ビタミンやミネラルなどの微量栄養素不足の解決策の一つとして、生物学的栄養強化（biofortification）というものがあります。生物学的栄養強化は、サプリメントの摂取や食品への栄養素添加とは異なり、作物自体をその地域で不足しがちな微量栄養素含有量の高い作物にすることで微量栄養素の摂取を促す取り組みです。

この生物学的栄養強化にいち早く取り組んでいるHarvestPlusは、生物学的栄養強化作物の国別の普及を示す表と地図を9月2日に更新しました。2019年末までに、63か国が生物強化された品種をリリース（r）またはテスト（t）しています。

対象となっている作物の品種は、HarvestPlusや国際馬鈴薯センター（International Potato Center）によって奨励されています。これらの生物学的栄養強化品種は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの低所得世帯で広く消費されている主食の栄養価を高めるために、従来の作物育種技術を用いて開発されました。 HarvestPlusが奨励している作物には、ビタミンAを強化したキャッサバ、トウモロコシ、サツマイモ、鉄分を強化した豆やパールミレット、亜鉛を強化した米、トウモロコシ、小麦などがあります。

栄養と農業の専門家が協力して、これらの作物に栄養と健康を改善するのに十分なレベルの栄養素が含まれるようにしています。栄養的に優れているだけでなく、美味しく調理上の要件を満たし、害虫、病気、干ばつへの耐性など農家が求める農業上の特徴も併せ持っています。

現在までに4千2百万人以上の小規模農家が、HarvestPlusによって奨励された、従来の育種技術で開発された生物学的栄養強化作物の恩恵を受けています。これらの作物を定期的に食べることで栄養と健康状態が改善されます。生物学的栄養強化は微量栄養素欠乏症と戦う１つの戦略として多くの国で広く受け入れられてきているため、HarvestPlusは2030年までに10億人以上が生物強化食品から恩恵を受けることになると予測しています。

参考文献

HarvestPlus (2020) Biofortified Crops Map and New Table Show Global Reach Of Nutritious Staples

https://www.harvestplus.org/knowledge-market/in-the-news/biofortified-c…

[Accessed on Sep 4, 2020]

（文責：研究戦略室　白鳥佐紀子）