国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

国立研究開発法人国際農林水産業研究センター保有個人情報保護開示決定等の審査基準

16国研セ第3-122号
平成17年3月28日
最終改正26国研セ第15033015号
平成27年4月1日

独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第14条、第15条、第16条、第17条、第29条及び第38条に規定する保有個人情報の開示又は不開示、訂正又は不訂正及び利用停止又は不利用停止の審査基準を次のとおり定める。

1 第14条第1号及び2号(個人に関する情報)関係

1 開示請求者(第12条第2項の規定により未成年者又は成年被後見人の法定代理人が本人に代わって開示請求をする場合にあっては、当該本人をいう。次号及び第3号、次条第2項並びに第23条第1項において同じ。)の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報

2 開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利害を害するおそれのあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

  • イ 法令の規定により又は慣行として開示請求者を知ることができ、又は知ることが予定されている情報
  • ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報
  • ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第4項に規定する行政執行法人及び日本郵政公社の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等の役員及び職員、地方公務員(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

【趣旨】
第1号及び第2号は、個人に関する情報の不開示情報としての要件を定めるものである。

【解説】

1 本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報(第1号)

本法の開示請求権制度は、本人に対して当該本人に関する保有個人情報を開示するものであり、通例は本人の権利利益を害するおそれはないものと考えられる。しかし、開示が必ずしも本人の利益にならない場合もあり得ることから、そのような場合には不開示とすることができるようにしておく必要がある。
例えば、カルテの開示の場合、インフォームドコンセントの考え方から相当程度の病状等を開示することが考えられる場合である一方で、患者の精神状態、病状の進行状態等から、開示が病状等の悪化をもたらすことが予見される場合もあり得る。また、児童虐待の場合のように、虐待の告発等の児童本人に関する情報を親が法定代理人として開示請求する場合も想定される。このような場合において、本人に関する保有公人情報であることを理由として一律に開示義務を課すことは合理性を欠くことになる。
本号が適用される局面は、開示することが深刻な問題を引き起こす可能性がある場合であり、その運用に当たっては、具体的ケースに即して慎重に判断する必要がある。

2 開示請求者以外の個人に関する情報(第2号本文)

開示請求に係る個人情報の中に、本人以外の第三者(個人)の情報が含まれている場合があるが、第三者に関する情報を本人に開示することにより当該第三者の権利利益が損なわれるおそれがあることから、第三者に関する情報は不開示情報としている。
なお、「個人に関する情報」は、「個人情報」とは異なるものであり、生存する個人に関する情報のほか、死亡した個人に関する情報も含まれる。

  • (1)「(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」
    「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人に関する情報に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人に関する情報から除外したものである。
  • (2)「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」
    「その他の記述等」とは、氏名及び生年月日以外の記述又は個人別に付された番号その他の符号等をいう。映像や音声も、それによって特定の個人を識別することができる限りにおいて「その他の記述等」に含まれる。
    「特定の個人を識別することができる」とは、当該情報の本人である特定の個人が誰であるかを識別できることをいう。
    「他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」
    本法の対象とする個人情報は、当該情報そのものから本人が識別されるものであることが原則である。しかしながら、当該情報のみでは特定の個人を識別できない場合であっても、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる場合は対象とすることが適当である。
    照合の対象となる「他の情報」には、その保有者が他の機関である場合も含まれ、また、公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、通例は「他の情報」に含めて考える必要はない。しかし、事案によっては、個人の権利利益を保護する観点からは、個人情報の取扱いに当たって、より慎重な判断が求められる場合がある。当該個人を識別するために実施可能と考えられる手段について、その手段を実施するものと考えられる人物が誰であるか等を視野に入れつつ、合理的な範囲で考慮することが適当である。
  • (3)「開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお、開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれのあるもの」
    保有する個人情報の中には、匿名の作文や、無記名の個人の著作物のように、個人の人格と密接に関連したり、開示すれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものがあることから、特定の個人を識別できない場合であっても、開示することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある場合について、補充的に不開示情報として規定している。

3 「法令の規定により又は慣行として開示情報者を知ることができ、又は知ることが予定されている情報(第2号イ)

