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60. 気候変動状況下における国際河川流域の水資源不足と誘発要因の展望

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情報収集分析

2020年5月にFuture Earth誌で公表された論文 (Munia et al.) 「気候変動状況下における国際河川流域の水資源不足と誘発要因の展望 Future transboundary water stress and its drivers under climate change」は、多くの国際河川流域が近い将来水資源の不足(stress)に直面すると警鐘を鳴らしました。にもかかわらず、自然要因による周辺での流出・流域上流からの流入や、周辺・上流での水消費の変化など、水資源に影響を与える要因についての情報は世界的にほとんどありません。著者らは複数の世界水文学モデルと世界気候モデルに最新の温室効果ガス濃度・社会経済シナリオを組み合わせ、過去そして将来の国際河川において水資源に影響を与える要因とインパクトを分析しました。分析結果の要点を紹介します。

  • 全シナリオにおいて、国際河川流域の中でも既にストレスにさらされている地域で水資源不足が悪化することが予測される。
  • 水資源ストレスの変化は、ローカルな水消費の影響に大きく決定され、将来のストレス緩和の上で、ローカルな需要の管理が重要な戦略となる。
  • 自然流出の減少、あるいは上流における水消費の増加は、下流における水の利用可能性の変化に影響を与える支配的要因である。
  • 温暖化を産業化前水準の2℃以内に抑える努力なしに人口増加が進行すれば、2050年までに水資源不足に直面する人々は倍増するであろう。
  • このことは、2010年と比べ、今世紀半ばまでに水不足にさらされる人々が3.8憶人追加的に増えることを意味する。
  • パリ協定に沿って温暖化を2℃以下に抑え、人口増加も低く抑えられたとしても、水資源不足に直面する人々の数は、2010年に比べ2050年までに50%増加しうる。
  • 既に水資源不足による課題を抱えている地域、とりわけ中東、北アフリカ、南・中央アジアにおいて、水資源不足に直面する人々がさらに増加すると予測される。

 

参考文献

Munia HA. Et al. Future transboundary water stress and its drivers under climate change: a global study First published:25 May 2020. Earth’s Future. https://doi.org/10.1029/2019EF001321

Carbon Brief. World population facing water stress could ‘double’ by 2050 as climate warms Daisy Dunne. 02.06.2020. https://www.carbonbrief.org/world-population-facing-water-stress-could-double-by-2050-as-climate-warms

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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