぞれにおいて、ステージに応じて、コミュニケーション能力の向上や海外の状況把握能力の向上など業務遂行に必要な能力の向上を図ってきた。
  • 農林水産技術会議が平成23年4月に、「農林水産研究における人材育成プログラム」を見直したこと、JIRCASが第3期中期計画(平成23年度~平成27年度)に研究プログラムによる新たな研究体制を構築したことを踏まえ、JIRCASでは平成23年12月に「人材育成プログラム」を改正し、農林水産技術会議による「農林水産研究における人材育成プログラム」に示された若手・女性研究者等の活用、広報・情報管理等に係る人材の育成を反映するとともに、新たな研究プログラム体制に対応できるようにした。
  • さらに、任期付研究員に対するテニュア・トラック制度が導入されたことから、同制度を適用される職員の育成方針を、平成25年8月に改正した。
  • 農林水産技術会議は、平成28年2月に、「農林水産研究における人材育成プログラム」を再度見直し、産学官連携を推進する人材等研究支援人材を育成するための教育・研修の充実やキャリアパスの複線化、異分野融合研究等を一層推進するためクロスアポイントメント制度の活用を推進することとした。
  • また、JIRCASは第4期中長期計画(平成28年度~平成32年度)では、研究成果の最大化に向けた研究マネジメント改革、政府方針に即した開発途上地域における研究開発、法人としてのガバナンス強化を重点事項として位置づけており、これらを推進する人材の確保が必要である。
  • このような背景を踏まえ、JIRCASでは平成28年9月に「人材育成プログラム」を改正することとした。

2.基本方針

  • JIRCASは、農業・林業・水産業に関する自然科学・社会科学のほとんどの研究分野を守備範囲とすることと、熱帯、亜熱帯及び開発途上の地域に資する研究を実施することの2点に、国内の他の法人と異なる大きな特徴を有している。また、研究対象地域の農林水産業問題の解決のために、ほとんどの研究プロジェクトを、国際研究機関、あるいは対象国の教育・研究機関との、国際共同研究として実施していることも大きな特徴である。
  • このような組織を効率的に運営し、実効ある研究成果を着実に生産していくことがJIRCAS の使命である。この実現のためには、キャリアパスの複線化をはかりながら、意欲ある多様な研究者を育成する。また、状況に応じた自在なコミュニケーション能力と的確な国際情勢認識と異文化理解力を有し、従事する研究業務、研究支援業務、経営管理・組織運営業務のそれぞれに能力を発揮できる人材が必要である。
  • 必要とされる人材の確保のために、他研究法人、大学法人等との人事交流、多様な採用形態、再雇用の活用など多様な手段を駆使していく。その際、女性、外国国籍保有者の登用にも留意する。
  • 開発途上地域の農林水産業の向上のために研究開発された成果を、広く国民に理解してもらうことが求められている。このため、国民と専門家を橋渡しするコミュニケータの確保が必要である。また、研究成果の社会実装を推進するため、産学官連携や研究成果を海外の生産現場へ橋渡しすることを推進するコーディネーターが必要である。
  • JIRCAS職員の能力育成には、職員個々人が取り組むべき能力開発の必要性と方向性を自覚し、自発的に能力開発を進めることが望まれる。また組織としては、能力に応じた研修と、OJTの効果的な活用を図って教育・研修等の充実を図ると共に、職員一人ひとりに期待する方向性を示し、職員の自発的取り組みを支援する機能を整備することを基本とする。
  • このような方針を具体化するために、採用後の然るべき時期(必要な者には複数回)に、適性などについての客観的把握を踏まえて、職員個々人が作成した自己進路設計をもとに管理者との面談により、能力開発方法、進路設計を概定していくこととする。