開示請求者以外の個人に関する情報であっても、あえて不開示情報として保護する必要性に乏しいものについては、ただし書により、本号の不開示情報から除くものとしたものである。

  • (1)「法令の規定により開示請求者が知ることができる情報」
    「法令の規定」には、何人に対しても等しく当該情報を開示すること又は公にすることを定めている規定のほか、特定の範囲の者に限り当該情報を開示することを定めている規定が含まれる。
  • (2)「慣行として開示請求者が知ることができる情報」
    慣習法としての法規範的な根拠を要するものでなく、事実上の慣習として知ることができ、又は知ることが予定されていることで足りる。
    当該保有個人情報と同種の情報について、本人が知ることができた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り「慣行として」には当たらない。また、情報公開法第5条第1号イの「慣行として公にされ」ている情報も、慣行として開示請求者が知ることができる情報に含まれる。
    「慣行として開示請求者が知ることができる」情報に該当するものとしては、請求者の家族構成に関する情報(妻子の名前や年齢、職業等)等が考えられる。
  • (3)「知ることが予定されている情報」
    実際には知らされていないが、将来的に知らされることが予定されている場合である。「予定」とは将来知らされることが具体的に決定されていることは要しないが、当該情報の性質、利用目的等に照らして通例知らされるべきものと考えられることをいう。
    例えば、複数の者が利害関係を有する事項についての調査結果を当事者に通知することが予定されている場合において、開示請求の時点においては、未だ調査結果の分析中であったため通知されていなかった場合が想定される。

4 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」(第2号ロ)

不開示情報該当性の判断に当たっては、当該情報を不開示にすることの利益と開示することの利益との調和を図ることが重要であり、開示請求者以外の個人に関する情報について、不開示にすることにより保護される開示請求者以外の個人の権利利益よりも、開示請求者を含む人の生命、健康等の利益を保護することの必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならないこととするものである。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが害される蓋然性の高い場合も含まれる。
この比較衝量に当たっては、個人の権利利益にも様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要である。

5 公務員等の職及び職務の遂行に係る情報(第2号ハ)

公務員等の職及び職務の遂行に関する情報は、情報公開法第5条第1号ハにおいて、不開示情報から除外されており、本法においても、同様に、不開示情報から除外することとしたものである。

  • (1)「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとき」
    「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関、その他の国の機関、独立行政法人、地方公共団体又は地方独立行政法人の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、苦情相談に対する担当職員の応対内容に関する情報がこれに含まれる。
  • (2)「当該情報のうち、当該公務員等の職及び職務遂行の内容に係る部分」
    公務員等の職及び職務遂行に関する情報には、当該公務員等の氏名、職名及び職務遂行の内容によって構成されるものが少なくない。このうち、その職名と職務遂行の内容について、情報公開法では、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにする観点から不開示としないこととされているが、本法においても、同様に不開示としないこととしている。

2 第14条第3号(法人等に関する情報)関係

3 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。 以下この号において「法人等」という。)に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報を除く。

  • イ 開示することにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
  • ロ 独立行政法人等の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として開示しないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

【趣旨】
本号は、法人等に関する情報及び事業を営む個人の当該事業に関する情報の不開示情報としての要件を定めたものである。

【解説】

1 「法人その他の団体に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報(第3号本文)

(1)「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)に関する情報」

  • ア 株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか政治団体、外国法人や法人ではないが権利能力なき社団等も含まれる。
    一方、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人については、その公的性格にかんがみ、法人等とは異なる開示・不開示の基準を適用すべきであるので、本号から除き、その事務又は事業に係る不開示情報は、第5号において規定している。
  • イ 「法人その他の団体に関する情報」は、法人等の組織や事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等、法人等と関連性を有する情報を指す。
    なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもある。

(2)「開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報」
「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、(1)に掲げた法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号で規定している。

2 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報(第3号ただし書)

本号のただし書は、第2号ロと同様に、当該情報を不開示にすることによって保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益と、これを開示することにより保護される人の生命、健康等の利益とを比較衡量し、後者の利益を保護することの必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならないとするものである。
現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得る。

3 「当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」(第3号イ)

