研究成果情報 - フィリピン
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- フィリピンにおける養殖ミルクフィッシュの成長と肥満度は水温で予測できる(2021)フィリピンにおいて、ミルクフィッシュの成長と肥満度、水温のデータを解析することで、魚の成長予測が可能になる。水温を把握することによって、肥満度予測の可能性を示すことができ、適切な給餌にも役立つ。
- 地上部バイオマスを広域推定するためのマングローブモデルの開発(2020)
アジア地域に分布するマングローブのバイオマス(Y)は、衛星画像などから測定される森林高(X)と換算式Y = 2.25X1.81から推定できる。マングローブが同程度の森林高の陸域熱帯林よりも著しく高いバイオマス量を有する要因は、胸高幹断面積の大きさによる。
- 家禽加⼯残渣の活⽤によるミルクフィッシュ⽤⿂粉削減飼料の開発(2019)
ミルクフィッシュ養殖用飼料原料として家禽加工残渣を12%配合することにより、ミルクフィッシュ養殖用飼料中の魚粉を75%、魚油を15%削減できる。本飼料を用いることで、近年高騰する魚粉及び魚油の使用量が削減され、養殖魚の成長率や化学成分含量、味わいに影響を及ぼすことなく、飼料コスト軽減による水産養殖業者の経営改善が期待できる。
- アジアモンスーン地域の天水稲作における最適播種期予測による収量改善(2018)
全球スケールの季節予報を統計的にダウンスケーリングした気象予測値をモンスーンアジアの100 km2程度の天水稲作地域に適用できることを明らかにした。これにより、作物生育モデルを使った最適播種期の予測が可能となり、農家の収量を改善できる。
- フィリピンのサトウキビ単作地域における地下水への窒素負荷量の推定(2017)
地下水の窒素汚染が懸念されるフィリピンの代表的なサトウキビ栽培地域での窒素負荷量を推定した。地表面への窒素の負荷源として、肥料・家畜排泄物・人排泄物・降雨があるが、地下への潜在的な窒素負荷の多くは、肥料由来の窒素である。
- アセアン国別食料需給モデル作成・運用マニュアルによる成果の普及(2016)
アセアン加盟各国を対象として食料生産・消費の中期予測を行うための非均衡モデルを作成・運用するためのマニュアルを作成し広く公表する。マニュアルは、モデルの作成法を基礎的な計量経済学の概念と共に示し、モデルの理解・作成・運用に寄与する。
- ガリー侵食の発生域を衛星データの画像解析によって抽出する(2014)
フィリピン・ルソン島北部カガヤン川沿いの丘陵地帯において、近年顕著になったガリー侵食の発生実態の把握のため、高空間分解能衛星データの画像解析によりガリー発生域を抽出する手法を開発する。衛星データの利用により、現地調査が行われない地域を含めた広域のガリー侵食の分布を迅速に把握する。
- ハネジナマコの飼育管理のためのサイズ測定と栄養状態評価手法(2011)
メントール麻酔剤により体型が不定なハネジナマコの体長と体重の測定精度が向上できる。栄養状態により体長と体重が変化するナマコ類は、従来の肥満度による栄養状態の評価ができないが、体腔液の比重と総炭水化物含量を指標として評価できる可能性を示した。
- フィリピンでの節水灌漑技術普及における情報ネットワークの役割(2010)
フィリピンの深井戸灌漑水利組合を対象に、節水灌漑技術普及における情報ネットワークの役割を解明した。技術の早期採用者は、外部から技術情報を組合に伝える機能、組合内で情報を広める機能、外部に情報を発信する機能を役割分担をしている。
- 熱帯性・亜熱帯性魚類の必須脂肪酸組成の特性(2003)
熱帯性・亜熱帯性海産魚の卵稚仔は、冷水性・温水性魚類と異なる必須脂肪酸組成特性を有し、アラキドン酸が重要であることが示唆された。
- フィリピンにおける養殖ハタ大量死はウイルス性神経壊死症に因る(2002)
原因不明であった養殖ハタの大量死は、フィリピンで初めてのウイルス性神経壊死症(VNN)の感染発病に因るものであり、本症の確定診断は病原病理学的に可能である。
- 根系分布からみた熱帯アジアの陸稲の水ストレス高感受性(1999)
熱帯アジアの陸稲は根系分布が一般に浅く、水ストレス下においても深層の根長密度が増加せず、根長あたりの水吸収速度も高まらないため、水ストレスに対して感受性が高い。燐酸施肥は深層での根の形成を促進し、水吸収を高める。
- フィリピンにおけるマメ科およびネムノキ科有用樹の種子発芽促進処理技術(1999)
フィリピンの荒廃草地造林に広範に用いられるネムノキ科Leucaena属を含む有用樹は、火入れ加熱処理、温水加熱処理とその組み合わせにより、簡易・効率的な種子発芽を促進することができる。
- フィリピン低地土壌の分布様式と特性の解明(1995)
フィリピン・ルソン島の主な水田地帯の代表的低地土壌の分布様式とその特性は生成条件(母材、気候、地形)と関連づけて説明できることを明らかにした。この結果、フィリピン低地土壌は概して塩基性母材に由来した特性を有するが、降雨および地形条件が地域間や地域内の低地土壌特性の差異に密接に関与していた。