3.研究部門の人材育成

  • JIRCASは、多岐にわたる研究分野を擁しており、海外における研究活動には、分野融合的な取り組みが必要であることが多い。したがって、研究者は、専門分野の研究能力についての研鑽に加えて、他分野との研究連携も常に視野に入れておく必要がある。また、研究倫理教育に適切に取組むことが必要である。
  • JIRCASは、国際共同研究を実施する研究機関であるので、研究者が専門分野の基礎的研究能力を有することを前提条件としている。したがって研究部門の人材の確保は、原則として、学位取得者の採用により行うこととする。なお、在籍職員のうち学位未取得者に対しては、取得に向けた指導を行う。
  • JIRCASの研究業務は、海外で実施することが多く、異文化社会での生活と海外研究への適応性を判断する必要がある。また、国際研究を通じた世界への貢献という業務の特殊性を採用者に理解させる必要がある。このようなことから、研究者の採用については、原則として任期を付すこととする。
  • 任期付研究員に対しては、任期中に当該業務に集中できる環境、及び国際貢献への理解を深める環境を整備する。また、任期終了前に意向を聴取し、本人が希望する場合には、任期の定めのない研究職員としての適性を審査するテニュア・トラック制度を適用する。審査の結果、任期の定めのない研究職員として採用した者は、本プログラムに従って育成する。
  • 若手研究者に対しては、国際共同研究への参加、競争的研究資金への応募の奨励、研究集会への参加の機会の拡大、海外派遣の支援、アウトリーチ活動の促進など、活躍の機会を付与する。
  • 将来に渡り質の高い国際共同研究を実施するために国際的に認知度の高い研究者を確保する必要がある。そのため、クロスアポイント制度を活用して卓越した研究者の確保を目指す。
  • 優れた女性研究者の能力を活用するため、研究者の採用等について、女性研究者の割合の向上などを目指す。また、出産、育児等を考慮した業績評価の実施及びライフステージごとの研究環境の整備を促進することなどを通じて、指導的研究者の総数に占める女性研究者の割合の向上を促進する。
  • 有望な若手・中堅研究者を国際機関へ派遣したり、役員などが参加する重要な国際会議に同行させ経験を積ませる。良い研究成果を挙げた研究者の顕彰への応募を奨励・支援する。
  • 豊富な経験とノウハウを蓄積し、俯瞰的な視点をもったシニア研究者の能力を戦略的に活用するために、引き続き研究の第一線で活躍するだけでなく、適材適所に留意した上で、研究マネジメント、後進の指導、知的財産管理、産学官連携、高度な分析・解析、リスク管理、広報などへの登用を図る。
  • 研究部門の人材育成の目標は、「他分野の研究者、海外の研究者とのコミュニケーション能力の向上」、「研究を着実かつ創造的に推進する能力の向上」であり、それに向けた個々人の能力開発のために、国際機関への派遣、行政部局での研修も含めた各種派遣や研修等を行う。
  • JIRCASは、限られた研究勢力で効率的に成果を達成するために、プログラム-プロジェクト方式を採用している。プロジェクト研究において、チームとして一つの目的に向かった研究に取り組むこと、また、海外において優秀な研究者と共同研究を行うことは、研究職員、特に若手研究者にとって業務を通じた訓練(OJT)となる。このOJTを充実させるために、国内からのサポート、プログラム-プロジェクト内及び領域内での指導体制を強化する。
  • 一般に、研究活動は「ニーズあるいは要請の把握」、「計画策定」、「研究実施」、「成果とりまとめ」、「成果の公表・広報(国民への還元)」の流れでひとまとまりになっている。研究者としての経歴の中で、上記五つのステージに的確に対応できる能力を構築する必要がある。さらに、研究経費の管理、チームの運営等の能力を身につけることにより、研究マネジメント、あるいは経営管理・組織運営につながる能力開発を推進することが重要である。

4.研究管理・支援部門の人材育成

[研究管理部門]

  • 部長、プログラムディレクター、領域長等管理職
    • 管理職は、研究活動の戦略的方向付け、研究資源配分、人員配置等の、経営管理・組織運営に関する高度な判断を伴う業務を行う。
    • 管理職への登用を想定される者については、研究マネジメント業務、企画管理業務、情報広報業務、研究支援業務、あるいは行政部局や国際機関等外部組織等、個人の適性に合ったキャリアを経験させる。
    • このような多様なキャリアを経て、幅広い知見、情勢把握力、及び的確な判断力を獲得し、部下の指導、統率に優れた者を管理職に登用する。
  • 企画管理業務:
    • JIRCASの国際共同研究戦略に基づく研究活動の企画立案、行政部局や国際機関との連携調整、国際共同研究機関との文書取り交わし、研究課題評価、個人業績評価、知的財産権の戦略的獲得・維持、研究成果の活用、外部資金の獲得等、重要かつ多岐にわたる業務である。
    • この業務には研究業務の経験の上に更に幅広い知識、コミュニケーション能力が必要とされる。あるいは、財務や知財、規制物質等についての専門的知識が必要となる場合もある。
    • 戦略的な知的財産マネジメントの推進の重要性から、研究者に対しては知的財産制度に係る基礎的な知識を修得させる。また、知的財産の総合的なマネジメントを研究開発の企画段階から一体的に行う能力の付与を図り専門的人材の育成を図る。
    • 本業務は、JIRCASの置かれている客観的立場・組織運営に対する理解を深める上で有効であり、様々なOJTの効果が期待されることから、多くの主任研究員クラスの研究職員及び一般職員に従事する機会を与える。
  • 情報広報業務
    • JIRCASの活動と研究成果を広報すべき対象は、我が国国民から国際機関、共同研究機関、ひいては発展途上地域の国民である。必要な相手に必要なときに必要な情報を的確に伝達するという広報活動自体が、JIRCASのミッションでもある。
    • 広報業務の手段としては、ホームページ、刊行物、シンポジウム・ワークショップ等の開催等を中心とするが、更に相手側との双方向コミュニケーションの強化を図る。
    • 本業務を担う人材には、企画管理業務の場合と同様の趣旨から研究職員、一般職員の従事を想定する。また、インタープリタ機能、コミュニケータ機能の充実のため、情報発信能力や幅広い経験と知識を有する人材を広く登用する。
    • 情報管理を担う人材については、LANシステムの管理・運営、研究情報の提供、データベースの構築・管理など高度の専門的知識を要する業務に対応できる人材を確保し、研修などを活用しながら最新の専門的知識の向上に努める。
  • リスク管理業務:
    • 研究活動における不適正行為などのリスク管理、規制物質の安全管理等、JIRCASが研究開発に集中して取り組むことができなくなるような事態を未然に防ぐ業務である。
    • この業務には、法令や規制物質等について専門知識が必要なうえ、日頃からリスクを発見し、それらが重大な問題を引き起こす前に対処する危機管理能力が必要とされる。
    • 本業務を担う人材には、研修やOJTを通じて上記の能力の向上に努める。
  • コーディネート業務
    • この業務はJIRCASにおいて特定の部門が担当することになってはいないが、研究成果を社会実装につなげるため、研究者と農業者や異分野・業種種を含めた産学官連携を推進や、研究成果を海外にある生産現場へ橋渡しすることの推進を担う業務である。
    • この業務には、農林水産・食品分野におけるイノベーションを創出し、革新的技術を社会実装につなげるため、研究者と農業者や異分野・異業種を含めた産学官の関係者とのマッチング、海外の開発途上地域で農家、行政、その他ステークホルダーとのマッチングを図る能力が必要とされる。
    • 本業務は、JIRCASの置かれている客観的立場・組織運営に対する理解を深める上で有効であり、様々なOJTの効果が期待されることから、多くの主任研究員クラスの研究職員及び一般職員に従事する機会を与える。