  • ア 「権利」には、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等、法的保護に値する権利一切を含む。
    「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指す。
    「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等、法人等又事業を営む個人の運営上の地位を広く含む。
  • イ 「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々なものがあるので、法人等又事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の権利の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と独立行政法人等との関係等を十分考慮して適切に判断する必要がある。なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

4 任意に提供された情報(第3号ロ)

法人等又は事業を営む個人から開示しないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報として保護しようとするものであり、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護しようとするものである。なお、独立行政法人等の情報収集能力の保護は、別途、第5号等の不開示情報の規定によって判断されることとなる。

  • (1)「独立行政法人等の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供された情報」
    独立行政法人等の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、独立行政法人等の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から開示しないとの条件が提示され、独立行政法人等が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれる。
    「独立行政法人等の要請」には、法令等に基づく報告又は提出の命令は含まないが、独立行政法人等が報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。
    「開示しない」とは、本法や情報公開法に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第3者に対して当該情報を提供しないという意味である。また、特定の事業目的以外の目的には利用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。
    「条件」については、独立行政法人等の側から開示しないとの条件で情報を提供してほしいと申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から独立行政法人等の要請があったので情報は提供するが開示しないでほしいと申し出る場合も含まれるが、いずれにしても双方の合意により成立する。
    また、条件を設ける方法については、黙示的なものを排除する趣旨ではない。
  • (2)「法人等又は個人における通例として開示しないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認めるもの」
    「法人等又は当該個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等又は個人において開示しないこととしていることだけでは足りない。
    開示しないとの条件を付すことの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の変化も考慮する趣旨である。開示しないとの条件が付されていても、現に当該情報が公になっていたり、同種の情報が既に開示されているなどの事情がある場合には、本号には当たらない。

3 第14条第4号(審議、検討等に関する情報)関係

4 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

【趣旨】
本号は、審議、検討等情報の不開示情報としての要件を定めるものである。

【解説】
独立行政法人等としての最終的な決定前の事項に関する情報を開示することによってその意思決定が損なわれないようにする必要がある。しかしながら、意思決定前の情報をすべて不開示とすることは、可能な限り開示可能な情報は開示するという観点からは適当ではない。そこで、開示することによって独立行政法人等の適正な意思決定に支障を及ぼすおそれの有無及び程度を個別具体的に考慮し、不開示とされる情報の範囲を画することとしている。

1 対象となる情報の範囲

「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院並びにこれらに属する機関を指す。これらの国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(国の機関等)について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間の意味である。
 「審議、検討又は協議に関する情報」とは、国の機関等の事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は独立行政法人等が開催する有識者等を交えた研究会等における審議や検討など、様々な審議、検討及び協議が行われており、これら各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報を指す。

2 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」

開示することにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合を想定したのもので、適正な意思決定手続きの確保を保護法益としている。

3 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」

未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを開示することにより、誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が開示されることによる国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。

4 「特定の者に不当な利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」

尚早な時期に、あるいは事実関係の確認が不十分なままで情報を開示することにより、不正な投機を助長するなどして、特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある場合を想定したもので、3と同様に、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。

5 「不当に」

2から4までにおいて「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を開示することの必要性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものであることを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、開示することによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断される。

6 意思決定後の取扱い等

審議、検討等に関する情報については、国の機関等としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられるが、当該意思決定が全体として一つの政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる等審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定の後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討が行われるものであることに注意する必要がある。また、審議、検討等が終了し、意思決定が行われた後であっても、当該審議、検討等に関する情報が開示されると、国民の間に混乱を生じさせたり、将来予想されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがあれば、本号に該当し得る。

4 第14条第5号(事務又は事業に関する情報)関係

5 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人が行う事務又は事業に 関する情報であって、開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの

  • イ 国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ
  • ロ 犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ
  • ハ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
  • ニ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
  • ホ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
  • ヘ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
  • ト 国若しくは地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

【趣旨】
本号は、事務、事業に関する情報の不開示情報としての要件を定めるものである。

【解説】
国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(国の機関等)が行う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を不開示情報としている。
これらの国の機関等が行う事務又は事業は広範かつ多種多様であり、開示することによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある事務又は事業に関する情報を事項的にすべて列挙することは技術的に困難であり、実益も乏しい。そのため、各機関に共通的にみられる事務又は事業に関する情報であって、開示することによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むことが容易に想定されるものを「次に掲げるおそれ」としてイからホまでに例示的に掲げた上で、これらのおそれ以外については、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」として包括的に規定している。


1 「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(第5号本文)

(1)「次に掲げるおそれ」
「次に掲げるおそれ」としてイからトまでに掲げたものは、各機関共通的にみられる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、開示することによって、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障を掲げたものである。これらの事務又は事業のほかにも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障及ぼすおそれがあるもの等「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障及ぼすおそれ」があり得る。

(2)「当該事務又は事業の性質上、適正な遂行に支障及ぼすおそれ」
当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断する趣旨である。
本規定は独立行政法人等の恣意的判断を容認する趣旨ではなく、各規定の要件の該当性は客観的に判断される必要があり、また、事務又は事業の根拠となる規定・趣旨に照らし、個人の権利利益を保護する観点からの開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。

2 「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(第5号ハ)

(1)「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収」
「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行及び財産の状況の正否を調べることをいう。
「検査」とは、法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。
「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止、又は制限について適法、適正な状態を確保することをいう。
「試験」とは、人の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。
「租税」には、国税、地方税がある。/「賦課」とは、国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させることをいい、「徴収」とは、国又は地方公共団体が、租税その他の収入金を取ることをいう。

(2)「正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」
監査等の事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価、判断を加えて、一定の決定を伴うことがある事務である。
これらの事務に関する情報の中には、例えば監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報のように、事前に開示すると、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をするなどのおそれがあるものがあり、このような情報については、不開示とするものである。また、事後であっても、例えば、監査内容等の詳細についてこれを開示すると今後の法規制を免れる方法を示唆するようなことになるようなものは該当し得ると考えられる。

3 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(第5号ニ)

(1)「契約、交渉又は争訟」
「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。
「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいう。訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立てその他の 法令に基づく不服申立てがある。

(2)「国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」
国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続き上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。
これらの契約等に関する情報の中には、例えば、用地取得等の交渉方針や用地買収計画案を開示することにより、適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、交渉や争訟等の対処方針等を開示することにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報については、不開示とするものである。

4 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(第5号ホ)

国の機関等が行う調査研究(ある事柄を調べ、真理を探究すること)の成果については、社会、国民等にあまねく還元をすることが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員が、その発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。
調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、1知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階での情報などで、一定の期日以前の開示することにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれのあるもの、2試行錯誤の段階の情報で、開示することにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報を不開示とするものである。

5 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(第5号ヘ)

国の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務は、当該機関の組織としての維持の観点から行われ、一定の範囲で当該機関の自立性を有するものである。
人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評定や人事異動、昇格等の人事構想等を開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報を不開示とするものである。

6 「国若しくは地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(第5号ト)

国若しくは地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等又は地方独立行政法人に係る事業に関する情報については、企業経営という事業の性質上、第14条第3号の法人等に関する情報と同様な考え方で、企業経営上の正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものを不開示とするものである。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、情報の不開示の範囲は同号の法人等とは当然異なり、より狭いものとなる場合があり得る。

5 第15条(部分開示)関係

第15条 独立行政法人等は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合において、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。
2 開示請求に係る保有個人情報に前条第2号の情報(開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものに限る。)が含まれている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、開示しても、開示請求者以外の個人の権利利害が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。

【趣旨】
本条第1項は、開示請求に係る保有個人情報の一部に不開示情報が含まれている場合における独立行政法人等の部分開示の義務の内容及びその要件を明らかにするものである。
第2項は、開示請求に係る保有個人情報に開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報(不開示情報)が含まれている場合に、当該情報のうち個人識別性のある部分を除くことによる部分開示について定めるものである。

【解説】

1 不開示情報が含まれている場合の部分開示(第1項)

(1)「開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合」
開示請求について審査した結果、開示請求に係る保有個人情報に、不開示情報に該当する情報が含まれている場合を意味する。
第14条では、保有個人情報に全く不開示情報が含まれていない場合の開示義務を定めているが、本項の規定により、独立行政法人等は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならないこととなる。