[研究支援部門]

  • 研究支援業務
    • 研究支援を担う一般職員については、研究活動を円滑にし、組織運営を確実に推進するため、人事・労務管理、財務管理等の事務部門の高度化はもとより、研究の企画立案から成果の普及に至るまでの関連する業務内容も専門化しており、研究戦略、人材育成、知的財産管理、広報、情報管理、健康・安全管理、監査、並びに海外における研究推進のための諸手続及び海外危険情報の収集等に関する業務等、JIRCASの窓口として、行政部局をはじめ都道府県、大学、民間、海外の研究機関等との交渉能力も重要である。また、海外出張者を含むJIRCAS内の情報伝達・管理システムの維持向上に関する業務も重要である。これらの業務に従事する職員には、知識・情報の集積及び交渉能力の向上が図られるよう、各種研修・セミナー・講習会等に計画的に参加させ、人材育成を行う。
  • 技術支援業務
    • 技術専門職員については、「技術専門職員の将来方向に関する実行計画(平成28年○月策定)」に基づき、技術専門職員の担う業務をコア業務において重点化し質的向上を図るとともに、技術長等のマネジメント能力を高め、外注化並びに再雇用者の活用のための業務指導能力を向上させるため、研修内容を充実強化する。

5.人材育成のための条件の整備

  • 運営費交付金の厳しい効率化が求められる中、人材育成に必要とされる外部研修、適性診断調査等の経費を、計画的に予算化し、合理的運用を図る。
  • 公設試、大学、民間、国際機関との人材交流を促進するため、クロスアポイントメント制度を導入する。
  • 進路に関する面談(ヒアリング)時に、職員および管理者双方が納得できる進路設計を行えるように、キャリアパスプログラムの内容を充実する。また、双方がこのようなプログラムの実施に理解を深めるための講習、意見交換の機会を設定する。
  • 研究職員については、業績評価結果を、一般職員及び技術専門職員については人事評価結果をそれぞれ処遇に反映させている。キャリアの向上と処遇とは、密接不可分の関係であり、今後本プログラムと業績評価システムとの整合性を検討していく。
  • キャリアパスを複線化し、本人の希望と資質を考慮しながら、JIRCASの業務に必要な様々な役割を果たす人材を確保する。
  • このようなことを通じて、個々の職員の資質に応じた多様な能力の開発、自己啓発を促す職場環境づくり、意欲・能力を活かす適材適所の人事管理を行ってゆく。

付記

・この取扱いは平成19年2月28日から施行する。
・この取扱いは平成22年1月26日から施行する。
・この取扱いは平成23年12月28日から施行する。
・この取扱いは平成25年9月1日から施行する。
・この取扱いは平成28年9月5日から施行する。

付図:「人材育成プログラム」イメージ

 JIRCASにおける人材育成を具体化するプログラム全体のイメージを、下図に示す。基本的には、職員個々人が自己進路設計を作成し、適性と能力を最大限に発揮するためのキャリアパスプログラムを選択する。研究管理者は、職員の資質と業績をもとに、より適切なプログラムを提示する。
☆育成目標【A】:自在なコミュニケーション能力、的確な国際情勢認識、担当する研究分野についての明確な方向性を持ち、研究マネジメント及び若手の指導に十分な資質を有する職員。
☆育成目標【B】:自在なコミュニケーション能力、的確な国際情勢認識に加え、経営管理・組織運営のための幅広い知見、情勢把握力、及び的確な判断力をそなえた職員。また、管理職員においては、部下の指導、統率に優れた資質を有する職員。
☆育成目標【C】:財務、知財、監査、情報管理等に関する業務に秀でた能力、資質を有する職員。また、若手の指導に十分な資質を有する職員。

「人材育成プログラムイメージ」