(2)「容易に区分して除くことができるとき」

  • ア 当該保有個人情報のどの部分が不開示情報に該当するかという区分けが困難な場合だけでなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示の義務がないことを明らかにしたものである。
    「区分」とは、不開示情報に該当する部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、不開示情報に該当する部分を、当該部分の内容が分からないように黒塗り、被覆を行うなど、加工することにより、情報の内容を消滅させることをいう。
  • イ 保有個人情報に含まれる不開示情報を除くことは、当該保有個人情報が文書に記録されている場合、文書の複写物に黒を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。
    一方、録音テープ、ビデオテープ、磁気ディスクに記録された保有個人情報については、区分して除くことの容易性が問題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているが、そのうちの一人から開示請求があった場合や、録画されている映像中に開示請求者以外の者が写っている場合などがあり得る。このような場合には、不開示情報を容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定することになる。
    なお、電磁的記録に記録された保有個人情報については、紙に出力した上で、不開示情報を区分して除いて開示することも考えられる。電磁的記録をそのまま開示することを求められた場合は、不開示情報の部分のみを削除することの技術的可能性等を総合的に判断する必要がある。既存のプログラムで行うことができない場合は、「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない。

(3)「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」
本項は、義務的に開示すべき範囲を定めるものである。なお、部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、独立行政法人等の本法の目的に沿った合目的的な判断に委ねられている。すなわち、不開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗りつぶすかなどの方法の選択は、不開示情報を開示する結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。その結果、観念的にはひとまとまりの不開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に不開示情報が開示されたと認められないのであれば、独立行政法人等の不開示義務に反するものではない。

2 個人識別性の除去による部分開示(第2項)

(1)「開示請求に係る保有個人情報に前条第2号の情報(開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものに限る。)が含まれている場合」

  • ア 第1項の規定は、保有個人情報のうち、不開示情報でない部分の開示義務を規定しているが、不開示情報のうち一部を特に削除することにより不開示情報の残りの部分を開示することの根拠規定とはならない。
    個人識別情報は、通例は特定の個人を識別可能とする情報と当該個人の属性情報からなる「ひとまとまり」の情報の集合物であり、他の不開示情報の類型が各号に定められた「おそれ」を生じさせる範囲で不開示情報の範囲を画することができるのとは、その範囲の捉え方を異にする。このため、第1項の規定だけでは、個人識別情報については全体として不開示となることから、氏名等の部分だけを削除してのこりの部分を開示しても個人の権利利益保護の観点から支障が生じないときには、部分開示とするよう、個人識別情報についての特例規定を設けたものである。
  • イ 「開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものに限る」こととしているのは、「特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(第14条第2号の後半部分)については、特定の個人を識別することとなる記述等の部分を除くことにはならないので、他の不開示情報の類型と同様に不開示情報に該当する部分を除いた部分につき開示することとなるためである。


(2)「当該情報のうち、氏名、生年月日その他の開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、開示しても、開示請求者以外の個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるとき」
個人を識別させる要素を除去し誰の情報であるかが分からなくなっても、開示することが不適当であると認められ場合もある。例えば、作文などの個人の人格と密接に関連する情報や、個人の未発表の論文等開示すると個人の正当な権利利害を害するおそれのあるものも想定される。
このため、個人を識別させる部分を除いた部分について、開示しても個人の権利利益を害するおそれのないものに限り、部分開示の規定を適用することとしている。

(3)「当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する」
この規定により、個人識別情報のうち、特定の個人を識別することができることとなる記述等以外の部分は、個人の権利利益を害するおそれがない限り、第14条第2号に規定する不開示情報ではないものとして取り扱われることとなり、従って、第1項の部分開示の規定が適用される。このため、他の不開示情報の規定に該当しない限り、当該部分は開示されることになる。
また、第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合は、当該個人に関する情報は全体として不開示となる。

6 第16条(裁量的開示)関係

第16条 独立行政法人等は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示することができる。

【趣旨】
本条は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示することができる場合があることを定めているものである。

【解説】
第14条各号の不開示情報に該当する情報であっても、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、独立行政法人等の判断により、開示することができることとしたものである。
第14条各号においても、当該規定により保護する利益と当該情報を開示することによる利益の比較衡量が行われる場合があるが、本条は、第14条の規定が適用され不開示となる場合であっても、なお開示する必要性があると認められる場合には、開示することができるとするものである。

7 第17条(保有個人情報の存否に関する情報)関係

第17条 開示請求に対し、当該開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、独立行政法人等は、当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。

【趣旨】
本条は、開示請求の拒否処分の一態様として、一定の場合に、独立行政法人等が、保有個人情報の存否を明らかにしないで、開示請求を拒否することができることを定めるものである。

【解説】
独立行政法人等は、開示請求に係る保有個人情報が存在していれば、開示決定又は不開示決定を行い、存在していなければ不開示決定を行うことになる。したがって、保有個人情報の不存在を理由とする不開示決定の場合以外の決定では、原則として保有個人情報の存在が前提となっている。
しかしながら、開示請求に係る保有個人情報の存否を明らかにするだけで、第14条各号の不開示情報を開示することとなる場合があり、この場合には、保有個人情報の存否を明らかにしないで開示請求を拒否できることとしている。

1 「当該開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」

開示請求に係る保有個人情報が実際にあるかないかにかかわらず、開示請求された保有個人情報の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合をいう。開示請求に含まれる情報と不開示情報該当性が結合することにより、当該保有個人情報の存否を回答できない場合もある。例えば、犯罪の容疑者等特定の個人を対象とした内偵捜査に関する情報について、本人から開示請求があった場合等が考えられる。

2 「当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる」

保有個人情報の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する決定も、申請に対する処分であることから、行政手続法第8条に基づき処分の理由を示す必要がある。提示すべき理由の程度としては、開示請求者が拒否の理由を明確に認識し得るものであることが必要であると考えられる。また、個別具体的な理由提示の程度については、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった保有個人情報の存否を答えることにより、どのような不開示情報を開示することになるかをできる限り具体的に提示することになる。
また、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否することが必要であり、例えば、保有個人情報が存在しない場合に不存在と答えて、保有個人情報が存在する場合にのみ存否を明らかにしないで拒否したのでは、開示請求者に当該保有個人情報の存在を類推させることになる。

8 第29条(保有個人情報の訂正)関係

第29条 独立行政法人等は、訂正請求があった場合において、当該訂正請求に理由があると認めるときは、当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で、当該保有個人情報の訂正をしなければならない。

【趣旨】
本条は、訂正請求に対する独立行政法人等の訂正義務を明らかにするものであり、訂正請求に理由あると認めるときは、独立行政法人等が、利用目的の達成に必要な範囲内で、当該保有個人情報の訂正をしなければならないことを定めている。

【解説】

1 「訂正請求に理由があると認めるとき」

「訂正請求に理由がある」とは、独立行政法人等による調査等の結果、請求どおり保有個人情報が事実でないことが判明したときをいう。

2 「利用目的の達成に必要な範囲内で、訂正しなければならない」

ア 訂正請求権制度は、独立行政法人等の努力義務として定めている第6条の「正確性の確保」を受けて、本人が関与し得る制度として設けるものであり、本条は第6条と同様に、利用目的の達成に必要な範囲内での訂正を義務付けるものである。訂正請求に係る保有個人情報の利用目的に照らして、訂正の必要がないときは、訂正する義務はない。

イ 請求内容に理由があるかどうかを判断するために行う調査は、保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲で行えばよく、訂正をすることが利用目的の達成に必要でないことが明らかな場合は、特段の調査を行うまでもない。
具体例としては、過去の事実を記録することが利用目的であるものについて現在の事実に基づいて訂正することを請求するような場合は、訂正する必要がないことが考えられる。

ウ 適切な調査等を行ったにもかかわらず、事実関係が明らかにならなかった場合には、当該請求に理由があると確認できないこととなるから、独立行政法人等としては、訂正決定を行うことはできない。ただし、運用上、事実関係が明らかでない旨を追記する等の適切な措置を講じておくことが適当な場合もあり得る。

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